青春の管制塔へ
暑い夏。汗をかいても気にならなかった。
「――ボーイ・ミーツ・ガール」、夏と言えばこれでしょう。
男子高校生3人が「ボーイ・ミーツ・ガール」の出会いに向けて奔走する。
「食パンをくわえた少女、西日に照らされる制服少女、うなじの汗が花火に輝く浴衣少女――、それらが僕らにとっては青春だった」
「ボーイミーツガール」はシチュエーションから生まれる!?
青春の管理下、高校生の日常がここに――。
▽第一話▽
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久しぶりに集中してパソコンと向き合ったせいか、目が渇いていた。
改めてここまで書いたものを読み直すと、体験者である僕には、その情景、暑さ、汗の感触、全てが目の前に広がってくるように思われた。
そうして僕はふたりの友人に会いたくなった。彼らとは高校を卒業したから数回しか会っていない。それも大学生までで、就職してからは一度も会っていなかった。
僕はそのままパソコンをメール画面に移して、ふたりのアドレスにむけ、メールを送る。当然ように帰ってくる、宛先不明メール。まあ、そうだろう、と納得する。この御時世でメールを使ってる人なんていない。
ふと僕は原田の父が経営していた病院に行けば彼がいるのではないかと思った。僕たちと同じように馬鹿をしていたくせに、医学部に受かった彼はきっとそこにいる。
ネットで原田医院を検索すると、割といい口コミで安心する。
僕はそこのお問い合わせのページにいって、原田にメールをした。
デブには三パターンあると庵野が言ったのを思い出す。
面白いデブとつまらないデブと、気にならなないデブ。
原田はそれを聞いて、デブ関係ないじゃんと笑った。ほらそこで笑える原田は面白いデブだと庵野も笑った。
――、僕に悩み事なんてないだろうって思うでしょう?
高校最後の夏休み、プールの柵に持たれた原田はふいに言った。
「どうしたの急に」
「だって頭いいし将来は医者だしさ、保存食だってこんなにたくさん」
原田はそう言って腹をつまんだ。
僕らは思わず笑って、一瞬あった真剣なムードは晴れた空へと消えていった。
「でもね、僕は中学校のときいじめられてたんだよ、それでこの町にきた。ほら見てこのきれいな円形脱毛症。治らないんだぜ」
庵野はじっと円形脱毛症を見て、「ミステリーサークルだな」と言った。
「だから僕はこうやってできる限り面白い話をして、なんとかやり抜けてきたんだ」
原田は急に立ち上がって服のままプールに飛び込んだ。水しぶきが太陽を反射させてキラキラとひかる。飛沫が僕たちを襲う。
「おおい、飛び込むならもっときれいに飛び込めよ」
そう言って庵野が飛び込む。庵野は空と一直線になったと思うと、きゅっと今度は水と直角になって、すぅと消えるように水の中に入った。
僕は庵野に続くように飛び込むが庵野のようにはいかない。派手な音をたてて飛び込んだ後、水の外に顔を出すと、きらきらとひかる雫が僕らを襲った。
「難しい話は秋にとっておこう」
僕はふと言ってみた。それは当時ひどく納得できる言葉のように思われた。
あの時、あの一瞬、夏の明るさが原田の影を強く映し出したのかもしれない。
そうしてあの夏の暑さが、言葉を語らずして僕らを包み込んだ。
あの夏、僕らは色々なことを語り合って、色々なことを忘れた。
――、あの夏はとても濃厚だった。
原田にメールした瞬間、僕はまたあの夏に引き戻されそうになる。
僕には今でも竹内先生の言葉をリピートすることができる。
「なあなあ、君たちには関係ないかもだけれど、夏と言えばボーイミーツガールだろう」
この一言で、暑い夏は、さらに暑い夏となった。




