表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
中二ゆえに異世界へ  作者: 咲良喜玖


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

7/25

第6話 お姉さん獲得

 裏にある森林地帯で、親子の修行中。

 俺は、三つの気配を探知した。

 俺の魔力循環の技術は高い方なのかもしれない。

 気配探知能力が加わっている。

 

 「ケイオス。いいぞ。槍の流れがいい。突きからの変化。ここにぎこちなさがないぞ。その歳では出来ない事だ!」

 「うん」


 俺とセリオス。この二人で模擬戦をして修行している。

 だけど、気配としてだと三つある。俺とセリオスともう一人だ。


 「僕がこうすると、君はどうなる」


 セリオスからの反撃。

 この意図は、俺の防ぎ方を見ているようなので、槍先でいなした。

 

 「おお! 素晴らしい。この歳でこれも出来るのか。良い目と技量だ」


 セリオスの指導は、修練の内容だけが厳しくて、他は褒めて伸ばすばかりだった。

 駄目な時も、褒めつつ駄目だと言うので、前世で経験した野球指導のような圧迫感がない。

 あの時はなんでこんな事も言われたとおりに出来ないんだ。

 みたいな事を言われたっけ。

 思い出すな。親父のせいで強制参加したリトル。

 あそこはすぐ辞めたけど、あの怒り方のせいでスポーツが嫌になったんだっけ。

 自由にやったらソッコーで怒られたんだ。俺、小さい頃はそんなに運動神経悪いわけじゃなかったからさ。

 あれから努力とか鍛えるとかって、重要な事をやめてしまったんだ。そうだよな。いやになったんだ。

 だから、あそこでより一層の中二病になったんだな。

 妄想で世界を補う。あの時のストレス回避だったのかもしれない。


 それに比べたら今回は楽々だ。

 この人は、基本的に相手をけなすことがほぼない。

 目も蔑んだ目をしないので、見つめたままであるから、素直に話が聞ける。

 俺の前の親父とは大違いだ。

 この感覚は、俺の爺ちゃんと話してるみたいだ。


 「あのさ。父さん」

 「うん。どうした」

 「あれは?」


 俺がセリオスの後ろを指差す。


 「ん? あれ?」


 セリオスが振り返る。


 「あ!?」


 セリオスも気付いた。

 木の影に隠れている女性が、コソコソしながらこっちを見ている。

 槍を背負っているので、以前ここに来た女性だ。

 十日ぶりの登場だろう。


 「お嬢!?」

 「に、義兄さん。あの・・・」

 

 凛としている人なのに、今はモジモジしている。

 恥ずかし気に下を向く。

 

 「お嬢、どうしたんです?」

 「ご、ごめんなさい。よく考えたら、迷惑をかけたかと」

 「いや。別に・・・」


 じゃないよな。結構迷惑だったよな。あれ以来、夫婦で会話が減ったぞ。

 俺を介していちいち会話してたじゃないか。


 ◇


 三日前の夕食時。


 「ねえ。ケイちゃん。あなたはしっかり全部食べてくれるのに。この人、お父さんで大人なのに、子供みたいに残すみたいよ」


 セリオスは、きゅうりの味噌あえを残していた。セリオスって、きゅうりがあんまり好きじゃないみたいなんだ。前も頑張って食べていて、少しだけ残していた記憶がある。


 「そんな事はない。今食べる所だったよな。なあ。ケイオス」

 

 俺に言うな。アンジュに言え。


 「え。そうなの。この前も残してたよね。ケイちゃん」


 俺に言うな。俺は残してない。


 「今食べる所だったんだ。なあ、ケイオス」


 それを俺に言うな。アンジュに言え。


 「そうですか。食べる所だったんですね。それは悪うございました。ねえ、ケイちゃん。お母さんが悪いんだって」


 俺を挟むな。いい加減、二人で会話しろよ。


 「そうだぞ。お母さんが僕の話を聞いてないのが悪いんだ。なあ。ケイオス」

 

 だから、俺に言うなって。素直に二人で会話しろよ。


 ピキピキ感満載の食卓。

 いつも美味しいご飯を作ってくれるアンジュなのだが、この時ばかりは料理から味がしない。出してくれている料理も美味しいのだろうけど、雰囲気で全部台無しになる。


 そして二日前。


 「な!? またか」


 父の席に着いた直後のセリオスが驚く。

 その原因は、食卓の中に隠されていた。

 きゅうりの酢漬けが食卓に並んでいたのである。


 「またか。ですって。私がせっかく! 一生懸命! 作った料理を食べる前から残すみたいよ。ケイちゃん。酷い人よね。この人」


 俺に言うなって、この人って言ってる時点で、もう会話できるじゃん。

 これわざとだろ。明らかにわざとだろ。

 嫌いなものを押し付けに来たな。アンジュ!

 戦法的には卑怯だぞ。セリオスに反撃の手段がねえ。


 「た、食べるよ。僕は食べる」

 

 顔が引きつってる。苦手そうだ。可哀想だな。


 「当たり前でしょ。また食べないのなら、今度からあなたの分だけ作らないもん」

 

 ようやく会話となったが、この脅しはきついだろ。


 「え。そ、それは・・・」

 「困るでしょ。だったら食べなさいよ」

 「は、はい」


 鼻をつまんで食べるわけでもなく、セリオスはキュウリを食べた。

 涙目になっている。

 何が嫌いなんだろ。味? 食感? 

 今の感じだと、味ではないか。

 鼻をつまんでいたら味が苦手っぽいよな。

 だとしたら、これは見た目か?

 それとも食感かもしれないな。噛んだ感触が苦手とかかも知れない。


 「箸が止まってるわよ」


 そういえば、この世界ヨーロッパ風だけど、細かい部分に日本のテイストがあるな。

 特に食事。これは、完璧に日本だ。

 カレーとか、ラーメンとか。

 こういうのをアンジュが出してくる。

 黄金美女から、和食が出てくる。

 アンバランスだ。


 「と。止まってない。動いている途中だ」

 「嘘! ほら、止まってる」

 「今は会話中だから」

 「言い訳ばかり。そうやって浮気したのね」

 「だから、あれは浮気じゃなくて」

 「嘘。浮気よ。お嬢とか言って、昔から好きだったのね。ロリコンだったのね」


 これから面倒になりそうなんで、俺は食器を片付けて退散した。

 夫婦喧嘩は夫婦でしてください。

 子供抜きでお願いします。


 ◇

 

 アンジュってまだ怒ってるんじゃないのか。

 俺は白い目で父親を見た。


 「そうですか。義兄さん。アンジュ様にも謝った方がよろしいでしょうか?」

 「・・・んんん。どうだろう。会ったら会ったで、怒るかもしれない」


 いや、コソコソ隠れて会ってる方が危なくないか。

 逆に堂々とした方が浮気っぽくないぞ。

 だってこの人の事、妹のように思ってるんだろ。

 全然後ろめたくねえじゃん。

 ここでアンジュがいない時に会ってる方が危ないって。


 「ですが」

 「お嬢は謝りたいのか? でもお嬢が別に怒るような事をしたわけじゃ・・・」


 そう怒るような事はしてないんだけど、彼女のせいで勘違いさせてんだよな。

 困ったもんだ。


 「義兄さんは、大丈夫ですか。私のせいで・・・」

 「うん。だ、大丈夫だよ」


 嘘つけ。目が泳いでるぞ。


 「本当ですか」


 そう思うよね。お姉さんもさ。


 「うん。気にしないで。お嬢はお嬢の人生を歩んでください」


 決別の挨拶にも聞こえる。


 「え。ええ。そうですね・・・・・義兄さん。私、義兄さんが好きでした」


 突然の告白。でも気持ちに整理がついたみたいな言い方なので、女性としても人としてもカッコいい人だ。セリオスよりも竹を割ったような性格なのかもしれない。


 「うん」

 「でも、義兄さんの幸せが一番なので、身を引きます」


 おお、立派な人だ。


 「そうか」


 返事それだけかよ。一大決心して告白してくれたのに。


 「でも、義兄さんは家族みたいな人なので、これからも会ってもらえますか」

 「当然だ」


 おいそれ出来んのか? 約束できんのかよ。

 おい。セリオス。そうするんだったら、アンジュを説得しないと、一生浮気男扱いを受けるぞ。


 「本当ですか。会ってもいいんですね」

 「ああ」

 

 嬉しそうな顔をしている彼女、素敵な笑顔でいいんだけど。

 マジでいいのか。セリオス。アンジュに殺されねえか。毒盛られたりさ。


 「アンジュ様に許可をもらいに行きます」


 律儀だな。この人、立派だよね。


 「ま。待て」


 どうして止める?


 「なにか?」

 「いや、今は危険だ。自分が説得しないと・・・」


 それ出来んのかよ。セリオスさんよ。無理じゃね?

 この人の力を借りた方がいいよ。絶対。


 「危険? やはり、アンジュ様は怒ってらっしゃるのですか」

 「いや・・そ、そんなことは、ないと思いたい」


 怒ってます。すげえ怒ってます。

 セリオス的には、『ないと思いたい』と願っているだけです。

 お姉さん気付いて。


 「・・・わかりました。私が行きます」


 凄い。この人、気付いてくれたよ。

 俺、何も言ってないよ。俺の内なる心の声が届いたみたい。


 「え? いや、まずい気が・・・」


 どこがだ。ここはお姉さんに任せよう。

 まあ仕方ない。

 ここはセリオスが情けないので、俺が手伝う事にした。


 「お姉さん、ちょっといいですか」

 「ん、あなたは、義兄さんの子ですね」

 「はい。ケイオスです」

 「あ、そうですね。自己紹介をしてくれたのですね」


 俺が挨拶をしたら、彼女はこっちを見てくれた。

 元々伸びている背筋が更に美しく伸びる。

 そこから綺麗なお辞儀を披露してくれた。


 「私は、イルベスタ・クロスナーと言います。義兄さんとは兄妹のように育ちましたので、あなたの事も家族とみます。よろしいでしょうか」

 「あ。はい。お願いします」


 こうして、俺の家族にお姉さんが増えた。

 

 「義兄さん・・・に似ていますね」

 「そうなんですか?」

 「ええ。子供の頃の義兄さんと、目が同じです」

 

 顔が全く似てないんですけどね。

 俺はどっちかと言ったら、アンジュに似ている。

 

 「あの。俺と一緒にいきますか? 母さんと会うんでしょ」

 「え。は。はい。お会いして誤解を解きたいと思います。あれでは勘違いするかと思いまして」

 

 そうです。その通りです。めちゃくちゃ勘違いしています。


 「じゃあこっちですよ。一緒に行きましょう。手を繋いでもいいですか」

 「え? は、はい」


 これで、俺と彼女が仲良くなったという感じでいこう!

 上手く丸めこまないと、アンジュが怒りっぱなしになるだろうからさ。


 「ま。待ってくれ。き、危険だ。二人とも」


 いや、大丈夫だろう。作戦的には上手くいくはず。リスクを背負うのはセリオスくらいだ。

 失敗したら浮気男で生きてくれ!

 すまん。先に謝っておく。


 ◇


 玄関に到着。

 二人で手を繋いで、ここまで来た。

 俺がノックする。


 「母さん。お客さん」

 「はいはい。今出ますよ」


 ガチャッと開けた先にいたのが、今日までの怒りの原因となっている女性だ。

 だからアンジュの顔が若干引きつっている。

 やはり勘違いの真っ最中だ。


 「あの・・・アンジュ様」

 「な、何の用ですか。まさか。うちの人と・・一緒になるために」

 「いえ。それは違いまして・・・あの」


 中々切り出せないので、俺が入る。


 「このお姉さん、妹だって。父さんの妹なんだってよ」

 「え? 妹?」

 「うん。このお姉さんね。俺の事も家族だって言ってくれたよ」

 「ケイちゃんを?」

 「うん。ねえ、弟みたいなんでしょ。俺の事?」

 「・・・え、ええ。そうです。義兄さんの子。ということは、この子も可愛い義弟みたいなものなんです」

 

 これで上手くいくか? ちょっと強引だけどどうなる?

 横目でアンジュをチラッと見た。


 「あらそうなの。ケイちゃんって、あなたから見ても可愛い?」


 アンジュの顔に不安が消えた。明るい笑顔になった。


 「そ。それは当然です。可愛いです」

 「そう。じゃあ、入って。やっぱりそうよね。可愛いわよね」

 「は、はい」


 アンジュとしては、このお姉さんが大敵だと思っているだろうに、意外とあっさり家の中に入れた。

 アンジュの評価基準って変だろ。

 俺が可愛いかどうかだろうね。今の感じ。

 

 リビングに向かう途中も。


 「ねえねえ。どこらへんが可愛い?」


 そんなこと他人に聞いてどうする。イタイ親過ぎるわ。


 「ぜ、全部でしょうか」

 

 困って言ってるよ。きっと。


 「やっぱり。あなた、話が分かる人ね。もっとお話しましょ」

 「え。ええ。そうします」


 上手くいきそうなので、俺は彼女をリビングに送り出して、家から離れた。

 庭先で。


 「ど。どうなったんだ。ケイオス。お嬢はどうなった」


 庭の奥の方で、セリオスが一人でポツンといた。いたたまれない気持ちがあるのだろう。大きな体の癖に小さくなっていた。


 「上手くいったよ。母さんとリビングで会話してる。よかったね。父さん」

 「そ。そうか。上手くいったか・・・・はぁ」

 

 情けねえな。まあ、でも今回ばかりは同情するよ。

 セリオスって何も悪くねえもんな。

 でもよかった。夫婦の仲が元に戻りそうだ。



 ◇


 それから、アンジュの方がイルベスタを気にいったせいで、こうなる。


 「今日からしばらくの間。イヴィをここに泊めます!」

 「「は?」」


 俺とセリオスが言った。


 「もう少しお話したいのです。それと、ケイちゃんの稽古に付き合ってもらいましょ。先生になってもらいましょうよ。お父さんとばかりだと、あんまりよくないでしょ。他の人と戦うのにも勉強になるはずよ」


 それは確かにそうだ。

 セリオスは少し優しすぎるからな。

 それに他の人の指導も面白そうだ。やってみたい。


 「それは・・・・」


 セリオスが止まる。だから俺が聞いた。


 「あの。お姉さんはいいの? うちにいても?」

 「はい。私はアンジュ様が許可してくれたので・・・でもお二人が嫌なら、出て行きます」

 「駄目! もうちょっといて。イヴィ」

 「ですが」


 なんでこんなに打ち解けてるんだよ。

 あんなに怒っていたのにさ。


 「ねえ。いいでしょ。あなた。ケイちゃん」

 「俺はいいよ。お姉さんと一緒に修行する」


 俺が許可を出すと、お姉さんの視線がこっちに来る。

 目だけで分かる。とても嬉しそうだった。


 「僕はお嬢がここにいるのは良いのですが・・・・しかし。お嬢。就職は? 卒業はされましたよね?」

 

 たしかに、それは気になるな。

 学校を卒業したのなら、仕事に就けるよね。

 そういう世の中だよね。こっちの世界はさ。

 就職難だったら嫌だな。


 「はい。卒業しました。でも私は騎士団に入るのを保留しています。今の騎士団長は、義兄さんとは関係ありませんから、あまり興味がないです」

 「そうか。後任は誰になったんだ?」

 「ダスティン・ルックロックです」

 「なに。あれが?」

 「義兄さんは人事に不満なんですか」

 「んん。あれはな・・・実力がね・・・どうなんだ。王国は何故彼に?」


 ダスティン・ルックロックって人は器じゃないのか。

 かなり渋った言い方だ。


 「ルックロック・・・もしかして、あのルックロック?」

 

 アンジュが聞いた。


 「ああ。そうだよ。名家の貴族の一員だ。でも実力がそんなにない。聖槍流を上手く使えていないからね。あの力が成長したとしても、いけても副隊長辺りまでだ」


 聖槍流を上手く扱えなくても、聖道騎士団に入れるのか?

 どういう基準で選考が行われるんだろう?


 「アンジュ様は、そのダスティンとは、知り合いではないのですか?」

 「ええ。わからないわ。あまり詳しくはね」

 「王宮内にいたのに?」

 「あ!? ちょっと」


 まずいみたいな顔をして、アンジュはお姉さんを連れ出した。別な部屋に行く。

 これは、俺に事情を知られたくないんだな。

 そんな雰囲気がある。

 昔から俺の前では過去の話をしない。

 夫婦ともにである。


 「ケイオス。明日の修行はお嬢を混ぜるぞ。いいかな」

 「うん。いいよ」

 「そうか。組手の稽古がいいかな。何が良さそうか」


 誤魔化しが下手糞すぎるぞ。セリオス!


 (なるほど。これは王宮内の人みたいだな。アンジュはどこかの王族か? それか大貴族の娘? または、重要人物のメイドとかかな。料理も出来るし、家事も出来るし。いや、騎士団長が駆け落ちしたんだしな。もっと上の存在かな、やっぱ。貴族以上ではあるよな?)


 父の不格好な会話の終わり際。彼女がやって来た。


 「義兄さん。明日の修行。私が見ます」

 「わかった。お嬢に任せます」


 セリオスが承諾すると、お姉さんは俺の目の前に来て跪いた。

 その姿はまるで騎士のようだ。


 「よろしいでしょうか。ケイオス」

 「はい。お願いします。お姉さん」

 「姉さんでいいです。もしくはイヴィでも」

 「わかりました。イヴィ姉さん。これからよろしくお願いします」

 「はい。必ず! 私はあなたを立派な騎士にしてみせます」


 いや、それはちょっと・・・。

 どっちかと言ったら、魔法を扱いのですが・・・。


 とにかく俺は急にお姉さんが出来たのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ