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総合スーパー店長が異世界転生して〜店舗ごと召喚された俺と従業員七十三人  作者: もしものべりすと


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第十七章 冷血侯との対峙

俺が最古のヴェルディスの呪いを封印体ごと抱え上げた、その瞬間。


封印庫の奥の扉が開いた。


足音がこちらに近づいてきた。


俺は振り返った。


冷血侯、氷川透が立っていた。


ローブの裾を引きずり、紫色の紋様が頬で蠢いていた。


「真壁」


氷川は薄く笑った。


「ここまで来たか、よく見つけた、ここを」


「氷川」


俺は封印体を足元に下ろした。


「お前、最初から知っていたな、俺がここに来ることを、お前は待っていた」


氷川は答えなかった。


代わりに、短い剣を抜いた。


「魔王様には報告していない。お前との決着は、俺の個人的な仕事だ」


俺は台帳を戸塚に渡した。


「沙耶ちゃん、棚卸し続けて。戸塚は護衛」


「店長は」


「氷川と、話す」


戸塚はしばらく俺を見ていた。


そして無言で頷いた。


俺は武器を持っていなかった。


ただ両手を広げて、彼の前に立った。


「氷川、なぜこっち側に来た」


「効率の問題だ」


氷川は剣を構えた。


「人類はもう頭打ちだ。現場の小手先で世界は変わらない。上からシステムごと書き換えるしかない。それを俺は、本部で二十年学んできた」


「お前は、それを魔王に教えたのか」


「教えた。奴は優秀な生徒だ。人口削減と流通絞り、それを徹底すれば食料問題は解決する。奴は二十年続けて、ようやく効果が見え始めていた。お前らが来るまでは」


俺は深く息を吸った。


「氷川、お前と俺は同期だった」


「過去の話だ」


「青葉店開店の年、お前はまだ現場にいた」


俺はゆっくり言った。


「あの夏祭りの日、お前と俺は屋上でビールを飲んだ、覚えてるか」


氷川の剣が、わずかに震えた。


「真壁、やめろ」


「お前はあの夜、言ったよな。俺たちの仕事は、誰かの毎日のご飯を支える仕事だ、世界一地味で、世界一誇らしい仕事だ、と」


「やめろ」


「お前は本部に異動して、現場を離れた。それでも最初の数年は、よく青葉店に寄ってくれた、覚えているか」


「真壁」


「最後に寄ってくれたのは、二〇一二年の冬だった。お前はその日、俺と缶ビールを飲んで、こう言った。本部にいると見えなくなるものがあると、現場に戻りたい、と」


氷川の剣の切っ先が、揺れた。


「いつからお前は、数字しか見なくなった」


「真壁」


「いつからお前は、誰かの毎日のご飯を支える仕事を忘れたんだ」


氷川は剣を振り上げた。


その動きが止まった。


俺は両手を広げたまま、彼の正面に立っていた。


「氷川、お前の本当の敵は俺じゃないお前自身だ」


氷川は剣を下ろした。


ゆっくり、と。


そして、その剣の柄を自分の胸に押し当てた。


「真壁」


氷川の声が震えていた。


「俺はな、あの夏祭りの夜が、人生で一番楽しかったよ」


「氷川」


「お前と缶ビールを飲んだ屋上の、あの夜が」


その時、奥の扉がばんと開いた。


巨大な影が現れた。


魔王、その人だった。


二メートルを超える暗紫色の肌、額に二本の角。


口は笑っていた。


しかし、その目は笑っていなかった。


「冷血侯、何をしている」


魔王の声は、地響きのようだった。


「私の最強の呪いが、勝手に棚から降ろされている」


俺は振り返った。


沙耶ちゃんが、ちょうど、最後の古い封印を棚から、降ろした、ところだった。


戸塚と、ミッチ姉さんがそれを、台車に、積んでいた。


田所さんはなぜか、封印庫の床をほうきで、掃いていた。


「お客さんが、来るから綺麗に、しておかないと」


田所さんはにっこり笑った。

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