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作戦決行③

 地図を見ていると、レイちゃんがやってきた。

『ちひろちゃん、何してるの?』

目がキラキラしている。興味津々になっているようだ。

『この場所の共通点が何かを考えてるの。』

『お姉ちゃんに、見せてごらん。』

俺の姿が、0歳でも、3歳でも、19歳でも、レイちゃんにとって、俺は妹なのだ。今まで何度も、レイちゃんに謎の解明をしてもらっている。凡人では分からないことでも、レイちゃんは、僅かな時間で解いてしまうのだ。真剣な眼差しで、地図を見ていると、数分後、満面の笑顔になった。

『ちひろちゃん、分かったよ。お利口にして待っててね。』

レイちゃんは部屋を出て行った。俺は、もう一度地図を見た。横にいた彩先生も地図に目線をやっている。

『彩先生、私には国道16号しか、共通点が見つからないです。』

またもや、レイちゃんに助けられる予感がする。以前、レイちゃんのI.Qを調べたが、あの時よりも確実に上がっていると思える。

『お待たせ。お利口に待ってて、偉いね。』

レイちゃんは、俺の頭を撫でた。俺は顔を赤くした。

『ちひろ、何、照れてるのよ。』

彩先生が笑って、俺の脇を突いた。

レイちゃんは、テーブルの上の地図の横に、もう一枚地図を載せた。

『これね。ママが持っていた地図なんだあ。ママがお仕事してた時、使ってたんだって。』

それを見て、俺は彩先生と顔を見合わせた。彩先生もピーンときている感じである。

『レイ姉ちゃんは、やっぱり凄い。天才だあ。』

『ね、分からない時は、お姉ちゃんに聞けばいいのよ。』

レイちゃんが持ってきたのは、埼玉県内の深夜バスの路線図であった。終電が終わった後に運行される深夜バス。都心から、主だった埼玉県の駅に向かって毎晩、運行されている。都内の繁華街なら、深夜遅い時間に、若い女性が歩いてきても不思議はない。しかし、深夜の国道16号沿の住宅街に、若い女性が歩いている数は多くない。もっと言えば、犯人好みの美人が歩いている可能性は、かなり低いはずである。それでは、獲物を狙うのは難しい。いや、獲物を探すことさえ出来ない。こんな簡単なことに、全く気がつかなかった。未遂事件で、車に引き込まれそうになったのは、おそらく、別の事件であろう。犯人はバスで移動していたのだ。

 レイちゃんが持ってきた路線図を見ると、出発点は、東京、上野、池袋である。犯人は、このどこかのバスターミナルで、獲物を物色し、狙いをつけた女性と同じバスに乗って、後を付けたのに違いない。作戦変更だ。囮は東京、上野、池袋のバスターミナルに配置するのだ。

バスの起点と終点から、20組の囮で十分だ。あてもなく歩くより、確実だ。俺は、分身仏を各バスターミナルに配置した。そして、終点に着いたら、ゆっくりと、静かな方向に歩くよう指示した。そう、なるべく人気がないところに誘うのだ。

 終電が終わり、深夜バスに人が集まってくる。分身仏には、出来るだけ前側の席に座らせた。犯人から常に見られる状態の方がいいからだ。バスは指定席なので、満席でも40人程度である。電車に乗っている人数に比べれば、圧倒的に少ない。その人数が途中のバス停で降りていくので、終点に到着するときには、半分くらいになる。その半分の人が、それぞれ自宅の方向に向かって歩くのだから、すぐに一人だけの状況が作れる。しかし、犯人もバカではない。目撃者がいたら、犯行に及ばない。

 それぞれのバスターミナルから、深夜バスが出発した。怪しい人物が乗っているかを確認したが、ほとんどが男性の会社員のようで、疲れて眠っているか、スマホをいじっているらしい。女性は、各バスにちひろを除き3人程度のようだ。バスの中で、あからさまに怪しければ、獲物である女性から避けられてしまう。だから、むしろ大人しくしているはずだ。犯人は、襲う時を想像して、密かに興奮しているはずだ。どのバスも終点に到着するまでに、1時間半ほどかかる。到着後が勝負だ。

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