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中二ゆえに異世界へ  作者: 咲良喜玖


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第21話 どこへ行った

 父と別れた後。

 森から帰って来た俺はすぐにお屋敷に戻った。

 少しだけいつもと空気が違う感じがする。

 なんだか慌ただしい。

 皆がパタパタ動いている。

 顔にも焦りがあって、どこかのんびりしている雰囲気を持つ人たちにしては珍しい。

 この御屋敷の人たちはミストさんの教育指導のおかげなのか。

 ゆったりとして穏やかな人が多いんだ。テキパキ動くような人はいない。


 「あれ? なにかありました」


 近くにいたメイド長のリノアさんに聞いた。彼女もどことなくソワソワしている。


 「そ。それが、どこにも見当たらなくてですね」

 「なにが?」

 「ライラ様です」

 「え? 部屋にいましたよね」

 「はい。一時間前までは確認取れていました。ですが、今は姿が消えていまして」


 なるほどね。

 いなくなったと確信が持てないけど、ここに居ないから不安って感じか。


 「あれ。本を読んでたはずでは?」

 「ええ。ナイラ様になっていました」

 「ですよね」

 

 だから動くはずがない。

 俺と一緒にいられない時のナイラは、部屋で本を読むのが習慣だ。

 ジッとしている子だから、どこかへ行くこと自体が滅多にない。

 だから、今日も同じパターンで動くはずだとみんなが思っているけども、いないからちょっとだけ慌ててるって感じか。


 「変ですね」

 「ええ。変なんです。だから、探せる者たちで探していました」

 「わかりました。俺も探してみます」


 ナイラがいないなんだったら、別な子で探す。

 最初は、ライラで探そう。



 俺はライラが行きそうな場所から探った。

 彼女のルーティーンは、花だ。

 だから花壇から捜索スタート。

 中庭の花。屋敷裏の小さな花壇。

 この二つを巡った。

 

 「いない。ライラは他には・・・」


 他に彼女が行きそうな場所は、メイド室。

 あそこで皆がやっている事を手伝うのが日課と言ってもいい。

 彼女は、料理とか洗濯などの家事をするのが好きらしく、お世話されるはずの子なのに、お世話するための技術を学ぶ。

 しかし、メイドさんだって今も探しているんだ。

 そこに行っても意味がないだろうな。そこは最初に探すはずだから。

 

 「じゃあ。アイラか」


 アイラの行動基準は俺だ。

 俺がいる所に出てくる。

 かくれんぼしてるみたいに彼女の方から探してくる。

 今俺が庭にいるんだから、この近辺に隠れて、ひょっこり出てくるはず。

 でも出てこないのなら、行く先がわからない。

 俺がいない時って、彼女はどこにいるんだ?

 彼女の行動パターンが読めない。


 「クソ。じゃあアイラで探したら駄目だ。ケイラでいこう」


 ケイラの行動基準は、動きが多い所だ。

 大体、訓練所にいる事が多い。

 屋敷の脇の訓練所に入り浸って、剣を振うのが彼女だ。

 今は、皆が出払っているからこそ、そこにいるかも・・・


 俺はそこへ向かった。


 「いないな」


 ガランとした訓練所。

 あの子がいればやたらとやかましいから、この静けさからいっていないのは確実だ。

 

 「うわああああ。ど、どうした! 何があった!!!」


 ぼうっと立っていたら、大きな声が聞こえてきた。

 俺はその声がする方向に走っていく。


 ◇


 「なにか、ありましたか!」


 騒がしい場所は、訓練所隣の執事兼兵士の着替え小屋だった。

 護衛の人や執事の人たちが着替えをする時に使う部屋。

 ここに彼女がいるとは思えないが、俺は叫び声に吸い寄せられた。


 「おい。お前。大丈夫か」


 護衛兵の人が、倒れている人を揺さぶっていた。


 「その人は・・・兵士ですか?」


 その人の後ろから俺が聞いた。


 「ああ。こいつはサイフォンだ。今日が出番なのに、中々来ないと思って確認しに来たら、倒れてたんだよ」

 「上半身裸で?」


 服を着替えている途中で倒れているようだ。

 兵装をする前の事、ってことはまさか。


 「服は? この人の兵士服はどこです?」

 「ないな。あれ、着替えが出来てもいないのに、こいつの分がないぞ? 変だな」

 

 そうか。しまった。これは服が奪われたんだ。

 じゃあ、もう一回だ。


 「わかった。そうか」

 

 俺はライラの部屋に向かった。


 ◇


 「ここからいなくなったな」


 敵が兵士の服装を盗んだ。

 これがライラの失踪の原因だ。

 兵士に変装していれば、この屋敷を歩いても誰も疑わない。

 それで、皆の気配を見計らって、ライラの部屋に入れば、彼女を奪うのは楽勝だろう。

 ナイラだったら近接が出来ない。魔法の間合いに気をつければ、簡単に盗める。

 拉致が可能だ。


 「どこにいる? ここで詳しく調べれば・・・」


 俺は隅々まで調べた。

 だが何も痕跡がない。


 「・・・しかしだ。よく考えろ。ナイラを奪取しても、彼女を持ち運んだ時点で」


 そう、この扉から出たら不審人物の完成だ。

 変装してまでここに潜入した事が、一瞬で泡と化す。


 「こっちから出るしかない」


 窓から出るしかない。

 こっちならタイミングが合えば、誰にも見られずに進める。


 「開けるぞ」


 彼女の部屋の窓三つを開ける。

 すると、一番右の窓に異変がある。

 誰かの足跡だ。


 「泥? 違うな。靴の跡・・・これはナイラがやったな。さすがだ」


 ナイラのトラップ魔法。

 足跡作成(ビターステップ)だ。

 この魔法を仕込むと、踏んだ者の足跡を残していく形になる。

 それも彼女の魔力が続く限りだ。

 攻撃が出来ないけど、結構使い勝手がいい。

 独特の魔法だ。


 「あの子、冷静だぞ。連れ去られながら、ここの窓に仕込んだって事か。一瞬でこれを発動できるのは天才だよな」


 自分がどこに移動していくのか。

 これを敵に使って、自分の居場所を示したってことだよ。

 冷静に記録したって事だよな。

 ナイラ。

 君って奴は、優秀過ぎるってば。

 よし、それならライラたちに変わらなければ、何とか追いかける事が出来るぞ。


 「しかしこれは・・・敵で確定でいいな。緊急事態を知らせてるんだもんな。気を引き締めないと、戦闘が起きるかもしれない」

 

 段々と怒りもこみあげてくる。


 「よくも。彼女を。許さない。そいつ、彼女に怖い思いをさせてんな!」


 俺はこの魔法で出来た靴の跡を追った。

 彼女がそこにいると信じて・・・。



 ◇


 

 町の北にあるのが御屋敷。

 この御屋敷の更に北にあるのがデランテの森。


 町の北から東は、森に接しているのがデランテ町だ。

 出口は西か南。

 だけど、この靴の後は、北へと進んでいる。

 つまりは森の中へと入り込んだ。

 でもこの森は、人が住んでいない。

 中心地にあるダンジョンがあるために、禁足地となっている。

 噂によると魔力の流れを乱されて、迷子になるとの話だ。

 奥の奥には行かないようにと、俺もライラもミストさんから言われてる。


 「どこへ行った。北じゃないぞ」


 途中で足が方向転換した。

 西へ向かってる。


 「これは、西へ? でも西は、森から出るぞ。そしたら、あるのは山?」


 デランテの北西は、少し離れた先に山がある。

 デジョーン山脈と呼ばれる山脈地帯があって、ディバイン王国の国境線を作ってくれてる山だ。

 山脈より先の北側には、別の国家が存在している。


 「他国へ? まさかな。売る気か? 彼女、滅多にいない黒髪だしな。綺麗だから売れそうだもんな」


 人の目を引くくらいに、綺麗な髪。

 この世界に人身売買があるのなら、狙われてもおかしくない。


 「ん。なに。足跡が消えた・・・・こんなところでかよ」


 俺は、入山する手前で足跡を失った。

 これは、相手が追跡に気付いたんじゃない。


 「しまった。彼女が変わったのか・・・」


 ナイラが誰かに変わったみたいだ。完全に見失った。


 「ん? これは」


 俺のペンダントが光った。


 「君はライラになったんだな。よく状況を理解した。さすがだ」


 俺のペンダントは、彼女のペンダントと連動する。

 ただし、ライラの時にだけ連動する仕組みになっている。

 黒の彼女じゃないと、この離れた位置にいるペンダントを光らせるのが難しいんだ。

 共鳴し合うペンダントが、彼女の行く先を教えてくれるはずだ。


 「君を助けるからね。ペンダントまだ光っててくれ!」


 光を頼りに移動。強くなっていけば、そっちに彼女がいる。

 しばらく移動すると、光りが強くなっていく。

 これ以上光ってくれれば、あと少しの距離だと理解できる所で、突然光が消えてしまった。


 「またか。彼女じゃなくなった? 変わってしまったのか」


 ライラから変更されたらしい。

 まずい状況だ。


 「ここはやるしかない」


 この技を使用したら、敵に感知タイプがいたら、こちらの動きが分かってしまう。

 そのかわりに、彼女の位置を正確に把握するぞ。

 

 「うおおおおおおお。さ・い・だ・い!」


 魔力循環を体の外へと広げる。

 範囲探知。

 これで人の魔力を探る。

 自分の魔力と他人の魔力がぶつかった先に人がいるって方法で人を感知する。

 これを使用しないのは、魔力の消耗が段違いだからだ。

 魔力を外へと広げる。しかも、自分を中心に半径数百メートル。町からやってたら死んでるけど、ここまでペンダントが教えてくれてるから、近いはずだ。

 一気に疲労感がやってくるけども、ここは仕方ない。

 彼女を見つけない限り、助ける事なんて不可能だ。


 「い。いるか・・・ん!? いた!」


 複数の人がいる場所がある。

 ここから、もう少し先だ。


 「今行くぞ。ライラ・・・じゃないか。誰かになってるか。今はね」


 絶対助けるぞ。ライラたち。




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