第十五章 チーム招集
翌朝、王都中央広場に、七十三人の従業員が、集まった。
それぞれに武装と、いうほどではない、装備を、配った。
ヘルメット頭巾、軍手、ゴム長靴、ナップサック業務用、台車、ロープ。
「えっと、皆さん」
俺は、広場の中央で、声を上げた。
「異世界に来て、約二ヶ月皆さん、いろいろとご苦労、お掛けしました」
七十三人が、しんと俺を見ていた。
「今日、最終決戦です。ただし戦いにはなりません。引っ越しです。魔王の地下倉庫を棚卸しします」
ぱらぱらと笑いが起きた。
「それぞれに役目を、割り振ります」
俺は台帳を、開いた。
「ミッチ姉さん、青果の眼力を敵の食糧庫の鑑定に使ってください。敵の補給状況を見極めてください。敵兵の栄養状態がわかれば、戦意も読める」
「了解」
ミッチ姉さんは、肩の包帯を少し、動かして、答えた。
「戸塚、お前の包丁技術で地下水路の凍結を。氷魔法部隊と組んで敵の退路を断つ。戸塚は騎士団の十二名と組んでください」
「了解」
戸塚は出刃を、ベルトに、差し直した。
「沙耶ちゃん、呪いの自然減衰時間を秒単位で計算してくれ。解放するタイミングを正確に教えてほしい」
「やります計算は得意です」
「清掃の田所さん、敵の魔王城内の床を磨いてください。足元を整えれば味方が進みやすくなる。それから清掃の後輩三人を引き連れてください」
「お安い御用です」
田所さんは、ほうきを両手で握り直した。
「グロサリーの高橋さん、保存食の配給。王都に残る民の支えを頼みます。私たちがいない間、王都の食料管理をお願いします」
「任せて、ください、店長」
「ベーカリーの仁科さん、敵兵の食堂に潜入する可能性があります。その時は毒見をお願いします。貴方の舌は王国一です」
「了解です」
「衣料の、遠藤さん戦闘で、破れた衣服の、応急修繕それから、敵兵の捕虜の衣替え」
「やります」
そして、傷だらけの、宇都宮副店長が、車椅子で広場に、出てきた。
「副店長、お前はここで、待機」
「店長俺も、行きます」
「ダメだ、お前はまだ傷が」
「店長俺は副店長です」
宇都宮は目を、真っ赤にして、言った。
「副店長は店長の隣にいるのが仕事です。店長一人で決戦に行かせて、私は王都で何をするんですか。毎日、店長の無事を神様に祈るだけですか」
俺はしばらく彼を見ていた。
そして頷いた。
「わかったただし、後方の指揮車に乗ってもらう、ロドリゲス殿が護衛に、つく」
「ありがとうございます」
宇都宮は深々と頭を下げた。
その時、王城の方から馬車が、走ってきた。
中から、王がゆっくり、降りた。
病床の、はずの王が自ら、見送りに、来ていた。
その姿は痩せていた。
しかし瞳には、光が、戻っていた。
「真壁、卿」
王が、俺の前に、立った。
「行ってこい、我が、王国の補給卿として」
俺は深く頭を下げた。
「行って、まいります」
王は自ら俺の肩に手を置いた。
「真壁卿、戻ってきたら酒を、酌み交わそう葡萄酒、ではなく我が、王国の麦酒で」
「ええ、楽しみにしております」
エルナが、王の隣に、立っていた。
何も、言わなかった。
ただ俺を見ていた。
俺は、エルナに、頭を下げた。
「行ってきます、王女様」
「ええお気を、つけて、真壁様」
それだけだった。
胸ポケットの中で、彼女の手紙がわずかに、温かかった。
出発の角笛が、鳴った。
王都の城門が開いた。
俺たち七十三人と王国軍、五千、商人ギルドの輸送隊、騎士団。
すべてが、北の魔王城へ向かって進軍を、開始した。
行軍は二日続いた。
街道は、荒れていた。
二十年、整備されて、いなかった、街道だった。
途中、難民の村に立ち寄った。
村は、すでに餓死の、寸前だった。
俺たちは保存食を配って進んだ。
「補給卿、ありがとうございます」
村の長老が何度も、頭を下げた。
「行ってらっしゃい、ませ必ず戻って来て、ください」
「いってきます」
俺は頭を下げた。
二日目の夕方、魔王城が、地平線に、見えてきた。
黒い岩山の頂上に、ねじくれた尖塔が空に向かって、伸びていた。
その姿は、巨大な腐った、棚のように、見えた。
整理されていない、忘れられた商品が、ひしめき合って無秩序に積まれた棚。
俺は戸塚に向かって頷いた。
「整理整頓、開始しよう」
「了解」




