女の子は危険なり③
犯人を捕まえることが目的なはずなのに、何か違うことがメインになっている、、、確実に。
『さあ、着替えましょう。全身、コーディネートしたから、バッチリよ。まずは、これを着けて。』
マジか。さすがに躊躇する。ピンクの下着。お揃いのブラとパンティ。
『何恥ずかしがってるの!女の子なんだから、当たり前でしょ。それとも、いつものようにオムツがいいの?』
しぶしぶ、身につけた。生まれて初めて、ブラジャーを着けた。てか、何でDカップを用意していたんだろう。何でDカップと分かったんだ?いや、きっと彩先生のことだから、様々なサイズを買って来たに違いない。
カシャ!
『はい。記念撮影してあげたわ。』
『彩姉ちゃん、恥ずかしいよ。ねえ、スマホから今の写真のデータを消去してえ。』
『もう、すっかり女の子になっちゃって、可愛いんだから。分かりました。データは、後で消します。かすみさんに見せてからね。』
『彩姉ちゃん、やめてよ。かすみに、嫌われちゃうよ。』
『大丈夫よ。だって、犯人逮捕の為なんですから。それとも、ずっとこのままでいたいのかしら。』
もう、彩先生には何を言っても無駄だ。
『はい、そしたら、このスカートにブラウスを着てみて。ああ、いけない、その前に、パンストを履いてね。』
もうこうなりゃ、とっとと、着替えて、目的を果たそう。俺は言われるがままに、パンスト、スカート、ブラウスを身につけた。
『ちょっと、彩姉ちゃん、このスカートの丈、短かすぎない?』
『短いからいいのよ。犯人をおびき寄せるのだから、ある程度、目立たないとね。しかし、似合ってるわよ。まあ、なんてエッチな体つきなんでしょ。体のラインが見事に浮き出てるわ。バッチリ。男の視線を独り占めできるわよ。嬉しいでしょ?』
『嬉しくなんかないよ。これじゃあ、パンツ丸見えになっちゃうよ。』
『平気よ。きちんと歩いて、きちんと座る、きちんとした姿勢を保つ。そうすれば、決して見えないから。私が保証します。』
まあ、確かに普段の彩先生の服装は、いつもミニスカート。しかし、決して、下着が見えることはない。1秒たりとも、姿勢が乱れないからだ。
『そしたら、髪をセットし、最後にお化粧しましょう。』
髪をカットし、内巻きにカールされた。メイクは、彩先生好みのクッキリした感じになった。指輪やネックレスも身につけた。
『ちひろ、ピアスしたいから、耳たぶに穴を開けていい?』
そう言いながら、何やら工具を持って来た。
『ちょ、ちょ、ちょっと待って。人体再生能力があるから、耳に穴を開けても、すぐに塞がってしまうわ。自分で耳を変身させてみます。』
俺は、耳たぶを変形させ、小さな穴を作った。
『よし、これならピアスがつけられる。最後に口紅つけて、終了ね。ほら、鏡を見て来なさい。』
俺は大きな鏡の前に立たされた。これが、俺。鏡に映っているのは、美し女性であった。呆然となっている俺に彩は笑顔で声をかけてきた。
『何、見惚れちゃってるのよ。ビックリしちゃった?ちひろ、完璧な女になれたわね。どう?正直に話して。嬉しいでしょ?』
『なんか、ドキドキが止まらないです。絶対に言わないで欲しいですけど、嬉しい気持ちはあります。』
『それじゃあ、出かけるわよ。』
俺は、白のハイヒールを履いた。
『彩姉ちゃん、もうちょっと待って。上手く歩けないよ。』
当然、ハイヒールを履いて歩くのは初めてである。彩先生のように、颯爽と歩くことはできない。腰が引け、膝を曲げないと歩けない。何とも格好悪い。
『ハイヒールで、歩くコツを教えて下さい。練習しないと、無理です。こんなヘンテコな歩き方では、犯人は振り向いてくれないと思う。囮になれないわ。』
彩先生は、頭を抱えた。
『ただいまあ。』
やばい、かすみとレイちゃんが帰ってきた。レイちゃんが走ってくる音がする。
『ちひろちゃん、、、あれっ、いないのかな。』
そう呟きながら、俺と目があった。
『こんにちは。』
レイちゃんは、いつでも、礼儀正しい。かすみもリビングに入ってきた。
『あらっ、お客様?』
彩先生は、ニコニコしている。俺はドキドキしている。
『こんにちは。彩さん、このお方は?』
彩先生は、俺のお尻を叩いて、言った。
『こらっ、ちゃんと挨拶しなさい。』
『あの〜、私は、ちひろです。』
俺は顔を赤くしながら、答えた。
『えっ、ちひろちゃんなの?』
俺は、頷いた。
『ビックリ。だって、とっても綺麗。でも、どうしちゃったの?』
恥ずかしがる俺に代わって彩先生が答えた。
『例の埼玉連続女性殺人事件。被害が増え続けてるの。この子、かすみさん、レイちゃんのことが心配なのよ。で、犯人を突き止める為に、囮になるっていうの。私は止めたんだけどね。』
えー、止めてないじゃん。ノリノリで、準備したのは誰だっけ。
『それで、20歳くらいの女性をイメージし、変身してもらったのよ。私は、警視庁から被害者の共通する特徴を聞いてきたので、犯人好みの衣装とメイクをしたわけ。そして、ほら。』
彩先生がスカートをめくった。
『キャッ。』
『あら、可愛い下着まで身に着けてるの?そういえば、お宝~とか言って、私の下着を見てからかったりしてたわよね。そのときの、お返しよ。』
今度は、かすみがスカートをめくった。
『お宝、見えたり。』
『やだあ。ママ、やめて。』
彩先生、かすみが何度もスカートをめくって、俺の反応を見て笑っている。
『でも、一つ困ったことがあるのよ。ちひろ、ちょっと歩いて!』
俺はハイヒールを履いたまま、しぶしぶ歩いた。
『キャハハ。何それ。アハハ、面白い。それじゃあ、美人が台無しね。』
やはり、笑われた。
『完璧な準備が出来たと思ったのに。私のミス。迂闊だったわ。』
『ちひろちゃん、もう一回、歩いて。』
かすみに言われたら、断れないなあ。もう、恥ずかしいけど、仕方ない。俺は、もう一度歩いた。
『キャハハ、やっぱり面白い。彩さん、これは仕方ないことね。だって、初めてのハイヒールなのよ。初めは、みんなこんなものよ。むしろ、ヒロ君が最初からハイヒールを上手く歩きこなせたら、逆にドン引きしちゃうわ。もう少しヒールの低いパンプスにするしか方法はないと思うわ。』
『やはり、そうね。ここで、ハイヒールの歩き方の練習したら、脚がパンパンになって、せっかくの美脚が損なわれるわね。かすみさんの言う通りにしましょう。』
『私のヒールの低いパンプスをお貸しするわ。ちょうど、その服に合ってると思うから。でも、歩き方の練習はした方がいいかも。ちひろちゃん、靴を脱いで歩いてみて。』
また歩くの?仕方ないなあ。俺はハイヒールを脱いで、歩き出した。
『やっぱり変ね。20歳くらいの女の子は、もっと歩幅が狭くて、あと一直線上を歩くのよ。ちひろちゃんは、二直線になってるわ。それと、腕の振り方が違うの。男性は腕を体の横から前に振るけど、女性は体の横から後ろに振る感じよ。やってみて。』
突然のウォーキングレッスンが始まった。
『こんな感じですか?』
『そう。さっきより大分マシになったわ。後は目線ね。下を見るのではなくて、真正面を見て歩くのよ。そして、頭の位置が変わらないようなすると、かっこよく見えるの。』
『かすみさんのアドバイスは、完璧ね。そして、かすみさんの言うことは素直に聞いてくれるわ。ね、ちひろ。』
『彩姉ちゃん、揶揄うのやめてよ。』
『後ひとつだけ、もう少し腰を動かすとセクシーよ。ただ、あまり大げさですと、下品になるから注意して。あくまで自然な感じで、腰をくねらすの。理解できるかな。』
『はい。やってみる。』
『ねえねえ、この女の人、ちひろちゃんなの?』
『そうよ。ちひろちゃんなの。大人の女性に変身したの。とても、綺麗よね。』
『うん。凄く、、綺麗。なんかママに似てる。』
えっ、彩先生をイメージしたつもりだったのに。そうか、変身途中で、彩先生が気を送ったんだ。かすみに似た女性になるように。この先、もしもの時、3歳の俺は、レイちゃんの身代わりに、20歳の俺はかすみの身代わりにするつもりなのだ。だから今回の囮は、そのための練習でもあると言うわけか。さすが、先を見越す力に長けている。でも、俺の歩き方の下手さまだは、推測できなかったわけだ。




