謎の細剣使いの少女
「やったな」
「そうだね」
魔物を屠った俺たち(ほとんどは千紗の手柄だが)は短くそう言い、ハイタッチを交わしていた。
誰かに見られるのもまずいので、素早く裏庭まで撤退し、それぞれの武器をケースに収める。
俺は携帯を取り出し、京助の名前をタップし、呼び出す。
『どうした?』
数回のコール音の後、京助の声が聞こえた。
「こっちは片付いた。そっちはどうだ?」
短く、そういうと電話越しに京助の申し訳なさそうな声が返ってきた。
『すまない。まだ終わってない・・・。くそっ、なんだこれ。術式はあらかた把握できたんだが、傷がひどすぎる・・・。ぎりぎり魔力が通ってる感じだぞ』
その声は、若干の焦りも混ざっていた。
「わかった。そっちはまだかかりそうなんだな?」
『あぁ。すまない』
「気にするな。校長なら何かわかるか―――――」
そう言いかけたところで、先ほど以上に大きな悪意が膨らむような、そんな気配がした。
「・・・っ!!和真っ!」
千紗も同じようで、すぐに薙刀を手に取る。
『・・・悪いな和真。こちらもできるだけ早く終わらせる。もう少しだけ時間稼ぎを頼む』
「ああ、高速で頼む。どっちが先に音をあげるか、勝負だな」
俺はそういうと、電話越しに、京助が苦笑する気配が伝わってきた。
『望むとこだ。・・・先にくたばんなよ』
そういって京助は通話を切る。
俺は携帯をポケットにしまい、素早く刀を取り出す。
「そう簡単にくたばってたまるか。・・・時間止め、なんて言わず、殲滅するかっ!」
「うんっ!」
俺たちは一気に校庭へ駆け出した。
「うわ・・・多いねぇ・・・」
校庭に戻って早々、千紗はそうぼやいた。
正直俺だって音をあげたいところだ。
「やるしかねぇか・・・」
笑みが引きつる。こちらは二人。対する魔物の数はとてつもなく多い。
犬やら狼やら烏やら。どいつもこいつも黒いオーラをまとっている。
「ここまで集結されると、ただの事故ってのは考えらないよな・・・」
「そうだね。まぁ、これ以上増えてもらっても困るし、一気に行こうか」
そういい、千紗が先陣を切って魔物の群れに突っ込んでいく。
「白枷流薙刀術、初の型、漣!」
そういい、千紗は自身の速度をも乗せ、薙刀を横に振るう。
ズザザザザンッ!!っと小気味いい音を立て、一瞬にして狼やら犬やらの頭部を薙ぎ、屠っていく。
「おい!あんまり突っ込みすぎんなよ!!」
大声でそう言うが、千紗は止まらない。
「どの口が言ってるの!!」
むしろ文句を垂れ、さらに突っ走る。
「ったく、サポートする身にもなれっての!!」
千紗にできた隙を狙った魔物の攻撃を、俺がさばいていく。
「それも、どの口が言ってるの?」
とっ、と千紗が俺の近くまで戻ってきてそう言う。
「はいはい。俺が悪うござんした」
「わかればよろしい」
そんな軽いやり取りをしつつ、お互いのサポートをしつつ、飛びかかる敵を薙ぎ倒していく。
地に足つく魔物は楽だが、空中にいる魔物が意外と厄介だ。
ちょこちょこと邪魔して、すぐに飛んでいく。
身体強化の恩恵でもさすがに無理な高度をとられると攻撃が当てられない。
「おい、千紗!こっち来い!!」
俺は刀を足元に置き、バレーのレシーブを上げる体制をとりながら、千紗を呼ぶ。
「オッケー!!」
千紗も俺の意図を察したのかこちらに向かって走っていく。
千紗が俺の足元に薙刀を突き立て、跳躍する。
着地地点は俺の重ねられた手の上。
「「せーのっ!!」」
ふわりと千紗が俺の腕に降り立った瞬間、身体強化による爆発的な筋力で千紗を思いっきり上空へ投げ飛ばす。
すぐさま足元の俺の刀を、千紗に向けて蹴り飛ばす。
空中でタイミングよく刀をキャッチした千紗は、すぐさま刀を抜く。
「せぁっ!!」
気合十分、空中の敵を一気に薙ぎ払う。
瞬間、空中で血が飛び散る。
「ったく、汚ねぇ花火が・・・」
俺は自分でやったわけでもないのにそうつぶやく。
千紗は聞こえてなかったようで、落下をも攻撃力に変え、空中の魔物を次々に切り刻んでいく。
俺はその間、千紗の薙刀を引き抜き、野球選手よろしく、思いっきりスイングして、勢いのまま360度俺に群がる敵を薙ぎ払う。
「よっ―――と・・・。重い、とか考えてなかったよね?」
すとっ、と着地した千紗は刀で敵を斬り伏せながら、そう問いかけてくる。
「知らん。身体強化で筋力増強してたからな」
「それって、重いって遠まわしに言ってないっ!?」
しらっと答えると、千紗は俺に文句を垂れながら怒り任せに切り続ける。
「それと・・・いい加減、刀返せってのっ!!」
俺は、千紗の近くにいた魔物に向け、薙刀を思いっきり投擲。
「わかったよ。ほいっ」
千紗は刀を俺のほうに放り、すぐさま薙刀を引き抜き、一瞬で魔物を退く。
俺も放られた刀を空中で鞘から引き抜き、魔物を切りつける。
空中に残された鞘が落ちる前にキャッチし、そのままジャンプ。
「我流独戦術、砕滅撃!」
体を空中でひねり、全体重をかけ、思いっきり鞘で魔物を叩き潰す。
そのまま飛び退く、千紗と背中合わせになる。
「はあっ、はぁっ・・・」
千紗は肩で息をしている。
「おい、大丈夫か?息上がってるぞ?」
「はぁっ・・・そういう、和真、だってっ・・・!!」
「はは・・・まぁな。ちょっと飛ばしすぎたな・・・はぁっ」
そういいながら、互いに構える。
「はぁっ・・・千紗、3ッつ数えるから、数え終わったら俺の肩を踏み台に、飛んでくれ。」
「・・・わかった」
素早くそう伝えると、二つ返事で了承してくれた。
・・・頼もしすぎる。
「いくぞっ!!3、2、1!!」
カウントを終えた瞬間、千紗が空中に舞い上がり、残った魔物の命を散らす。
俺は刀を持つ手に魔力を込め、切っ先を地面に向ける。
「はぁぁぁっ!!」
そして、地面に思いっきり突き刺し、更に魔力を込める。
魔力は刀を通して、地面に流れる。
次の瞬間、魔力を思いっきりはじけさせる。
はじけた魔力は、一瞬にして地面を割り、俺の周りに衝撃波を生み出す。
「千紗!峰で俺の刀の柄を思いっきり叩け!魔力込みで!」
俺は瞬時にバックステップで距離をとり、落下してくる千紗に大声で伝える。
「オッケー!やぁぁぁlっ!!」
千紗は落下と同時に、思いっきり突き刺さった刀の柄に薙刀の峰を振り下ろす。
先ほど以上に深く突き刺さった刀は、千紗の魔力をも地面に流し、先ほど以上の衝撃波を生み出す。
魔物は衝撃波により、ふっとばされていく。
「よしっ!」
着地した千紗はガッツポーズをとる。
砂煙が舞う。煙が晴れると、魔物はまだ残っていた。
「あちゃー・・・これ、無理かも・・・」
千紗が息を整え、ひきつった笑みでそうぼやく。
「・・・だな」
一斉に飛びかかってくる魔物。
刀を回収する間もない。俺は拳を固め、千紗は薙刀を構える。
刹那―――――
「聖なる剣、無数の魔を貫き、仇なす牙をその身ごと滅ぼせ!!デモンズ・ブレイク!!」
鈴のような声音でそう紡がれた直後、細身の剣―――レイピア―――が無数に降り注ぎ、魔物を一瞬にして滅ぼしていく。
残りの魔物は、一瞬のうちに殲滅された。
「大丈夫ですか?」
背後から聞こえてきた鈴のような声に振り向くと、細剣を持った少女が佇んでいた。
「お二方を、迎えに参りました」
少女はそういって、静かにほほ笑んだ。




