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63 ギャップ

何人か持ってきたものがダブったりしてごたついたがなんとか必要なものはそろ__


「戌井、顆粒だしがない」


 __わなかった。


「まじか、めんつゆ探そ。流石にこの時間だとご飯間に合わないし、出汁とるのめんどくさい」


「後者が本音だろ」


「……」


「図星だな」


 流石に顆粒だしはなかったらしい。


 これは仕方がないとして、顆粒だしの代用品になるめんつゆを探して店内のあちこちを探して回る。。


「めんつゆってこれ?醤油と同じじゃないの?」


 あっちにないか、こっちにないか。そうやって探しているとミューが見つけてくれた。


「違うよ。全然、違う。あとで味見する?」


「そうするわ」


 人海戦術であっさりとめんつゆは見つかった。


 会計をすることになりレジ横にある呼び鈴を鳴らすと眠たげでくたびれた三十路いってそうな日本人っぽい男性が出てきた。


 服装はまさかの甚平たっだ。


「ふあ〜、うちに客なんて珍しいと思ったら……もしかしてそこのお二人さん同郷かい?」


「あはは、そうですよ〜」


 東の方の国だし売ってるものも、ほぼ同じだから広義的に同郷でいいだろう。それ以外に答えられないし。


「はは、こっちにきて久しぶりにあったわ。故郷の味が恋しくて、こうやって店を開いたものの全く人が来なくてなあ。俺は佐之助ってんだ。今後ともご贔屓に頼むぜ。同郷さん?」


「たぶんこれからも来ることになると思いますから、こちらこそよろしくお願いしますね」


 なんだろ。食えない人って感じがするな。


「せっかく久しぶりに同郷にあったんだ。少し値引きしてやるよ」


「え!?」


「いいんですか?」


「これからも来てくれるってんなら多少はサービスしとかねえとな」


 前言撤回、食えない人じゃなくて親切な人だ。


 嘘をついてることに罪悪感を感じるが、それを無視して会計を終えお店を出る。


 “日之出”、この街にいる限りずっとお世話になりそうだ。


「えっと、そうしたら必要なのがじゃがいも、ニンジン、玉ねぎ、牛もも、卵……。あとは何がいるかな」


 肉じゃが自体は、さっき言ったものを買えば作れるし、味噌汁の材料も卵を除いて揃ってる。白米だってさっきかったから大丈夫だし……。


 というか味噌汁と肉じゃがとご飯だけじゃ物足りないのではないだろうか。そう思って聞いてみれば案の定、頷かれた。


 ので、副菜を増やすことにした。何がいいか聞いてみれば色々と出てくる。


「サラダ?」


「ミニトマトとチーズのサラダとかどうかしら?」


「オニオンリング!」


「トマトが食べたいですわ」


「カボチャのマッシュサラダなんてどうでしょう?」 


「エリンギのソテー、ちょうどいいと思うわ」


 う~む、種類は違えどサラダの意見が多いね。


 あとオニオンリングは揚げ物なので今回は却下かな。今度機会があれば作ろう。


「なんでもいい」


「篠野部いい加減にしなさい。なんでもいいが一番困る。なんでもいいから言ってみ?」


「……」


 篠野部は右に、左にと視線を動かす。たぶん考えているんだろう。


 少しして、口を開いた。


「……金平ゴボウ?」


「じゃあ、さっきいってた野菜とチーズをいれたサラダと金平ゴボウにしようか。揚げ物は、また今度ね」


「はーい!」


 さっきまでとは違い、副菜はあっさりと決まった。


 必要な素材の大半が野菜なので一先ず八百屋に向かい、そこからチーズと牛ももを買って学校に戻ることになった。


 道中、暗くなったことで一応猫科であるミューの目が光って私たちが驚いたり、一応海洋生物の本能なのかメメがビビり散らしたりとあったがトラブルもなく帰れた。


 この時間になると学校の中には研究棟を除けば教師しかいない。


 普段は明るく賑やかな学校が、あまりにも暗く静かで不気味に思ってしまう。


 ササッと食堂に向かうとザベル先生が椅子に座って待っていた。


 先生は私たちを見つけると立ち上がる。


「む、おかえりなさい」


「ただいま、先生。そこ座って」


「え?」


「いいから座って、正座」


「あ、はい。……正座とは?」


「あ〜……じゃもういいから、そこの椅子座って」


「は、はい」


 帰ってきて早々だが、あんな状態の財布を渡したことの不満と不用心さもろもろについてお話をしようと思う。


「圧こわ……」


「あ、あの、なんで私、座らせられてるんですか?」


「先生なんでって言ってますけど自業自得ですからね」


「私ちょっとザベル先生とお話しするから野菜切ってて、とりあえず一口大になってればいいから」


「はーい。さ、皆行くわよ」


「え……」


 悪気がないザベル先生は自業自得だと言われ困惑し、他の生徒達も“これは仕方がない”とでもいいたげな顔で厨房に去っていくものだからザベル先生は更に困惑していた。


「先生、あなたのお財布についてお話しがあります」


「え?財布ですか?足りませんでしたかね」


「いや、十分すぎたんですよ」


「十分すぎた?ならいいのでは?」


「多いすぎるって言ってんですよ」


「え……」


「“え”じゃない。多い、こんな財布持たせるな。怖いから、人から預かったお金があの金額とか怖いから」


「……え」


「ガチ困惑せんでください」


「す、すみません。普段自分で買い物とかしなくて……。だいたいどれくらいあれば足りるのかわからず足らないよりもいいだろうと……」


「だからって多すぎです!一人分の一ヶ月の食費で自炊すると大体、一万五千円とかなんですよ!」


「そうなんですか?」


 ザベル先生の純粋な目に私は頭を抱えたくなった。


「……先生、普段の食事はどうしてるんです?」


「学食か、外食ですませてます」


「独り暮らし?」


「はい」


 私は頭を抱えた。


「えっと、一応言い訳をしてもいいですか?」


「……どうぞ」


「私は普段は外食をしてると言ったでしょう?この人数ですし君らは成長期、特に男の子達なんかはたくさん食べるだろうと思って……。私の普段の食事をもとに考えてお金を入れたんです」


「どれくらいの計算ですか?」


「千円前後……」


「パスタ一品とかで?」


「はい……」


 パスタ一品、千円。無くはない金額設定か。


 ……ご飯と肉じゃが、味噌汁、サラダ、金平ゴボウで千円くらいとして、それを九人分で九千円。成長期の生徒達が更に食べるとして……。


「あ〜、まあ……う〜ん?白米、肉じゃが、味噌汁、サラダ、金平ゴボウ……ん〜?」


 駄目だ。メニューがメニューなだけに定食として考えちゃう……。パスタ一品千円と今日の夕飯が結び付かない……。


「えっと……」


「いや!いや、それでも七万は多いですからね!高級焼き肉でも行く気ですか!?ていうか七万もポンと渡さないでください!」


 先生、たぶん結婚とかしたら一回は確実に怒られるだろうな……。高いもの買ってこないで、とか。


「すみません……」


「……はぁ」


 先生、しょぼんとしちゃった……。


 まあ、普段は外食らしいし、こうなるのも仕方がない……のかな……?


「一般的な学生からすれば七万なんて大金なんですから、気を付けてくださいね」


「えぇ」


 ザベル先生に財布を差し出す。


「中に買った物と金額を書いたメモをいれています。差額があれば言ってください」


「請求なんてしませんよ、おごると言ったのは私ですから」


「言ってくだいさいね」


「あ、はい」


 ザベル先生への説教はこれくらいにして、さっさと夕食の支度をしてしまおう。


「先生も手伝ってくださいね」


「……知り合いが料理を作るとき、手伝ったんですが私が手をつけたもの全て黒い塊になったことがあるんです。他にも色々あって、その友人には未来永劫キッチンに入るなと言われました」


「わかった、私が悪かったです。先生は机を拭いておいてください」


「そうします」


 まさか、ザベル先生がダークマター製造気だとは……。


 そりゃ外食ばかりになるし、自炊で料理をするときに使う金額もわかんないよね……。


 ダークマター製造なのはわかったけど、未来永劫キッチンに入るなって言われるほどの事ってなに?いやダークマターでも十分キッチン出禁なんだけどさ……。


「授業とか完璧にこなしてるし、試験のときの背中とか凄い頼もしかったのに料理関連はまじでダメとかギャップ凄いな」


 キッチンに続くドアを開け、中にはいる。


 入ってすぐに視界に入ったのは食器を出している、手が絆創膏だらけのレーピオとしょぼんと買ってきた野菜を運搬しているメメだった。


「おっとぉ……」


 料理下手が二人いたか。


 あ、そっか。二人とも貴族の出だわ……。

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