類は恋人と運命を
暑い夏。汗をかいても気にならなかった。
「――ボーイ・ミーツ・ガール」、夏と言えばこれでしょう。
男子高校生3人が「ボーイ・ミーツ・ガール」の出会いに向けて奔走する。
「食パンをくわえた少女、西日に照らされる制服少女、うなじの汗が花火に輝く浴衣少女――、それらが僕らにとっては青春だった」
「ボーイミーツガール」はシチュエーションから生まれる!?
青春の管理下、高校生の日常がここに――。
▽第一話▽
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「いまお客さんがいたよね? 矢沢さん」
庵野が気を取り直したように言った。
「いたね」
矢沢さんはそう言って、「まあいいよ」と笑った。そうして僕たちの席に来ると、僕の横に座った。
「まあ、聞こうじゃないか」
「だってさ、僕は思うんだけど、ボーイミーツガールってそれが運命的であればあるほど、効力を発揮するのさ」
原田が言った。
「お客さん来たらどうするの?」
僕が言うと矢沢さんは席を立って、ドアの外に出ると、看板を持って中に戻ってきた。
そうして、僕の横にふたたび座る。それがすべて無言のうちに進められるので、僕は少しおかしくなった。
「それで」
庵野は矢沢さんのことなんていっさい見ないで、話を進める。
「だからさ、僕には涼ちゃんとか庵野の計画を駄目だって言うわけじゃないけど、少し弱くないかなって思うんだよ。だってそれは日常的に行われることで、決して運命的でないもの」
「でもさ」と矢沢さんが話に食い込んでくる。
「そこの境界ってひどく曖昧で、どう思うかによると思うんだよね」
「うん、確かにそうだよ。でもさ、それじゃボーイミーツガールって今まで僕たちが見逃してきたってだけの話になるよ」
原田は自分で言って頷いてまた続けた。
「だったらさ、僕はひどく運命的な出会いで、もうこれ程ないってほどに痺れる体験がしたい」
僕らは原田がとんでもなく恥ずかしい発言をしているのに、その真剣さに抑え込まれて笑うことができない。
「出会えるのかな、本当に食パンをくわえてる女の子に」
僕のつぶやきはゆらゆらと立ち上ってシェルターから出ていった。
「僕はさ、ダブルソフトって決めてるんだよね」
僕たちは原田の計画に面白半分に賛成して、原田のことを考えて反対もした。しかし原田は意見を変えることはなく、日取りと計画を立てるために、再びシェルターに集合した。
「なにが?」
「僕が食べる食パン」
「ん?」
「え?」
「なんで原田か食パンを食べるの?」
庵野があまりにも混乱しているので、僕は冷静を装って原田に聞いた。
「だってそういう出会いでしょう。食パンをくわえた僕に、パンを加えた少女がぶつかる」
僕と庵野が絶句しているなか、矢沢さんはひとりで爆笑している。
「確かにね、そういう考え方もできるけど、僕は食べるよ」
アイスコーヒーの氷が溶けてからりとなった。やっぱりこの音にかなう涼しさはないと思う。原田は嬉しそうに、何を考えているのかにやにやしている。庵野はただ呆然と思考を放棄したように見える。矢沢さんは爆笑していて、僕は僕がしっかりしなくてはと思って愕然とする。まさか原田がこんなにも馬鹿だったなんて。
僕らは特に計画なんて必要がなかったことに気が付き、日にちを決めて雨天延期という決まりを決めた。
「ドキドキするね」
原田が言った。
「ドキドキするね」
僕も言ってみたが、友達思いの僕は不安で胸が張り裂けそうであった。




