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総合スーパー店長が異世界転生して〜店舗ごと召喚された俺と従業員七十三人  作者: もしものべりすと


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第二十三章 本部表彰式

本部表彰式の日、俺は東京の本部ビル二十八階の大会議室にいた。


ミッチ姉さん、戸塚、沙耶ちゃん、仁科さん、田所さん、宇都宮副店長、各部門の代表、八人で来ていた。


ミッチ姉さんは、初めての東京の本部ビルに、上ずっていた。


「あら店長、エレベーター、すごい。二十八階まで十秒よ」


「ええ」


「私の軽トラ、二十八階までは上がらないわよ」


「上がらないですね」


戸塚が首を回して、ビルの外の景色を見ていた。


「店長ビル多いです」


「ええ」


沙耶ちゃんが息子に、ビルの写真を撮って送っていた。


田所さんは、二十八階の会議室の床を見て、ため息を吐いていた。


「床磨きが甘いです」


「田所さんここ、本部のフラッグシップです」


「磨きが甘いです」


会議室の奥に、岡野専務社長、副社長、各部門の専務など、十数人の本部役員が並んでいた。


俺たち青葉店一行は、会議室の前方に案内された。


社長の挨拶、専務の挨拶、表彰状の授与。


表彰状を受け取ったのは俺、店長だった。


しかし社長はこう付け加えた。


「真壁店長、表彰状は、青葉店全従業員七十三人へのものです、ぜひ皆さんに伝えてください」


「ありがとうございます」


俺は深々と頭を下げた。


表彰式の後、岡野専務が俺の隣に座った。


「真壁店長、いい表彰でした」


「ありがとうございます」


「ところで、表彰式の後、氷川君のご家族にお会いしませんか」


「ええ、お願いします」


岡野専務は本部ビル近くの喫茶店に、案内してくれた。


そこに、氷川の奥さんと十五歳の息子が、待っていた。


「真壁店長ですか」


奥さんが頭を下げた。


「ええ、真壁です、初めまして」


「夫がずっとお話をしていました」


「氷川君はいつも、青葉店の話を、していました」


奥さんの目に涙が滲んだ。


「夏祭りの夜の缶ビール。二十年前、夫が結婚前に貴方と屋上で飲んだ缶ビール。その話を夫は、何度も何度も私に話していました」


俺は頷いた。


「そうですか」


「夫は本部で二十年、苦しんでいたと思います、店を潰す仕事を、ずっと続けてきましたでも、青葉店だけは、潰したくないと、いつも言っていました」


「奥さん」


「最後に夫は、青葉店、閉店決裁書類に、判子を押したと、聞きましたその夜、夫は机に突っ伏したまま、亡くなりました」


奥さんの声が震えていた。


「夫は青葉店、潰したくはなかった。しかし、本部の上から命令が来て、判子を押した、判子を押した夜、夫の心臓は止まりました」


「奥さん、申し訳ありません」


「いえ、申し訳ないのは、夫の方です、本部の命令で、青葉店を苦しめてきたそれを、夫は最期に悔やんでいました」


奥さんはポケットから、白い封筒を取り出した。


「これ、夫の書斎で見つけました、貴方宛てと書いてあります、岡野専務の手紙とは別のものです」


俺は封筒を受け取った。


封蝋には氷川家の家紋が、押されていた。


「読んでください」


俺は封筒を開けた。


中の便箋には氷川の筆跡で、こう書いてあった。


「真壁、夏祭りの夜の缶ビール、約束を覚えている。いつかお前の店の屋上で、もう一度缶ビール飲もう。青葉店を潰さないこと、約束するもし潰す、ことに、なってもお前、を本部に、引っ張るそれでお前と、一緒に、本部から店を、守る。それが俺の夢だ。しかし、俺本部で人が、変わったお前と缶ビール飲んだ、頃の俺は、もういない、許してくれ、氷川」


俺は便箋を両手で握りしめた。


涙がぼたぼたとテーブルに、落ちた。


「真壁店長」


奥さんが囁いた。


「夫の想い、青葉店で続けてください」


「ええ、必ず続けます」


俺は深々と頭を下げた。


息子がぽつりと言った。


「真壁、おじさん」


「ん」


「父は、亡くなる前夜、夢を見ていると、話していた、夢」


「夢」


「二つの月の世界の夢です」


俺は息を呑んだ。


「父はそこで貴方と会ったと言っていた。貴方が父を抱き止めてくれたと、父は本当に嬉しそうでした」


俺は、震える声で、答えた。


「ええそうです」


「父はそこで、もう一度貴方の同期に、戻れたと言っていた」


「ええ」


「父は、貴方の店を、潰さない決断を、して、亡くなりました」


「ええ本当に、ありがとうございます」


息子は深々と、頭を下げた。


そして、俺の目を見て、言った。


「真壁おじさん、俺いつか本部を目指します。父の跡を継ぎたいです。本部にいる人だって、店を守る仕事はできるはずです」


俺は頷いた。


涙が止まら、なかった。


「ええ、ぜひ頑張ってください。青葉店、君を応援します」


息子は、もう一度頭を下げた。


その夜、新幹線で青葉店に、戻った。


ミッチ姉さんが、隣の席でぐっすり、眠っていた。


戸塚は無言で車窓を、眺めていた。


沙耶ちゃんは息子に、メールを、打っていた。


田所さんは、ほうきの新調をノートに、メモしていた。


俺は車窓の、外を見ていた。


夜の闇に、たくさんの、明かりが流れていた。


街の明かり、家の明かり、コンビニの明かり、ガソリンスタンドの明かり。


それぞれの、明かりの奥に人の、暮らしがある。


それぞれの、暮らしを誰かが、支えている。


その誰かが商人であり職人であり、医者であり看護師であり、教師であり農民であり、店長であった。


俺は頷いた。


胸のポケットの中で、エルナの手紙と、氷川の手紙が重なっていた。


二つの世界の、手紙だった。


そしてその二つの手紙が、俺に教えていた。


地味な仕事を、二十年続けてきた誇り、を。


そしてそれを、これからも、二十年続けていく、こと、を。


俺は目を閉じた。


新幹線の振動が、静かに響いていた。


明日、青葉店のシャッターを上げる。


明日も、明後日も、明々後日もずっと、シャッターを上げる。


そして、いらっしゃいませと、頭を下げる。


それが店長の仕事だった。


二〇〇五年から二十年続けてきた、仕事だった。


これから、二十年続ける、仕事だった。

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