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闇夜に抱かれた聖は時を刻む  作者: 夢見るリュック
3/7

昼下がりの空気

決闘を終え、千紗のほとぼりも冷めたところで叔父さんがやってきた。

朝練も終え、道場に備え付けてあるシャワーで汗を流してから、俺は千紗と食事をとり、一緒に登校する。

部活に入っていないが、護身のため、と叔父さんに言われ毎日のように竹刀のケースに護身具を入れ、二人して持ち歩いている。

いつもの流れ。日常的な光景だ。


「しかし、こうしてみると俺たち家族みたいだよな。」


「ふえぇ!?」

歩きながら、ふと思ったことを口にすると、隣を歩いていた千紗はいきなり素っ頓狂な声を上げた。

なぜか顔まで赤くなってる。


「そ、それってどういう・・・?」

「どうもこうも、毎朝一緒に鍛錬して、ご飯食べて、登校してるだろ?それってなんか兄妹みたいだなって」

「あ、あぁ・・・そういうこと・・・」


ごく自然に答えると、千紗はがっかりしたような表情で納得していた。


俺なんか気に障るようなこと言ったか・・・?


「あ、もしかして姉がよかったか?」

我ながらナイスな視点だ。千紗ががっかりしている理由はこれだろう。

「違うよっ!和真のバカ!!わかってたけどさっ」

どうやら違ったようでした。そしてさらに怒らせてしまった。


・・・なんでこいつ、こんな怒ってんの?


っていうか、ひどい言われようだな・・・確かにバカだけどさ・・・はぁ・・・

千紗は学校について、別れるまで怒っていた。

あとできちんと謝っておこう・・・。


―――午前11時50分―――

風に舞う葉を見ながら、クラスの喧騒に耳を傾ける。

今、俺のクラスでは文化祭に向けて、出し物を決める話し合いをしている最中だ。

前に立った書記と、代表の二人は、クラスメイトへと意見を求め、黒板に書き流していく。

うちの高校は、文化祭がとても速い、というところも特色らしい。

まあ、二年目、ということもあり慣れたが。

ふと黒板に目を向ける。

劇に漫才、お化け屋敷に屋台だったりと様々な案が出ていた。

そのまま見ていく。


サバイバルゲーム。


「・・・・・」

どう考えても無理だろう・・・。誰だ、これ考えたの。


次、喫煙所。


「・・・・・・・」

ここは公共の施設だ。確かに公共だ。

文化祭やる気あるのかよ・・・。


次、休憩スペース。


ふざけんな!喫煙所と変わんねぇだろうが!!


「・・・はぁ」


話し合いを聞いていても、案を出す側が一方的なので、代表二人が悲惨に思えてくる。

そもそも会話のキャッチボールが成立していない。


どうでもいいか・・・。


日当りのいいこの席。働かない頭。心地よく思えてきた喧噪。

眠気がやってくる。あくびを一つ、俺の意識は眠りに落ち込んでいった。


―――昼休み―――

昼飯を求め、クラスの男子ほとんどが購買へ走り去っていった。

また、クラスの女子は弁当を持ち寄り、楽しそうにグループで食事をとっている。


「・・・・・」


俺は話し相手がいない状態で、机に突っ伏していた。

友達がいないわけではない。この場にはいないというだけだ。

みんな購買のおばちゃんにとられてしまった・・・。

ふと、俺の机の前に誰かが立っている気がした。


「まったく、何してるの、和真?」


頭上から降ってくる声に、俺は徐に頭を上げると、千紗が見下ろしていた。


「ボッチになって悲しい思いをしていました」

「そう。なら私に感謝してね!はい、お弁当」


そういって千紗は俺にお弁当を手渡してくる。


・・・おお、ありがたい。あ、そうだ。謝っておかねば。


「今朝は俺が悪かったです。ごめん」

「・・・ふふっ。よろしい。一緒にお弁当たべよ!!」


俺が今朝のことについて謝ると、千紗は一瞬きょとんとしたが、すぐに気にする素振りもなく微笑んだ。


「どこでたべよっか?」

「裏庭にしよう。静かだから」

「そうだね、そうしよっか」

俺たちはそのまま裏庭に向かった。




「そういえば最近、都市に魔物が多く出てるんだってね」


裏庭に向かう途中、千紗が唐突に話題を振ってきた。

「ああ。なんか最近多いよな。大量発生だったり、都内出現だったりって」

「魔力異常でも起きてるのかな?」

小さく首をかしげる千紗。

「さぁなー。野生動物の生態系を無駄に崩したりしないといいんだけどな」

「そうだねー」

「まぁ、うちの学校も都内だし、危ないかもな」

「えー?さすがに結界も張ってあるんだし、大丈夫じゃない?」

「まぁな。それにしても、便利な世の中だよな。自分の魔力を使って術式を作動させていろいろしたりさ。そもそも生物の体に魔力が存在するってことに驚きだしな。」


科学と魔術の合体、みたいな感じで術式、という新たな技術が50年以上前に誕生した。現代の社会では、機械だけの構造をしたものはあまり存在しないのだそうだ。

・・・先生がそう口にしていたのを覚えている。


「でも、私たちが生まれる前からわかってたことだし、あんまりすごい、って感じはしないなー」


千紗の発言はわからなくもない。馴染みあるしな。

「いやいや、便利だって」

「和真、歳よりくさいよー」

そんな会話をしながら、俺たちは裏庭へと歩いていく。


裏庭は昼時にもかかわらず、閑散としていた。

野生の精霊がふよふよと飛んでいる。

手を伸ばすと、逃げられてしまう。


「・・・・」


魔力だけ高いから、魔戒士じゃない、出来損ない。数々の罵声がフラッシュバックしてくる。


「和真・・・?」

「ん?ああ、何でもない。早く飯にしようぜ」


心配そうにする千紗にそう言い、適当にベンチに腰掛け、千紗の手作り弁当を開く。


「おぉ・・・」


それは極、としか言いようがなかった。

いつも違うレシピで、どれも完璧。千紗の家庭スキルまじぱねぇ。


「すごいな。どれもうまそうだ」

「えへへー、すごいでしょ。もっと褒めて褒めて―」


素直に賞賛を送ると千紗はドヤ顔し、そういってきた。

俺は千紗の頭に手を乗せ、その頭をなでる。


「ああ、すごいな」

「ちょっと!子供じゃないんだから!!」


そういい、千紗は顔を真っ赤にして抗議してくる。

「ははは、ごめんごめん」

そんなやり取りをしつつ、昼休みを満喫していた。


―――――――――!!!


「っ!?」

しかし次の瞬間、平穏な空気が一瞬にして張り詰めた。

直感的に、まがまがしい空気。襟元をちりちりと焦がす絶対的な悪。


―――この感覚は・・・


「和真!」


千紗も俺と同じように感じたのか、校庭のほうを厳しい表情でにらんでいる。

「いきなり突っ込むのは得策じゃない。一回教室のほうにケースをとりに行こう」

「そうだね。何か情報があるかもしれないし」

俺たちは頷き合い、早足に教室へ戻った。


校舎に戻ると、先ほど感じた空気に加え、張り詰めた空気が漂っていた。

俺たちはそれぞれのクラスへ戻るため、いったん別れる。

クラスに戻ると、教室にいるやつら全員、窓から外を眺めている。

「なにがあったんだ?」

俺は近くにいた奴に、話を聞くとそいつは焦った様子でこういった。


「あ、ああ。校庭に魔物が現れたんだ」


「・・・」

やはりか。なんとなく想像はできていた。

まぁ、しかし。驚くよな。

どのくらいかっていうと、いきなりゲームデータが飛んだ瞬間の3億倍くらい。

・・・違うか。

俺は窓から校庭を見下ろすと、そこには黒い何かを纏い鎮座する、狼みたいな獣がいた。

「・・・・・・」

頭の中で瞬時にシュミレートする。戦闘の流れから、事後処理まで。


―――――完了。


俺は自分の席の横に置いてある竹刀ケースを持ち出し、教室を飛び出した。










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