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青春の管制塔へ

暑い夏。汗をかいても気にならなかった。

「――ボーイ・ミーツ・ガール」、夏と言えばこれでしょう。

男子高校生3人が「ボーイ・ミーツ・ガール」の出会いに向けて奔走する。

「食パンをくわえた少女、西日に照らされる制服少女、うなじの汗が花火に輝く浴衣少女――、それらが僕らにとっては青春だった」

「ボーイミーツガール」はシチュエーションから生まれる!?

青春の管理下、高校生の日常がここに――。


▽第一話▽

https://syosetu.com/usernoveldatamanage/top/ncode/1279551/noveldataid/10647085/

◆こちらからどうぞ!

 メールに書いてあった電話番号に原田から電話が来たのは、僕が小説のような物を書きだしてから数日たってからだった。

「久しぶり」

「また太ったのかよ」

「電話じゃわからないでしょう」

 原田の声を聞くとカーテンを閉め切った部屋にもあの時の風が吹いているように感じられる。そうしてあの頃の会話のテンポも僕にはすんなりと分かった。

「変わらないねえ」原田が言った。

「久しぶりに会おうよ」

 ――、僕は久々ににシェルターに行く。


 久々に出た外はひどく蒸し暑かった。風が吹くたびに僕の体に重い空気がまとわりついた。僕は泳ぐように歩いた。あの夏はこんなに生きにくくなかった。

 歳を取った、小さく呟いて自分で可笑しくなる。


 原田は高校に上がるタイミングで引っ越してきた。多くの生徒が中学からの持ち上がりのなか、原田は最初、少し浮いていたような覚えがある。

 爽やかな春先の教室に似合わない大きさの原田は、自己紹介で盛大に笑いを取りにきた。

「原田悟、十五歳。上から百、百、百。強いて言うならドラえもんに似てると言われます。――、いや、誰がドラえもんだよ」

 僕は原田の自己紹介をことあるごとにからかったので、一字一句思い出せる。

 休み時間、庵野は僕のところにきて、何だあいつはと笑った。

「ええ、医者だよ、ううん、見てわからない? 整形外科ではない」

 そんな話をしている間も原田の素っ頓狂な笑い声が聞こえてきた。


「いじめられたときはさ、二種類の防ぎ方がある。攻撃型とステレス型」

 僕たちが仲良くなったあと、久しぶりにそのことでからかうと原田は言った。

「ステレス型は自分の存在を消すことで、よく使われる。ローリスクノーリターン。攻撃型は当然ハイリスクハイリターン」

「人間失格型だね」

 僕は笑った。

「そうだね、道化師型」

 ――、確かあれは文化祭の夜だった。

 僕たちは後夜祭で打ち上げられる花火の、打ち上げ場所を見ようと言って学校を抜け出したのだった。

 夏の夜は騒がしい。クラクションの音、セミの鳴き声、虫の音に少し離れた学校からは嬌声が響いてきた。僕たちの前で職人さんはそんな夜に似つかわなしくないほど、静かに作業を進めていた。

「それって辛くないの?」

 庵野がふいに言った。

「最初は怖かった。何か言う前に心臓が張り裂けそうになって、言ったあともみんなの笑顔を見るまでは安心できなかった」

「そっか、今は?」

「今は面白いよ、もうおもしいことを言おうと頑張ってるわけじゃない。すんなりと思ったことを口にしてるだけだよ」

「本物の道化になったのか」

「本物の道化ってなんだよ」

 パンっと音がすると光が夜空に一本の線になって走っていく。開いた。さらさらと火花が落ちてくるのが見えた。

「こういのってさ、彼女とやるものじゃないの」原田がつぶやいた。

「言うなよ」

 庵野が言った。夜空にハートの花火が上がって、学校からは歓声が聞こえた。

 僕たちのため息は地面にすうっと音を立てて落ちた。


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