第23話 シャルベ・ プランニング
連邦海軍艦隊侵攻から2日後
あの戦いで軽傷で済んだ者や負傷してない海兵は忙しなく働いていた。
壊れた設備や建物の復旧、すべき事は山積みである。
普段は書類を溜め込みがちなタンビエンもこの時ばかりは寝る間も惜しんで働いた。
そう遠くない内にパロネア軍がまた攻めてくるであろう事は分かりきっていた。
それまでに鎮守府を立て直さなくてはならない。
この鎮守府こそテルバニヤの大砦、陥落する事は許されない。
鎮守府の工事に携わったのは大手ゼネコンのシャルベ・プランニング。その社長が直々に鎮守府の様子を査定に来た。
「何時もお世話になっております。シャルベ・プランニング代表取締役社長、ジュスタン・ギルフィーラと申します。本日はご依頼にありました此方の鎮守府の修繕の査定と見積もりの方、させて頂きます。」
ギルフィーラはタンビエンに名刺を渡した。
「堅苦しい挨拶はよせ。オレ達の仲じゃねぇか。」
タンビエンは深く被った帽子を取り顔を見せる。
「………その顔、まさかタンビエンか?」
「そうだよ。しかし驚いたな、お前がまさかシャルベに入社してて、しかもその社長にまで出世してたとはな。」
「懐かしいなタンビエン、こうして会うのは何年ぶりだ?」
「お前が陸軍をさっさと退役してからそれっきりじゃねぇか。オレとアベレイとギルの3人で祖国を護る将校になろうぜって誓いあったのにアベレイも軍を退役して今では人民労働党の総裁やってんだぜ?オレ一人になっちまったじゃねぇか。」
タンビエンの言葉にギルフィーラはバツが悪そうにする。
「あぁ、すまなかったよ。だけどあの時話した筈だぜ?当時付き合ってた彼女が『結婚するなら軍を退役して』ってゆってるって。オレの事は好きだけど命の保証のない軍人と結婚できないってゆうからオレは軍を退役して今の会社に入ったんだよ。」
「………そうゆえばそうだっけ?それで、軍を辞めてから全く音沙汰なかったがその彼女さんとは結婚出来たのか?」
「あぁ、今のカミさんだよ。二人の息子にも恵まれて、正直軍を辞めた事に後悔はないよ。音沙汰がなかったのは済まなかった。なんせ入社してから5年は本当に忙しくてな、手紙1枚送る余裕がなくてな。ある程度仕事が落ち着いた頃には今まで連絡寄越さなかった癖に今更手紙書くのも億劫でな。今の今まで連絡できなかったよ。済まなかった。」
「まぁ、幸せにやってるんならそれでいい。しかし社長が直々に査定とか見積もりするもんなのか?」
「本来はしない。オレの仕事は主に顧客の訪問だから経営の方はからっきしでな。そんなオレがなんで社長になれたのか不思議でしょうがねぇんだ。だから社長になってもやる事は変わらねぇ。まぁ兎に角、この鎮守府の担当者は先日定年退職してな。オレが引き継いだ。これからはオレが担当だから宜しくな。」
タンビエンは早速ギルフィーラに鎮守府を案内する。
「うわ………これは酷い壊れようだな……」
ギルフィーラはメモ用紙を取り出し鎮守府の隅々を見て回った。
壊れた箇所とその具合を事細かく書き記してゆく。
鎮守府の隅から隅までチェックする事1時間、査定が終わったようだ。
「大変お待たせしました。査定の方完了しましたので此方見積もりになります。」
ギルフィーラの口調が旧友に対する言葉遣いからクライアントに対する言葉遣いに変わった。
ギルフィーラから受け取った見積書を確認する。
「……………費用はまぁ、よいとして。払うのはオレじゃないからな。問題はこの、工期が3ヶ月とあるが。」
「えぇ、かなりの損傷具合ですから、大凡これくらいは掛かってくるかと。」
タンビエンは工期が書かれた見積書をその場で破り捨てた。
「1ヶ月だ。工期は1ヶ月以内で頼む。」
「1ヶ月!?流石に1ヶ月は難しいですね。この工期は協力会社にも依頼を掛けて手伝ってもらってこの工期ですから。」
ギルフィーラも元軍人、バニヤ軍の置かれた状況は理解していた。
本来であれば工期はもっと掛かる筈であったが協力会社にも依頼する事により費用は相場よりかなり高くなるが最速で仕上げる方法を提示したのだ。
それでも3ヶ月掛かる。それでは間に合わないのだ。
パロネア海軍の艦隊を全て撃沈させた事により近い内にまたしても攻め込んで来るだろう。
なんならタンビエンが提示した1ヶ月ですら間に合わない可能性がある。
「ウチの海兵達も工事を手伝わせる。それに今ウチには強力な助っ人がいる。彼の手を借りれば1ヶ月以内に終わるはずだ。」
「無理ゆわないで下さい、手伝ってくれるのは結構ですが海兵さん達に建築のノウハウはあるのですか?無ければ幾ら人員がいたとて1ヶ月は無理ですよ?」
あくまで無理だとゆい切るギルフィーラにタンビエンは強力な助っ人の説明をする。
「……………分かりました。それでは1ヶ月の工期で取り掛からせて頂きます。」
ギルフィーラは渋々納得し契約書の書類を渡しタンビエンがサインする事により工事の契約が完了したのであった。




