少年は出会わない
暑い夏。汗をかいても気にならなかった。
「――ボーイ・ミーツ・ガール」、夏と言えばこれでしょう。
男子高校生3人が「ボーイ・ミーツ・ガール」の出会いに向けて奔走する。
「食パンをくわえた少女、西日に照らされる制服少女、うなじの汗が花火に輝く浴衣少女――、それらが僕らにとっては青春だった」
「ボーイミーツガール」はシチュエーションから生まれる!?
青春の管理下、高校生の日常がここに――。
▽第一話▽
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「盛り上がっているところ、悪いんだけれど――、他のお客さんに迷惑だからさ」
「あっ、ごめんなさい」とさすがに僕らも謝ったが、他のお客さんなんていないことに気がつく。
「どこにいるの?」
僕は座りながら聞く。
「今はいない」
「大丈夫?」
原田が心配そうに聞く。
「君たちは分かってないよ、プロは常に全力で接客するんだよ。いようがいないが関係ない」
庵野がため息をついて、「そりゃ、売れないわ」と呟いたので、僕と原田はうんうんと頷く。
「……、ところで君たちの話を聞いていたけどさ、彼女いないの?」
「……」
「高校二年生にもなって?」
「……」
「――、もしかしていたことない?」
「……、原田はどこの予備校通ってるんだっけ?」
「僕は駅前の医学部予備校だよ」
「もう来年は受験なんて考えられないよ」
「付き合ったことないのか……」
矢沢さんの呟いた言葉はわざとはしゃいでいた僕たちにもしっかり届いて、しんとする。
「いたことはあるよ、俺はね」
庵野が抜け駆けをしたよう言った。
「中学二年生のときに一ヶ月だけね」
僕は庵野に代わって補足する。
「欲しいよ……」
原田が負けたように呟いて、僕たちも肩を落とした。
「でも矢沢さんも結婚してないよね、彼女いないの? その年でいないほうが問題な気がするけど」
「高校二年生の時は俺はモテモテだったよ」
「本当かよ」庵野が声を上げる。
「本当だよ、バレンタインデーなんて袋でもらってた」
「袋だけでしょう」
「大人を馬鹿にするなよ」
「でもさ、」原田か言う。
「考えものだよね、どっちがいいか。高校生のときにモテモテであるか、大人になって多くの人に結婚を申し込まれるの、どっちがいいんだろう」
「お、さすが医学部がいうと説得力がある」僕が囃し立てると、矢沢さんはしばらく考えるようにして言った。
「やめよう、お互いに」
矢沢さんが休戦協定を持ち出して、僕たちが同意した、夏であった。
まさかその時、この夏に休戦協定が破られるとは誰も思ってもみなかったと思う。




