【SS】俺の奥さんは、とんでもなくカッコいい!③
「ママはユイとレオンが大切だから、怪我をしないようにこう言ってくれてるんだよ。ここで一緒に待っていよう。きっとスゴイ獲物を狩ってきてくれるよ」
二人をなぐさめるためにそう言ったら、つぶらな瞳で見上げてくる。
「……おっきい?」
「おいしいお肉?」
もう食い気に走ってる!
しかし俺には獲物の姿すら見えないわけで、仕方なくカルーさんに視線を送る。カルーさんの芽は、変わらずに獲物がいるらしい方向をしっかりと見つめていた。
「デカい……おいしそう!」
こっちも既に食い気全開だった。
舌なめずりしたカルーさんは「瞬殺してくる!」とひと声残し、驚くほどの跳躍で崖を登って行った。
すげえ。今までは俺達にあわせてゆっくりゆっくり、登ってくれていたんだなあ。
レオンとユイを見下ろしたら、まんまる目で口をぽかんと開けて、カルーさんが駆けていった方向を凝視していた。
「ママ、かっこいいな」
二人の頭を撫でてそう言えば、きらっきらの目で首をぶんぶんと縦に振り「ママ、カッコイイ!!!!」と声を合わせる。興奮しているのか、しっぽがちぎれんばかりに振られている。
「ママ、すごい!」
「戦ってるとこ、見たい!」
なんとか見えないかと岩肌に駆け寄り目を凝らしている姿がなんとも可愛らしい。
ぶっちゃけ俺はまったく見える気がしない。でも、獣人であるカルーさんの血もひいているこの子達なら、見えるかもしれないもんな。
一生懸命に背伸びして、目を細めている様子の我が子達を見ていたら、急にフッと空が暗くなった。
「?」
不思議に思って空を見上げた俺は、瞬間、息がとまる。
大空に、巨大な鳥の影が見えた。
あきらかに、俺達の頭上を廻っている。
戦闘経験のない俺でも、あの巨鳥が確実に俺達を狙っていることが肌で感じられる。それくらい強烈な違和感が俺を襲う。
とっさに、走り出していた。
巨鳥に気付いていない子供たちに覆いかぶさり、しっかりと腕に抱いた。
魔物は仕留めやすい子供を狙う事が多い。俺ではあの魔物を倒す事なんて絶対に無理だが、この子達の盾になる事ならばできる。
情けないけれど、脳裏に浮かんでいたきっと、そのことだけだった。
「パパ?」
「なあに?」
自体を把握できていない子供達の、あどけない声が聞こえる。この子達だけでも、せめて守りたい。
「キエエエエエエエエエエエーーーーー!!!!!」
耳をつんざくような叫び声があがる。
風を切る音が危機を打つ。ああ、あの巨鳥が、ついに襲ってくる……!
ごめん、カルーさん。ああ、飛び石、俺が持っていれば良かった。




