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君を想う  作者: ツヴァイ
19/22

倒れた後

「………君達ねぇ。三日間部屋で何してたの?」


 王城にある執務室の応接ソファに座るアナベルとジルベルトを腕組みしてグレンは見下ろしていた。


 なかなか出てこない二人に侍女達が声を掛けるが立ち入り禁止だと言われ、中に入れずにいた。


 強硬突入しようとしたが、鍵が掛かっているし、魔法で扉が強化されていて扉を破る事も出来ずに二人が出てくるのを気長に待つしかなかった。


「美味しく頂いてました」


「美味しく頂かれました」


 艶かしく笑うジルベルトと頬を赤く染め視線をさ迷わせるアナベルに心配していた一同が察した。

 ただ、グレンとナルサスはジルベルトの雰囲気がいつもと違う事に違和感を感じた。


「なんかジルベルト君、性格変わった?」


「そうですか?」


「いつもだったら、オロオロしてる事が多いよね」


「今まで、なんか身体と意識がしっくりこなかったんですが、記憶が戻ったら違和感が無くなりました」


 アナベルと会ったのは、卒業式の日が初めてだった。だから、アナベルがジルベルトを深く愛しているのを訝しく思っていた。

 それでも彼女の好意に少しづつ惹かれていった。


 結婚式が近付き、身体と意識とに違和感を感じつつ、このままで良いのか迷っていた時に今回の事が起こり、無くしていた記憶が戻った。

 幼い頃、二人は出会い、始めての恋を知った。その時の感情が甦り、今の自分の心が追い付いてきた。


「はあ~、まあ、いいや。取り敢えず、ジルベルト君が倒れた後の説明を詳しくしていくね」


 二人の向かい側に脱力したグレンが座る。その後ろにナルサスと第一騎士団団長ジョン・クラディと魔術師団団長ルートヴィッヒ・ブラットが立つ。


「はい、お願いします」


「そうだなぁ。倒れた直後は、先日に話したように、アナベルがトラウマを刺激されて、精神崩壊一歩手前の状態になって、膨大な魔力の制御が甘くなって体外に目に見える形で漏れだしたんだよ」


「トラウマ?ですか?」


「そう。君とアナベルが小さな頃にも同じ様に君が大怪我を負ったのを目の前で見てる。普段、余裕そうに振る舞っていても傷付きやすい娘だからね」


 グレンが気遣う様にアナベルに優しげな眼差しを向ける。


 いつも喧嘩をしていてもグレンは、やはりアナベルの父親で。

 どんなにぞんざいな扱いをされようが貶されようが、最後には結局愛してやまない娘が大切で心配なのだ。


「お父様、続きを」


 例え、その娘があえてグレンの気遣いをぶっ潰そうが、心配なのだ。


 瞳を閉じて、はらはらと無言で泣くグレンが憐れだ。


「グレン様、頑張って」


「ぐすっ、君はいつも優しいね」


 気を取り直して、グレンは話し出した。目元と鼻の頭を赤くさせたままなのが、ピエロみたいだと思ったが、言葉を飲み込んだ魔術師団団長。


「漏れでた魔力は一気に爆散して城を飲み込み始めたんだよ。なんとか、正気に戻そうと魔術師団総出で頑張ったんだよ。我が娘ながら凄まじい魔力だった」


 魔術師団総出で押さえ込む魔力とは一体どれ程のモノなのか想像できない。

 ジルベルト自身にも魔力はあるのだが、一般的な値より少し多いくらいだ。


「なんとか正気に戻ったアナベルだったんだけど、元凶を作ったあの女性を探し始めたんだけど、結局見つからなくてね」


「全く、どこへ行ったのやら」


 グレンの後ろに立つ騎士団団長ジョンがボソッと呟いた。


 謹厳実直な彼は、常日頃から部下に大変、慕われていた。そんな彼が息子であるケネスの件で謹慎処分を自分から言い出した。

 これに反発したのが、彼を慕っていた部下達でグレンに不服申し立てしたが、騎士団団長が自ら諌め、そのまま自宅で謹慎していた。

 まだ、自主謹慎処分中だったが、今回の騒動でグレンに駆り出された。曰く、『息子の事で責任を感じているのであれば、今回の騒動で貢献して見せろ』。


「………ところで、さっきから気になっていたんですが…」


 ジルベルトは今まで、敢えて見ない、触れないようにしていたがやはり気になり聞いてみる事にした。


 ――――大きなアイアン・メイデンが何故あるのかと―


 グレンやナルサス達が一斉に目を逸らした。答えてくれたのは、アナベルだった。


「気になるかい?」


「うん」


「中には隣国であるクティノス王国の王太子パトリック殿が入っている」


「意味がわからない」


 困惑したジルベルトは物言わぬアイアン・メイデンを見詰めた。

 すると、アイアン・メイデンの顔の部分が突如開き、中から青い髪に琥珀の瞳の端正な顔立ちの男性が顔を出した。


「やあ、はじめましてだね。私はパトリック・クティノス」


「え?あ、はい?はじめまして。僕はジルベルト・ストヴォールです」


 拷問器具から顔を出した美形と困惑気味の男性が話をしている。端から見たら大変シュールな光景ながら、誰も何も言わない。


「何故、ここに拷問器具があるのか不思議なんだね」


「そうですね。後、顔の部分て開くんですね」


「ははは。私は今、愛しのアナベル王女にお仕置きされている最中なんだよ」


「話を聞いてないですね」


「私が連れてきた女が愛しのアナベル王女の伴侶…君だね。君に危害を加えてしまった。君を傷つける原因を作った私はこうして拷問と言う名の愛の戒めを受けているんだ」


「よけいに意味がわからないのですが?」


「今は肉体への愛と放置の愛を受けているんだ」


「愛?」


「君達風に言うなら、拷問と放置プレイってとこかな」


「変態ですか」


「ノンノン!愛の変態と呼んでくれたまえ」


「え?あ、え?変態なんじゃないですか!」


 グレン達が目を逸らしたのは、変態で話が通じないから関わりたくないと言うことだったらしい。


 美形王子なのに変態で残念な王子だなんて、世の中どうなってるんだろう。


「王子が変態なんじゃない!変態が王子なんだ!」


「よけいに悪い!!」


「まあ、君を傷付ける気はあったよ。私がアナベル王女に婚姻を申し込んでいたのに一向に承諾しないと思ったら、ぽっと出の男に愛しの君が拐われていってしまったんだからね」


「もう、何度も言っていたじゃないか。私には心から愛する人がいると」


「諦めたくは無かったんだよ」


 意気消沈したような雰囲気のパトリック。ずっと打診し続けていたのは好きだったからじゃないのだろうか。まだアナベルに未練があるのだろう。好きになってしまった愛情はなかなか消えてくれない。


「私の性癖を知っていて尚且つ、私の欲を満たしてくれる人なんて貴女しかいない」


 違った!!!


「話が脱線して行方不明になりそうなんだけど?」


 パトリックの暴走ぶりが目に余ったグレンが話に加わる。

 グレンは騎士団団長ジョンに声を掛ける。彼は何処からか長い紐を取り出すとパトリックが入ったアイアン・メイデンを縛っていった。


「緊縛プレイかい。男にされても嬉しくないな」


 顔の部分が閉まって、パトリックのくぐもって聞こえる声が嫌そうだ。


 話が進まないからとグレンがパトリックから聞いた話をしてくれた。


 ライラが逃走して直ぐに、この国での事件と首謀者ライラが逃走したとの知らせを隣国に伝達した。

 それを聞いたパトリックが国内に騒ぎが起きてはいけないと情報を隠していた。

 そんなある日に、ある兵士から国境付近の村で美しい治癒魔術師が発見されたと報告が上がってきた。

 直ぐに件のライラだと見抜いたパトリックが、手を回して町の診療所へと入れるように取り計らった。

 ライラを暗部に観察させて、報告を受ける。一見真面目に働いているが、男にだらしなく、高い自尊心に自己中心的で承認欲求の激しい性格破綻者だと結論付けられた。

 何かに使えるかもしれないとパトリックは自分の手元に置いた。最初は不審そうにしていたが、直ぐに王太子であるパトリックに色目を使い始めた。

 最初は取り合わなかったが、官吏や騎士達に手を出し始めていたので、これでは不味いと感じ、自分がライラに惚れているように偽装して肉体関係を持った。

 その矢先にアナベルとジルベルトの結婚式が執り行われると知り、二人の仲を引き裂こうと早速ライラを投入した。

 仲を裂いてくれるか、焼け木杭に火が付く事等を想像していたら、まさかアナベルを殺そうとするとは思っていなかった。と、そう語っていたそうだ。




呼んでいただき、ありがとうございます。

二人のお互いの好きの感情指数

⚫️アナベル

幼い恋心20+会えない期間20+今60=

100


⚫️ジルベルト

幼い恋心40+今60+熟成された恋心∞

=∞


という、圧倒的な愛を手に入れたジルベルトの心は小犬から狼へと進化しました。

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