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総合スーパー店長が異世界転生して〜店舗ごと召喚された俺と従業員七十三人  作者: もしものべりすと


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第十四章 三幕への突入

翌朝、王城の作戦会議に俺は、立っていた。


王エルナ、ロドリゲス、騎士団長、商人ギルド長老、宮廷魔導士長。


全員が揃っていた。


俺は地図の上に駒を、置いた。


「魔王城に、乗り込みます」


両脇の貴族たちがざわめいた。


「ただし戦って、勝つ、つもりは、ありません」


騎士団長が訝しげに首を、傾げた。


老いた騎士団長だった。


頬に刀傷の跡が深く残っていた。


二十年魔王軍と戦い続け、敗北し続けてきた男だった。


「補給卿では、どうやって」


「魔王の地下封印庫を、開けます」


俺は書物のページを開いて、見せた。


千年分の呪いの、台帳。


「奴の力源は地下に、貯蔵された、古い呪いです、最も古い呪いから順に、奴は使って、いますところが、最も古い呪い、ヴェルディスの呪いはもう賞味期限切れ寸前です」


「賞味期限切れ」


王が顔を、しかめた。


「呪いに、賞味期限があるのか」


「あります。というか封印には自然減衰があります。千年経った封印は、空気と同じ密度です。それを奴は自分の手で解放しようとしている。その瞬間が奴の最強の瞬間と、奴は信じている」


俺は駒を魔王城の上に置いた。


「俺たちは奴より、先にそれを、解放して、しまう」


「先に解放するとは、どういうことだ」


「文字どおりです、奴の冷蔵庫を開けて奴より、先に商品を棚から出してしまう、店の勝手な棚卸しです」


王がゆっくり頷いた。


「奴は最強の武器を手に、する前に、それを、失う」


「はい」


「ではそれで奴を、倒せるのか」


「いえ、それだけでは、倒せません」


俺は駒をもう一つ置いた。


「最古の呪いを解放した後、二番目に古い呪いガルフォルの呪いが最古になります。奴は次にそれを使おうとする。ところがそれも八百年前のものです。減衰が激しい」


「つまり」


「俺たちが封印庫を開いてしまえば、奴の使う呪いは全て、賞味期限切れ、廃棄になる」


ロドリゲスが震える声で言った。


「総棚卸し」


「ええ棚卸しです」


俺は駒をすべて、地図の上に、置いた。


「奴の冷蔵庫の中身を、奴の知らないうちに全部、廃棄してしまう、奴は何も武器が、ない状態で、俺たちと向き合うことになる」


宮廷魔導士長が立ち上がった。


老いた白髭の魔導士だった。


「真壁卿、その解放を行う、術は何で、ありますか」


「呪い、それ自体の自然減衰です、術は不要。ただ、封印の容器に、軽い衝撃を与えれば、すでに減衰した、千年前の封印は、自然に空気に戻ります」


「軽い衝撃」


「ええ、肩で押せば割れる程度です」


魔導士長は、震える手で書物のページをめくった。


「真壁卿、この千年の間、封印庫を開けるための魔法は、何百種類も考案されてきたしかし、誰一人成功しなかった、なぜなら封印は、複雑な術式で守られているからだ、軽い衝撃で割れるはずがない」


俺は頷いた。


「術式で守られているのは封印体の表面だけです。内部の呪いそのものは、もう空気と同じです。千年前は確かに危険な最強の呪いだった。しかし千年経った今、危険なのは外側の術式だけです。内側は空っぽです」


魔導士長はぽかんと口を開けた。


「容器の見た目だけ立派で、中身は空と言うのか」


「ええ空です、それを、奴は知らない、表面の術式の強さで、力を判断しているしかし、容器の見かけと中身の価値が合っていない、商品でよくある話です」


王が深く、頷いた。


「これは戦ではない、整理整頓だな」


「ええ」


俺は頷いた。


「奴の冷蔵庫の先入れ先出しを、徹底するだけです」


王城の会議室に、静かな笑い声が広がった。


それは、二十年ぶりに王城に響いた、希望の笑い声だった。


「補給卿で、誰を連れて行くのだ」


王が、聞いた。


「うちの、店の従業員七十三人全員、それと王国軍、五千、商人ギルドの輸送隊、騎士団、合わせて、約一万」


「装備は」


「装備は、最小限で結構です剣も、鎧も必要、ありません台車、ロープコーン、整理券、台帳それから戸塚の、出刃」


王が笑った。


「戦と、いうより、引っ越し、だな」


「ええ、引っ越しです、魔王の店の店じまい、引っ越し」


ロドリゲスが声を上げた。


「真壁卿私も、行きます」


「もちろんです、ロドリゲスさんは、敵兵の撃退をお願いします」


「了解」


会議は、終わった。


その夜、俺は店の屋上で、エルナと、並んでいた。


二つの月が、雲の隙間から覗いていた。


「真壁様」


「はい」


エルナは、一通の手紙を俺に、渡した。


封筒は白く、薄く、彼女の紋章の封蝋が、押されていた。


「これを、読まずに持って、いて、くださいもし、戻れたら、その時に破って、ください」


俺は手紙を胸ポケットに入れた。


封筒が、心臓の上に、ぴたりと収まった。


「読まずにですか」


「ええ、読まずにただ持って、いて、くださいもし、戻れたら破ってください、ただし戻れる時まで、破らないで」


俺は頷いた。


「わかりました」


二つの月の、光が屋上に降り、注いでいた。


俺は、明日の出陣を考えていた。


地味な整理整頓の戦いを、考えていた。


エルナが、ぽつりと呟いた。


「真壁様、あなたの二十年はちゃんと、こちらの世界で報われました」


「ありがとうございます」


「あなたの、二十年は店、だけでなく、こちらの世界も救うものに、なりました」


「ええ」


「お気を、つけて」


俺は頷いた。

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