【SS】俺の奥さんは、とんでもなくカッコいい!②
「く、クラちゃん、どうしたの!? 大丈夫!???」
「カルーさん、あんなとこまでどうやって登ったの……?」
「え、普通に走って登ったけど。ここからなら、だいたいまる一日かかるかな?」
まる一日……そんな、当たり前でしょ的な顔で言われても。
でも、そうか。カルーさんはそんな大変な思いをして、俺のためにあの飛竜を狩ってきてくれたんだな。そう思うと、自然に言葉が口をついて出ていた。
「ありがとう」
「えっ? なんでいきなり?」
「いや、現場を見たらカルーさんの苦労がちょっと分かったから。あの時も嬉しかったけど、より有り難みが増したっていうか。……本当にありがとう、カルーさん」
「〜〜〜〜〜〜〜っっっ!!!!!」
急激に真っ赤になったカルーさんは、バッと顔を両手で覆って座り込んだ。顔はみえないけれど、しっぽが猛烈な勢いで暴れまくってるから、とりあえず喜んでくれているんだろう。
六児の母になっても、カルーさんは相変わらず可愛い人だ。
「ママ、お顔まっかー」
「まっかー」
ユイとレオンにからかわれて、耳までへニョンと垂れてしまったカルーさん。全然顔を見せてくれないから、ユイとレオンが一生懸命覗き込んだりしているけれど、頑なに両手で顔を覆っている。
シッポの暴れかたがだいぶ落ち着いてきたから、もうちょっと待てば大丈夫だと思うんだけど。
そんなことを考えながら、三人の様子を微笑ましく眺めていた時だった。
急にカルーさんの耳がピーン!と立って、鋭敏に音を確かめている。
一気に真剣な顔になったカルーさんが、猛然と立ち上がった。
「獲物だ」
まっすぐに山のどこかを見ている瞳に、もう照れや恥じらいの色は一切ない。
声をかけることさえためらうほどの緊張感が、その背から漂ってくる。カルーさんの燃えるような真っ赤な髪が、なぜか揺らめいて見えた。
「狩ってくる」
「ユイも! ユイも行く!」
「ぼ、ぼくも……」
怖いもの知らずのユイは元気よく、ユイよりは臆病なレオンはちょっと自信なさげに名乗りをあげる。
でも、振り返ったカルーさんの表情は厳しかった。
「ダメ。あいつはそんな簡単な魔物じゃない。危険だから、パパと一緒にここにいて」
「……っ」
いつにない真剣なカルーさんの様子に、さすがに子供たちも何も言えないようだ。俺の脚にしがみついて、カルーさんにコクリと頷いてみせている。
その小さな頭の犬耳があまりにもシュンとしおれているのが可愛くて、俺は二人の頭をできるだけ優しく撫でてあげた。




