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総合スーパー店長が異世界転生して〜店舗ごと召喚された俺と従業員七十三人  作者: もしものべりすと


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第八章 王都流通改革

翌日から俺は、王都中の倉庫を回り始めた。


副店長の宇都宮、青果のミッチ姉さん、レジの沙耶ちゃん、護衛のロドリゲス、それに王都の若い書記官十人。


倉庫は八つあった。


東倉庫、西倉庫南倉庫、北倉庫王城地下、神殿地下商人ギルド、騎士団。


どこも、ひどい状態だった。


東倉庫を覗いた俺は、思わずうめいた。


「ひどい」


奥には、虫が湧いた麦袋。


手前には、新しい麦袋。


これでは、奥の麦袋から順番に勝手に腐っていくだけだった。


「副店長、ここから始める」


俺は宇都宮に指示した。


「全部の麦袋を出して、入荷日順に並べ替える。古いものを手前に、新しいものを奥に」


「は、はい」


「沙耶ちゃん、入庫日と数量、全部記録。台帳を作って。台帳の様式は、うちの店の月末棚卸し表を思い出して」


「了解です」


ミッチ姉さんは、すでに腐った野菜を分別していた。


「これは廃棄、これは煮込みなら使える、これはまだ生でいける」


倉庫番の痩せた老人が、ぽかんと俺たちを見ていた。


「あ、あの。二十年、誰も触らなかった倉庫を、お前さんたち、たった一日で」


俺は、台帳をめくりながら答えた。


「明日には終わります。明後日には、次の倉庫」


「に二十年、誰も整理できなかったのに」


老人は震えながら、頭を下げた。


「ありがとうございます、補給卿。私はずっと、この倉庫を恥に思ってきました。毎日、奥の方の麦が腐っていく音を聞いてきました」


俺は手を止めた。


「あなたが恥じることじゃ、ありません」


「で、ですが」


「あなたはずっと一人で、ここを、守ってきた。それは立派な仕事です。ただ、ルールがなかっただけです。ルールがあれば誰でもできる」


老人はぼろぼろと、涙を流した。


俺は彼の肩を軽く叩いて、次の作業に戻った。


二週間で、王都の八つの倉庫が整理された。


廃棄ロスは、それまでの半分以下に減った。


配給量は、一日あたり、一・八倍になった。


王都の餓死者は、ゼロになった。


ロドリゲスが、信じられないという顔をしていた。


「真壁殿、戦は剣で勝つものだと思っていた」


「いえ」


俺は、台帳に判を押しながら答えた。


「戦は兵糧で勝つものです。剣を持つ前に人が腹を満たしていないと、剣も振れません」


「兵糧」


ロドリゲスが繰り返した。


「兵糧の確保。それをここまで徹底できる男を、私は見たことがない」


俺は答えなかった。


ただ、台帳に入庫日と数量を記入し続けた。


地味で、しかし誰もやってこなかった仕事を。


その夜、王都の中央広場で、ささやかな祝宴が開かれた。


難民たちが、温かいスープを手に列を作っていた。


スープは、ミッチ姉さんがしおれかけの野菜を煮込んで作ったものだった。


「店長、味薄いから、塩足しといて」


ミッチ姉さんは、隣の配膳係に指示していた。


子供たちが、紙皿を両手で抱えて、スープを、すすっていた。


「あったかい、あったかい」


子供の一人が、繰り返していた。


母親が、その隣で声を、上げずに、泣いていた。


エルナが、俺の隣で、囁いた。


「真壁様王都に笑顔が、戻りました、二十年ぶり、に」


俺は、苦笑した。


「まだ半分です」


「半分」


「ええ魔王、というのが残って、いる」


エルナの顔がわずかに陰った。


その時、空からまた一羽、伝書鳥が、降りてきた。


しかし、今度の鳥は黒、かった。


足には、赤い筒。


ロドリゲスがはっと表情を、変えた。


「魔王軍からの宣戦布告です」


俺は、赤い筒の、蓋を開けた。


中の羊皮紙には、不気味な達筆で、こう、書かれていた。


「異邦人の店、ならびに王都、十日後、当方軍勢にて、訪問の予定抵抗は、無用なり、魔王軍先遣隊長、グルド」


俺たちには、十日しか、なかった。

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