【SS】俺の奥さんは、とんでもなくカッコいい!④
その時、バシュッという聞きなれない音がした。
ざり、という土を踏む音。
なにか、重いものが落ちる地響きのような音。
「キエエエエエエエエエエエーーーーー!!!!!」
巨鳥の凄まじい叫びがこだました。
血生臭い風が鼻腔を撫でるのに、思いのほか強い衝撃はやってこない。
不思議に思って振り返った俺の目に飛び込んできたのは、真っ赤なふわふわの髪と、威嚇するように膨らんだシッポだった。
「カルーさん……!」
俺たちを守るように巨鳥と相対していたのは、紛れもなくカルーさんだった。
いつの間に戻ってきたのか、肩にはデカいオッドノーズを俵担ぎしている。無造作にオッドノーズの巨体を手放したカルーさんは、右手の曲刀を一振り払う。
刀身の血が、勢いよく飛び散った。
「アタシの可愛いクラちゃんと子供たちを……狩ろうとしたね?」
かつて聞いたことのない、ドスのきいた声がカルーさんから聞こえてくる。
その細い背中からは、異様な圧迫感が隠しようもないほどに漲っていて、周囲の空気までがチリチリと焦げ付いてしまいそうだ。カルーさんが冒険者ギルドであれほど恐れられている、その理由を垣間見た気がした。
カルーさんが一歩前に足を踏み出せば、すでに地に落ちていた巨鳥はバタバタと翼をはためかせる。
逃げたくとも、もはや飛べないんだろう。
音もなく、カルーさんの体がふわりと宙に浮く。
次の瞬間には、あまりにもあっけなく、巨鳥の首が飛んでいた。
「ママ、すごい……」
「ママ、すっごくカッコいい……!」
ユイとレオンも尊敬の目でカルーさんを見ている。
だよな! パパも心底、全力で同意だ!
心のうちで大絶賛していたら、振り返ったカルーさんがニカッと破顔して、猛ダッシュで飛びついてきた。
「クラちゃあん! レオン、ユイ!! 遅くなってごめんね! もう大丈夫だよー」
レオンとユイを間に挟んで、ぎゅうっと抱きしめあう。
きゃっきゃと声を上げて喜ぶ二人越しにカルーさんと目を合わせれば、キラキラの期待に満ちた目で見つめられていた。
「ありがとう、カルーさん! カルーさんが来てくれなかったら今頃」
「どういたしまして! それよりクラちゃん、どうだった? アタシの狩!」
狩? そういえば、そもそも狩が見たいっていう、俺の一言が発端だった。あまりの恐怖でちょっと忘れてたけど。
「ほんっとうに凄かったですよ、瞬殺でしたし。さすがカルーさん」
カルーさんのふわふわの赤毛と犬耳のあたりを撫でると、カルーさんはうっとりと目を閉じた。シッポが嬉しげにふわりふわりと揺れている。
「アタシ、カッコ良かった?」
「カッコ良かったーーーー!!!!!」
俺が答える前に、子供たちが大合唱だ。
知ってたけど、常々そう思ってはいたけど、今日ほどこの事実を体感した日もそうないだろう。
俺の奥さんは、めちゃくちゃ可愛い。
そしてやっぱり、とんでもなくカッコ良い!!!!!
いい夫婦の日SS、これにて完結です。
カルーさんとクラちゃんはやっぱり書いてて楽しいです(^^)
お気に召したらば、『人外恋愛譚』の書籍の方もよろしくです!




