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1.6日常

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


「どういう事よ!」


転校生こと、ユリアとエクスの戦闘が終わり、その事によって出来た人だかりを広げるように少女がユリアに声をかけた。


また見慣れぬ少女の出現に、エクスはまた転校生かと軽い気持ちで事の成り行きを見る。


隣のリコリアも興味ありげに事の推移を見守るようだ。


「すみません。クリス様」


淡々と頭を下げるユリアと、興奮したクリスと言う少女。


クリスの雰囲気や仕草から、クリスが貴族のお嬢様だと言うのは容易に理解出来た。


この学校に貴族という存在は珍しく無い。


その貴族にも二つのパターンがある。


一つは貴族の子供が騎士科に入る事。


そう言ったものはお金の力で大抵成績を買い、卒業後は竜騎士となる。


竜騎士はこの国ではそこそこ地位のある軍人だ。


そこで様々なコネを作り、最低従軍年数働くとすぐに除籍する。


もう一つは、貴族とそれが雇った騎士とで騎士科以外に入る。


貴族はブリーターとして形だけの世話をして、騎士が試合等で勝つと、私の竜が勝ったと声を大にする。


要は、ただの自慢したがりなのだ。


恐らく、ユリアとクリスは後者だ。


だが、ニーナを知るエクスに一つの疑問が生まれる。


ニーナは極度に貴族や王族を嫌う人間だ。


そんな彼女が自分の弟子を貴族の見栄張りのための道具にするなんて考えられない。


それに、彼女の権力はそこらの貴族よりも高い。


そうなるとクリスと言う少女の身分は絞れてくる。


「また厄介な」


「ん、なにか言った?」


思わず漏れたエクスの呟きを拾ったリコリアが言う。


エクスは何でも無いと、ユリアやクリスがこちらに興味を向ける前に静かにその場を後にする。


その途中、たまたま目をやったこの練習場を管理する監視小屋にニーナとフラーシュカの姿を認めた。


見ていたんだと思いながら、軽く頭を下げると向こうも小さく手を振り返してくれる。


だがそこで一度足を止めたのがいけなかった。


先と同じように人混みを強引に押し退けてクリスがやって来たのだ。


逃げようかと思ったが、どうせこらから嫌でも顔を合わせるのだ。今のうちに対応しようとエクスはクリスに嫌味たらしく礼儀の良い礼をくれてやる。


「ユリアを負かすなんて……あなた誰に雇われたの?」


「自主的にだ。……お前と違ってな」


一応、気を使って後半を小声で言ってやる。


ヴィルトもニーナと同じ貴族アレルギーだ。そんな彼に育てられたエクスが貴族に対して普通にいられる訳が無い。


自分の立場を直ぐに見破られてか、クリスは一瞬を飲んだが、


「そんな事どうでも良いし!」


高飛車に叫ぶ。


「悪いけど、ユリアはそこんじょらの学生に負けるような人じゃ無いのよ!」


エクスはその台詞を聞いて、


「師匠が良いからって、弟子まで良いとは言えないよな」


ユリアの素性を知っている様な口振りをした。


ここでクリスを挑発しておくのは良いだろうとエクスは判断する。


高飛車な女は上から物を言っておけばその価値が下がる。


クリスが、高慢に話した所でクラスメートはエクスに負けてる奴が何か吠えているしか感じないだろう。


それに、相手がこちらを気になり素性を探った所で何も出やしない。


国から隠れて暮らすヴィルトが、自分の養子で弟子のエクスの素性を掴ませる筈がないのだ。


「バレル・オーバーシュート・カウンター。聖竜騎士、ニーナ・トエントの十八番の技だ。それを仕掛ける雌竜に乗った少女。雌竜は貴族や王国でもそう用意出来るもんじゃない。出来るのは騎士竜のみ。そうなると、あいつがトエントの弟子だと思うのは当然だろ?」


エクスの言うことは、少し考えたら誰でも分かる事だ。


国を代表するニーナのバレル・オーバーシュート・カウンターは、いわば国民的漫画のヒーローの必殺技と同意だ。


それを使うとなれば、ある程度の背景は伺える。


対してエクスはあまりの腕の良さに、あいつなら聖竜騎士の技のひとつやふたつ出来ても可笑しくないと認識されている。


無論、初めて使ったときはいろいろあったが、誰も彼の背景が掴めず、まぁあいつはあんな奴だしなと言う考えが広まった。


「ぐぬ……」


一方的攻撃に、クリスはぐうの音しか出ない。


視界に映るリコリアは必死に笑いをこらえている。


「まぁ、仲良くしようぜ。少なくとも後半年は同じクラスなんだからさ」


これてクリスが必要以上にクラスの雰囲気を悪くしないだろうと判断したエクスは強引に話を打ち切った。


彼は自分の竜に飛ぶように指示。


急に激しい動きをしたため、軽く飛んでコンディションを確認しろという意味だ。


簡単な手の動きで指示を出す訓練は勿論アンリッシュが行った。


竜騎士の最大の難点は竜との意志疎通が困難な事にある。


人間の言葉は基本、雌竜しか理解出来ない。


人間の近くのの竜がほとんどの雄竜なのを考えると、何が良きパートナーだとディートフレアは笑っていた。


「同じクラスである以上、切磋琢磨するのは良いことだからさ」


無難な、それでいて上からの物言いでエクスはリコリアと合流して、早速奢って貰うランチの交渉を始めた。

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