涙の理由①
彩先生は、警視庁に証拠のビデオを提出し、その代わり、双子の美人姉妹については、詮索しないよう依頼した。依頼というより、命令だ。
事件は解決し、これでしばらくは安心だ。ホッとしたら、頭に洋介の顔が浮かんで来た。彼の妻の事件も解決してあげないとと思った。
そうだ。レイちゃんにお礼を言わないといけない。
『レイ姉ちゃん、ありがとう。お姉ちゃんのおかげで、事件が解決出来ました。彩姉ちゃん、美味しいものを食べに連れて行こう。』
『ちひろちゃん、頑張ったね。』
レイちゃんが、ほっぺにキスをしてくれた。それを見て、彩先生も俺のほっぺにキスをした。
『私に任せなさい。六本木に新しくステーキハウスが出来たのよ。週末に、みんなで行きましょう。』
六本木というキーワードに俺は反応してしまった。すると彩先生が余計なことを話し始めた。
『かすみさん、ちひろったら、彼氏が出来たのよ。』
何て事を言うんだ。
『違う、違う。ナンパされただけよ。』
いかん、また、大袈裟に反応してしまった。
『あら、そうなの?だから、最近、熱心に化粧するようになったのね。』
『ママ、本当に違うから。ちひろが好きなのは、ママだけだから。』
慌てふためいている俺を、3人の女神が楽しんでいる。
『ちひろちゃん、もうキスしたの?』
レイちゃんが大胆な事を聞いてきた。
『してないよ。するわけないでしょ。』
『ああ、ちひろちゃん、赤くなってる。私、ちひろちゃんの彼氏に会ってみたいなあ。』
再び、大胆発言。やばいぞ。やばいぞ。絶対に彩先生が反応するはずだ。
『そうね。みんなで見にいこうか。私が、セッティングするわ。』
やっぱり、反応した。彩先生がスマホを取り出した。そう言えば、彩先生も、どさくさに紛れて、洋介さんとライン交換していたはずだ。連絡を取るつもりだ。
『ちひろちゃん、そういうことは、ちゃんとママに報告しないとダメよ。それで、どんな人なの?』
『ママ、本当に違うって。ただ、ナンパされて、一度だけ食事しただけなの。彼氏でも何でもないし、だって、奥さんもいたのよ。』
『えっ、じゃあ、不倫じゃない。悪い男じゃないの。』
『それも違うの。悪い男ではないわ。とても誠実な方よ。奥さんは、2年前に亡くなってて、今は彼女はいないみたい。』
『あれれ、ちひろ、彼氏は悪くない、誠実な方だなんて、何、褒めてるのよ。やっぱり好きになっちゃったのね。』
『だから、違うってば。』
俺は、泣き始めてしまった。
『ああ、面白い。ちひろをからかうのは、本当に楽しいわ。』
『もう、やめて。妹をイジメないで。』
レイちゃんが俺を守ろうとしている。
『レイ姉ちゃん、大丈夫よ。でも、ありがとう。』
『ごめん、ごめん。ちょっと、ふざけ過ぎたわね。』
彩先生が謝った。
『ちひろちゃん、ママはちゃんと気持ちは分かってるから、心配しないで。』
かすみが、俺の涙を拭いてくれた。
この頃の俺は、よく涙を流す。ホント、泣き虫だ。
『ああ、でも、もう送信しちゃった。』
彩先生の目が光った。
『彩姉ちゃん、スマホを見せて。』
彩先生は、ラインの画面を見せてくれた。
『はーい、洋介さん、お元気ですか?彩ですけれど、覚えてらっしゃいますか。ちひろの叔母です。美人の叔母ですわ。オホホホ(笑)
あのね、うちの、ちひろが洋介さんに会いたがってるのよ。でも、恥ずかしがっちゃって、行動しないから、私の出番というわけ。みんなでドライブでも出かけませんか?私がクルマ出しますので。
お返事、お待ちしてまーす。 彩。』
俺は、彩先生を睨んだ。
『いいでしょう。私も洋介さんに会いたいし、みんなに紹介したいし、ね。』
『もう、自分勝手なんだから。』
俺は呆れた。
『ねえ、彩さん、洋介さんって、カッコいいの?』
『かすみさん、それが本当にイケメンなのよ。』
『まあ、そうなのね。ちひろちゃんの初恋の人、見たいわあ。』
『レイも見たい。』
再び、3人の女神の攻撃が始まった。でも、さすがに、もう涙は出ない。
3人の会話をただひたすら聞いていた。ただ、彩先生の暴走のおかげで、また洋介さんと会えると思うと、なんか嬉しい気持ちになっている。俺は男なのに。完全に女の子の気持ちになっていた。




