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中二ゆえに異世界へ  作者: 咲良喜玖


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第20話 戦う理由

 デランテ町の東。

 デランテの森。


 森は、外側は浅い緑の木々が並ぶ。

 それ以外の中心部は深い。

 どれくらい深いというと、中に入ったら夜に感じるくらいだ。

 日中であれば夜。

 夕方であれば深夜。

 夜であれば、ここはもはや漆黒と言える。

 禁足地という言葉に、不足はない。


 

 俺はそこに昼に来たから、夜に感じる。


 「どこにいるんだ。父さん!」


 セリオスからの呼び出し。

 三年ぶりの再会に緊張が走る。


 「ケイオス」

 「あ! 父さん」


 代り映えのしない男。

 唯一変化があるとしたら、髭がある。


 「すまない。まだ母さんは救えてない」

 「そうなんだ。それより、無事なの。父さんは」

 「僕は大丈夫だ。ただ母さんがな」

 「危ないの」

 「危ないと言えば危ない」

 「何が起こったの?」

 「母さんは、王女だ」


 急に吐露しだしたぞ。

 セリオスにしては珍しい。焦ってる?


 「うん。わかってる」

 「聞いたか」

 「うん」

 「そうか。さすが、ミスト。察しがいい」

 

 親友に教えていないけど、親友が理解してくれた。

 セリオスは少しだけ笑っていた。


 「今、国王が危ない」

 「王様が?」

 「容体が悪いんだ」

 「へえ。そうなんだ」


 急に王様の話?

 俺のお爺さんでもあるからか?


 「それがなに?」

 「うん。関係ないと思っただろ」

 「思う」

 「しかし関係ある。今、王太子がいない中で、倒れたんだ」

 「いない? 第一王子か第一王女がいたんじゃなかったっけ?」


 三人兄弟の一番下なのがアンジュだ。

 上が二人もいるなら王太子がいたっておかしくないだろう。


 「ずっと決めなかったんだ。王はな」

 「なんで?」

 「第一王子は、庶子。第一王女は銀の中だから。決めきれなかった」

 「・・・・は?」

 「アンジュが、金の上なんだ。名家の母を持っているのがアンジュだ」


 金の上だと。

 それって、貴族最高ランクの家。

 あのアンジュが・・最高ランクの家柄の娘??


 「うそ!」

 「ほんとだ」

 「でも、その人が王妃じゃないんでしょ。だったら別に母さんは・・・」

 「王妃は第一王女の母だ。しかし銀の中なんだ」

 「え。でもその人が王妃なんでしょ」

 「そうだ。しかし格が邪魔をする」

 

 格が悪いから、弱いって事?

 第一王女の母の格が弱いから、決めきれない?

 第一王子も一般人の子だから?

 それで、アンジュがいるから・・・。

 でもいなくなったんだから、二人の内のどっちかに決めてもいいじゃん。


 「母さんは、王宮にいなかったじゃん。その時に決めれば」

 「王が倒れてたから無理だった」

 「倒れてた?」

 「ああ。ずっと病で床に伏せっていたから、王太子を決められなかったようだ」

 「・・・前からそんな情報って表に出てたんじゃないの。王が倒れてたら、誰でもすぐに分かるじゃん」

 「その情報も伏せていたんだ」

 「王様が倒れていた事を隠してったって事? なんで」

 「権力争いだ。次の王を巡る戦いが水面下で起きていたんだ。それで、王の病は知らせずに、裏側でこの国は戦い続けたんだ」

 

 要は、王様を病で隠しておいて、裏から新たな王候補を操る戦いをしていたって事?

 それで王様がいないから、最後の最後の王太子決めだけが出来なかったって事か?

 

 「それで母さんは。いたの?」

 「いた。見つけたぞ」

 「・・・それってもしかして、金の上の母親の家に?」

 「いいや。違う。金の中のエルメラスだ。あれが持っている」

 「別な家?・・・なんで?」

 「そこは調査してる」

 「じゃあ、その家に行けば会えるの?」

 「ああ。エルメラスの家にいる」

 「じゃあ、そこに行けば、いいんだね。俺も一緒に」


 行こうと言ったけど。


 「駄目だ。そこは迷路。一度入れば抜け出せない」


 断られた。

 しかも、例えられてね。

 迷路。

 それはこの糞みたいな権力争いに巻き込まれるって事だろ。

 俺が巻き込まれるのが嫌だって、セリオスは言いたいんだろ。

 でも家族だよ俺たち。 

 助けたいに決まってるだろ。

 アンジュは当然だけど、セリオスもだぞ。

 俺はお前たちを親だと思ってる! 心の底から。


 「でも、俺も強くなったよ。古代魔法だって」

 「古代魔法?!」

 「うん。ルカちゃん先生が教えてくれて、扱えるようになったんだ」

 「ルカ・・・・それはルカ・ルーシールーか!?」

 「うん」

 「なんと、あの三星人に・・・まさか、魔法はミストから教われたらって思ってたのに・・・まさかだよ。あの伝説の人に教えてもらえたのか」

 「うん。凄い厳しいけどね」

 「よかった。それは安心だ・・・あとは、お師匠様にも教われればな」


 聖槍流も学んでほしい。

 親心かな。

 じゃあ、その人に会えたら教わろう。

 セリオスの為に!


 「そう言えば、ケイオス。君の魔力はどうした。ほとんど感じないんだが・・・」

 「うん。これ、ルカちゃん先生の教えで、普段から魔力を表に出さないようにしろって」

 「ん。なぜだ?」

 「しまっておいた方が成長効率が良いらしいんだ。そっちの方が難しいんだって」

 「しまうとは、体内にか?」

 「うん。薄皮一枚の内側。ここに張り巡らせると、魔力はしまえる。しかも、魔力循環もなされているから。とんでもない動きも可能なんだって、実際は回してるから同じように修行が出来てるってさ。ただ他人に魔力が見えないだけ。表に溢れていないだけ。だから特訓になるんだって」


 魔力循環の力を最大限に高めると出来る技だ。

 これが出来るようになるまで、半年もかかった。

 馬鹿難しい事を、平然とやれ!

 って一言で片づけるのが、ルカちゃん先生である。


 「そうだったのか。溢れさせるのが良いとされる。魔闘とは違うな」


 それは、威圧の目的があるからだと思う。

 相手よりも強くあって、より輝くべき。

 その為に魔力を表に出して威嚇するんだと思うわ。

 近距離戦だからこそだと俺は思うよ。

 魔法使いは遠距離戦。目立たずにいきなり敵に大技を叩きこみたいからね。

 魔法の放出時に、魔力が見えない方が良いとするのは、そういう意味があると思う。


 「それにしても大きくなった。本当に凛々しくなった」

 「いや。あんまり変わらないけど」

 「いや、大きくなった。ケイオス・・・君を抱きしめてもいいか」

 「え? なんで?」

 「僕は一度も君を抱きしめていない」

 「そうだっけ?」


 あれ、そうだっけ?

 ・・・いや、そうかもしれない。

 アンジュだけが抱っこしてくれたかも。

 

 「体の大きさの違いがあったからね。潰れちゃったらどうしようと思って赤ん坊の頃から抱かないようにしてたからね」

 

 そうなの?

 そんな風に思ってたのか。

 慎重だな。別に大丈夫だろ。不器用親父か。


 「いいよ。はい」

 「ああ。ありがとう。僕の息子。大切な。大事な・・・・息子」

 「うん」


 二人で抱きしめ合った。

 ごつごつしてるけど、優しさが感じられる抱きしめ方だった。

 やっぱり俺はセリオスもアンジュも好きなんだ。

 この世界の大事な両親なんだよ。

 俺にとっての唯一の大事な人さ。


 「あとは任せてくれ。ケイオス。僕が突撃して奪還するからね」

 「それって父さん一人で出来るの?」

 「ああ。出来る。それで、成功したら・・・たぶん一度消えないと駄目だ」

 「消える?」

 「うん。国外に脱出する」

 「え? ここから?」

 「ああ。ほとぼりが冷めるまでの間。別の国にいけば、アンジュの立場も何とかなるかもしれない」 

 「そっか」


 たしかに。

 今の王が死んで、他の奴がこの国の王になってしまえばいいのか。

 新たな王が決まっちまえばいいって考えだな。

 アンジュとは別で、二人で争っておけって作戦か。


 「それで、君と一緒に暮らせる時が来たら、二人で迎えに行くよ。それまで待っていてくれ」

 「それって実現する? 俺が父さんと一緒に行かない事で実現するの」

 「ああ。必ず」

 「わかったよ。絶対無事でいてね。一生会えなくなるのは嫌だよ」

 「ああ。また会おう」

 「絶対だよ」


 絶対だぞ。セリオス。生きてくれよ。

 

 「約束だケイオス」

 「そっちが守ってよね! 俺はいつでも会えるから」

 「ああ」

 「じゃあ許す」

 「許されたか。ハハハ」


 セリオス死ぬな。絶対アンジュと一緒になれ。

 別に俺とは会えなくてもいいんだ。

 でも、アンジュとだけは一緒に暮らしてくれ。

 頼むぞ。

 俺よりも、二人の幸せだけを考えてくれ。



 セリオスは、気持ちに区切るがついたか。

 抱きしめ終えて離れていった。


 「ケイオス。ミストの姪っ子とはどうなったんだ」

 「ライラの事?」

 「ライラって言うのか」

 「うん。まだほかにもいるんだけどね」

 「ほか?」

 「まあ。詳しい事情を言うと面倒だから、ライラがどうしたの?」


 多重人格って説明するのが長くなるからね。

 ここでは割愛しよう。


 「その子とは。どうなったんだ?」

 「友達だけど」

 「そうか。なれたんだな。さすがだな」

 「うん。それは一緒にいるからね。同い年だし」

 「うん。好きか」

 「そりゃ」

 「愛するくらいにか」

 「え?」

 「愛してはいない?」

 「・・・わからないね」


 正直。よく分からない。愛するって気持ち自体が。

 前世から考えても、そんな事態に陥った事がないからね。


 「愛が分からない。俺はわからないんだ・・・どういう事?」

 「それは。僕にもよく分からない」

 「え?」

 

 そうなの?

 アンジュがいるのに?


 「そんな僕でもね。アンジュの為なら、ケイオスの為なら。死んでもいいと思えるよ。この人の為なら、何が起きてもそばにいる。そう心の底から思える時。それが愛だと思う。いつかこの気持ちが、君も分かると思う。君なら、この気持ちが絶対に分かると思うんだ。だから焦らなくてもいい。君はまだ11歳だからね」

 「うん」

 「よし。じゃあ、また会おう。ケイオス」

 「うん。また」


 最後にセリオスは微笑んだ。


 「いってくる!」


 俺は最高にカッコいい親父が見えなくなるまで見送った。

 

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