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女の子は危険なり①

 男の時は、感じられなかったことが、女の生活を続けていくと、気がつくことがある。この世の中、女性に対して優しい人が多いということ。まあ、それは前から分かっていたが、優しい人が多いのと比例するがごとく、女性に対して悪いことをする奴が多いというとだ。簡単に言えば、変質者が多いのだ。男の時は、特に何とも思わなかったが、女の立場になった今、変質者はものすごく怖い存在である。普通に暮らすだけでは安全とは言えない。常に用心をする必要がある。まあ、そうわ言っても、俺の場合は特別だから、襲われたとしても、簡単に返り討ちに出来る。ただ、もし、レイプなどされたらと思うと、考えただけで、ゾッとしてしまう。思い切り怖い。俺が怖いと思うのだから、世の女性が感じている恐怖は計り知れない。

 今朝、保育園に向かう前に、テレビのニュースを見ていたら、連続女性殺人のことを報じていた。未成年の女性ばかり狙った犯行で、すでに3人が毒牙にかかっているのだ。恐ろしいことに、犯行は全て、埼玉県内で起きている。我が家の女性陣には、用心してもらうのと同時に、警護も強化しないといけない。

 ニュースが終わると、チャンネルを教育テレビに切り替える習慣になっている。「お母さんと一緒」を見るのである。長寿番組だ。俺が観ていたのは50年位前の話だ。50を過ぎたおっさんが、何の因果か、毎日、お母さんと一緒を見ている。テレビを見ていたレイちゃんが、とんでもないことを言い始めた。

『ママ、お母さんと一緒って、3歳の子供だけが出られるんだって。レイは、もうお姉さんだから、無理だけど、ちひろちゃんは、3歳だから出られるよ。申込みしよう。レイ、ちひろちゃんが出てるテレビを見たい。』

『そうね。当たらないと思うけど、申し込んでみようね。』

参ったなあ。今度は「お母さんと一緒」かよ。まあ、外れると思うけど。しかし、怖いのは、彩先生だ。このことに気がつけば、絶対に裏で手を回し、確実に当選になるに違いない。このことは秘密にせねばなるまい。


 よくよく考えたら、一番の変質者は俺かもしれない。50過ぎのおっさんが、女児に変身して、毎日、保育園に通い、バレエを習ったり、水泳に行ったりしている。他人に害を与えていないのが、救いではあるが。

『ちひろ、毎日、バレエの自主練習をしてるらしいなあ。あんなに嫌がっていたのに、やはり、プロを目指しましょう。ところで、最近、平和だと思ってましたけど、何やら、悪い奴が出没しているようね。女性の敵が現れているの、知ってるかしら?』

『はい、彩姉ちゃん。知ってます。埼玉県連続女性殺人事件のことですよね。怖いです。』

『ちひろが恐いんかい。そんな訳ないでしょ。あっ、そうか。ちひろも段々と女の子らしくなってきたから、考え方も女の子に近づいているのね。おっぱいも大きくなってるしね。』

あれから、事あるごとに、胸のことを話題にして、俺をからかってくる。でも、女の子の気持ちが昔よりは分かってるとは思う。

『彩姉ちゃん、何か考えてるの?』

『当たり。ちひろは勘が働くようになってきたわね。女の勘かしら。』

何を言っても、揚げ足をとってからかってくる。もう、慣れましたよ。

『わーい、当たったのね。で、悪者退治しましょうってことでしょ?』

『またまた、当たり。女性の敵をやっつけましょう。あなたも女性なんだから、当然、あなたがやるのよ。』

また、いつもの目をしている。何か悪巧みをしている目だ。 まあ、かすみや、レイのことだけでなく、この辺りに住んでいる女性の事を考えたら、犯人を捕まえるのは、悪いことではない。

『はい、協力させていただきます。』

 そんな会話をしていると、テレビのニュース速報のテロップが流れた。また一人、犠牲者が出てしまったのだ。もたもたしてはいられない。

『ちひろ、急がないといけないわ。』

『はい。それで、犯人の目星がないのに、どうやって捕まえるつもりなのですか。何か、お考えがあるんでしょう?』

『もちろん。あなたと違って、頭がいいの。スペインの作戦を使いましょう。』

『スペインって、確か、ベルーガを倒しにいきましたげど、、、あの時は、俺が囮になって敵をおびき寄せたとはずだけど、、、今回も囮作戦ですか?』

『そう。本当に勘が良くなりましたね。囮は、ちひろです。他に該当者は見つからないでしょ。』

『また、私が囮ですか。』

『そうよ。まさか、私に囮になれとおっしゃるの?確かに私の美貌なら囮にぴったりですが、か弱い女性には、無理ですわ。』

か弱いって、誰のこと?地球上で、一番恐ろしい人物なのに。まあ、でも万が一のことを考えれば、俺しか適任者はいない。

『分かりました。囮になりましょう。ただ、闇雲に囮になっても、罠にかかるとは思えないです。ベルーガの場合は、悪魔でしたから、俺の気を見つけて狙ってきたので、遭遇できたけれど、今度は変質者とはいえ、普通の人間。』

『だからこそ、あなたが適任なの。ちひろの得意技があるでしょ。』

『言っている意味がよく分からないのですが。』

『本当、おバカさんだわ。分身仏よ。囮は一人ではなく、複数にすれば、引っかかる可能性が格段に上がるでしょ。』

『なるほど。流石は、彩姉ちゃん。』

『警視庁から、捜査情報は聞くので、犯人の行動パターン、出没する場所の共通点などから、囮を歩かせる場所を決めるわ。』

やはり、彩先生は凄い。伊達にCIAに所属してはいない。

『そうと決まったら準備をしないとね。私、出掛けてきます。』

彩先生は、そう言葉を残し、そそくさと、何処かへ出かけていった。


 部屋の扉を叩く音がした。

『ちひろちゃん、今夜もやろう。』

レイちゃんが、俺をバレエの練習に誘ってきたのだ。

『はーい、レイ姉ちゃん。』

寝る前の恒例となっているバレエの自主練習だ。週一回のバレエ教室以外に、レイちゃんのレッスンを受けているのだが、最初はごっこあそびだったのだが、今は結構、本格的にやっている。理由はレイちゃんの探究心の高さにある。パソコンでバレエの練習用動画を見ては、それを覚えて、俺に教えてくれるのだ。レイちゃん自身は、俺に教えることで、完璧に踊れるようになっている。相乗効果で、二人とも驚くほど上達している。本気だからこそ、楽しい。でも、かすみに見られると、ふと我に帰り恥ずかしくなる。

 練習の後、かすみにお風呂に入れてもらい。水分補給のため哺乳瓶でお茶を飲ませてもらっている。以前、保育園でおねしょが治らなかった時、いわゆる『赤ちゃん返り』のようになってしまい、その時から、寝る前だけは、水分を哺乳瓶で飲ませてもらっている。かすみが忙しい時は、レイが飲ませてくれる。この上ない安心感を抱き、大抵は、飲んでる途中で眠ってしまう。この日も、かすみの横に寝転んで、哺乳瓶を口に当てがわれ、チュパチュパと飲んでいた。

『ちひろちゃん、本当に甘えん坊さんね。でも、いいのよ。私にだけには、いつでも甘えてね。』

『ママ、大好き。』

俺は眠りについた。

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