夏は飛ばせ
暑い夏。汗をかいても気にならなかった。
「――ボーイ・ミーツ・ガール」、夏と言えばこれでしょう。
男子高校生3人が「ボーイ・ミーツ・ガール」の出会いに向けて奔走する。
「食パンをくわえた少女、西日に照らされる制服少女、うなじの汗が花火に輝く浴衣少女――、それらが僕らにとっては青春だった」
「ボーイミーツガール」はシチュエーションから生まれる!?
青春の管理下、高校生の日常がここに――。
▽第一話▽
https://syosetu.com/usernoveldatamanage/top/ncode/1279551/noveldataid/10647085/
◆こちらからどうぞ!
チャイムが鳴った時、僕たち三人はプールに飛び込んだようにびしょびしょになっていた。
「五時間目どうする?」
庵野が聞く。
「どうするもこうするも出れないだろう」
「ここで乾かすか」
「じゃ、この夏について語り合おう」
そればっかりだと思いながらも、僕は今年の夏に少し期待できるような気持ちになった。
太陽は僕たちを焼き殺すかのように、ぎらぎらと光る。ワイシャツが風にはためいて、もう乾きそうだ。
「夏といえばさ、キャンプ、バーベキュー、花火、祭?」
庵野が楽しそうに言った。
「川遊び、海水浴、スイカ割り?」
原田がそう言って僕を見つめる。僕はもうないよ、と思いながらも必死に絞り出した。
「肝試し、合宿?」
「合宿ってなんのだよ」
と庵野が突っ込んでくる。
「なんのって言ってもなあ。何もしてないしさ、なに、バンドとかしちゃう?」
「バンドかあ、かっこいいけれど、できるかなあ」
「僕は楽器なんてひけないよ」
と原田が言うので、「お前はドラム、ポジションはキャッチャーとゴールキーパー」と言うと、「デブにだって人権はある」と彼は大声で言う。その声が思いのほか響くので、ボーカルでもいいじゃんと思ったが、癪なので言わないことにした。
「でもさあ、バンドなんて青春小説みたいで、恥ずかしいや」
庵野が少し笑いながら言った。
「難しいねえ」と原田が倒れこむ。汗のせいがびしゃんとコンクリートが音を立てる。
「どうする? とりあえず祭りでも行ってみるか」
原田が天を見上げて、眩しそうに目を細めながら言った。
「祭りがあるの?」
庵野が嬉しそうに聞いた。
「それは調べてみよう」
と原田は変にビブラートを効かせて続ける。
「ねえ、僕、ボーカルならできるかもよ」
「ボーカルは顔だよ」
僕が言って庵野が笑った。原田もひどいなあと言いながら笑っている。三人の笑い声が青空に吸い込まれるように消えた。
「天体観測もいいなあ」空を見上げながら庵野が言うと、ちょうどチャイムが鳴った。
「帰るか」
「図書室で祭りについて調べよう」
ワイシャツを触ると、もうとっくに乾いていたようで、熱すら持っていた。




