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【書籍化】クラちゃんとカルーさんの幸せな結婚  作者: 真弓りの


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12/18

いろいろ忘れてた

はぁ、なんとか子供達はカタがついた。


あんな小さな子に臨月だとか流産するとか言ったってわからないだろうし、子供への説明は本当にいつも難しい。ただ、幸いうちの子達はカルーさん大好きだから、カルーさんのためだと言えば大抵の事は聞きわけがいい。


母は偉大だ。


俺の中で子供の説得という骨が折れる物件を無事に完遂出来た事にホッと息をつき、……そこでまだ正座のままの大人達がいた事を思い出した。なぜか目をまんまるにしてこっちを見てはいるが、二人とも大人しくデカい体をちんまりと折り曲げて、姿勢正しく正座してるし。


うーん……怒りのあまり、思わずお義父さんとフルーさん……お義兄さんを正座させてしまったわけだけど、少しやり過ぎだったかも知れない。


子供達に言い聞かせるために冷静さを取り戻してみれば、若干の罪悪感が芽ばえてくる。



気不味い気持ちで視線を向けたら、二人の背中がピシッと伸びた。警戒するようにピンと立ち上がった耳は、完全に俺の動きを捉えようと集中している。



いや……困ったな。



しかもその向こうで、カルーさんときたら分かりやすく暗雲を背負っちゃってるし。あの耳のしょんぼり具合いだと、相当落ち込んでるよな。俺、怒り過ぎたか?



「あの……」



俺が小さな声を出した途端、三人が三人とも、バッと音を立てて顔を上げる。一斉に上がった顔は、なにやら悲愴感に満ちていた。



「すまん!」



ガバッと頭を下げたのはお義父さんだ。



「えっ! うわ、ちょっと、頭を上げて下さい! っていうか、俺こそすいません! その、もう正座はいいですから」


「いや、クラウドの言う通りだ。すまんかった」


「俺もごめん。カルーのヤツ、ピンピンしてるし……平気だと思っちまったんだ」



うわ、ますます居心地が悪い。そりゃカルーさんとお腹の子供の事は心配だし、もうこんな風に危ない事はして欲しくはないけれど、冷静になってみたら二人の危機感が薄い理由にも思いあたってしまったもんだから……真面目に困る。



「あの、すいません、俺も……カッとなってしまって。その……獣人族はお産が軽いって聞いた事はあるんですけど、やっぱり心配で」



そう、獣人族はお産が軽い場合が多いらしいんだ。

なんといっても、野生の血が濃い種族。自然の中であればお腹に子供を抱えようと、狩をしなければ生きてはいけないわけで。


カルーさんもひどいつわりの症状はなくて、ちょっと気持ちが悪くなる事はあっても、酷く吐いたり頭痛でうごけなくなったりなんて事はなかったし、ご飯が食べられなくなるなんて事は微塵もなかった。


だもんで本人も動く動く。俺も近場の草原への狩ならば、今までだって黙認してきたんだ。本能からくる欲求を圧し殺す事は容易じゃないだろう事くらい、俺だって分かってる。ただ。



「なんせ今回はお腹大きいんで」



絶対に前回より倍は入ってる。

獣人は多産で有名だ。さすがのカルーさんも重いと嘆き、動きもえっちらおっちらと緩慢になった。しかも今は臨月で、相変わらず元気良く動くのはふさふさしっぽくらいのもんだ。



「さすがに動きが鈍いし……」



ただでさえ転びそうでヒヤヒヤなのに岩山でなんてゾッとする。それにもしもモンスターに狙われたらと思うと。



「みなまで言うな! どう考えたって俺らが悪いんだ。もう絶対にしねぇから」



二人が真剣な顔で誓ってくれたところで、なんだか気の抜ける声がした。



「ねぇ、クラにーちゃん、おやつまだぁ?」


「死ぬかも」


「手伝ったのに……」



声の方を振り返れば、テーブルにつっぷして顔だけこっち見てる三対の目。耳もしっぽもタレ~ン……と力無く垂れている。ついでに腹の虫までキュルルルル……と力無く主張した。


ああ、そうだったよな、ごめん。

この混乱で弟くん達の事忘れてた。

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