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62 故郷の品

商店街を歩き始めて気がついたことがあるのだが王都なだけあって、バイスの町では珍しいとされていたものや見たことの無いものが大量に売っていた。


 紫色の提灯鮟鱇とか、異様に大きいマグロのような何か、リンゴの見た目をしているが色が青い果物、動くレタス。


 すさまじい色合いをしたものに食欲を削がれつつ、流石異世界と関心が先行していた。


「う〜ん、どうしたものかな……」


 リクエストは割りと大雑把なので、この際細かいことは私が決めていいだろう。


 多分文句もでないだろう。


「とわいえ、マジでなにも思い浮かばないな……」


 空腹ではあるんだけど……。


「あ、ジュエリービーンズがある」


「宝石みたいですわ」


「それ、プチプチしてて甘くて美味しいんですよう」


 ジュエリービーンズの話が聞こえてきて興味がそそられたが今は夕飯を決めるのが先決だ。


 そう自分に言い聞かせて思考を振り払う。


「お、偽梨じゃねえか。珍しいな」


「青いってことは海の方で育ったのかしら」


「色が薄いから湖とかのほうじゃない?」


 偽、梨?


 ベイノットが手に取っていたのは私がさっき見た青い果実だった。


 あれ、梨だったんだ。え、というか言ってることからすると育てる場所で色が変わる梨もどきってこと?


 魔法世界すごい……。


「って違う!夕飯だ、夕飯。……ん?オムライス?オムライスもありか」


 どこかの食堂の広告が目にはいった。


 お店の名前や住所の他にオムライスのイラストも載っていたのを見た私は夕飯のメニューが一切うかばないので、たまたま視界に入ったオムライスでいいかと思いだす。


 あとは……ポトフを作ろうかな。魚とパスタは諦めてもらおう。


 広告のお陰でさっきまで悩んでいたメニューは一瞬で決まってしまい、必要なものを探そうと売っているものを物色する。


「ん〜、ここよりも少し前の卵の方が安いか……」


「あ、永華ちゃんメニュー決まったの?ごめんね、俺らが全くバラバラなこといったから……」


「ん、ローレス」


 卵を見ているとローレスが私の少し後ろにきていた。


「いいよ、別に。篠野部みたいになんでもいいって言われるよりもマシ」


「あ〜、母ちゃんも似たようなこと言ってたな……」


 やっぱりそこら辺は異世界でも共通なんですな。


 さて、卵は少し前のところで買うとして鶏肉はどうしようかな。まだ私たちのいるところは商店街の真ん中あたりだけど入り口近くの肉屋さんが安かったんだよね。……多分。


「まあ、入り口近くだから帰りにすぐに行けるか」


「何の話?」


「肉屋だよ〜。そっちの方が安かったからね」


「俺は走ってこようか?」


「いや、いいよ。どうせ学校に帰る時に行ける距離だし」


「そっか〜」


 緩い返事を返すローレスを見上げる。


 ローレスは女好きではあるものの紳士だ。


 始めてあった時にナンパな人は嫌いといって顔をしかめていたララは、今では懐いているのか自分からちょっかいをかけに行っているくらいだ。


「……」


「え?見つめられると照れるんだけど……。はっ、もしかして俺のこと好きになったりした?」


「え、別に」


「真顔で言われると傷つく」


「ごめんね」


「いいよ」


 さて、あと欲しいのは玉ねぎかな。


 先生に学校を出る前に調味料は食堂のを使っていいって言われて、食堂にある調味料の一覧的なのを渡されたし。


「戌井!」


「うっ!?」


「なに!?」


 聞きなれない篠野部の大声に大きく肩を揺らした。


 何があったのか、そう思って振り向くと人をうまく避けながら、こちらに向かってきていた。


「な、なに!?不審者出た!?」


「違う。少し向こうの店に米が置いてあったんだ」


「え?」


 こめ?こめ……。米!?


 その言葉を理解した瞬間に、さっきまで頭の中にあったオムライスとポトフはどこかに吹き飛んでいき白米一色になった。


「よし、行こう」


「こっちだ」


「え、あ……とりあえず皆呼んでくるね?」


「お願い」


 手に持っていた卵を店先に置いて、篠野部についていって全員が米が売っているという店に向かっていく。


 ワクワクしつつ黙って篠野部についていってみると魔具堂ほどではないが人がおらず寂れた店についた。


 掲げられている看板には達筆な字で“日之出”と書かれていた。


「日之出、か。なんか思い出すね」


「あぁ、入るぞ」


 このあたりの店の看板はカタカナや英単語などのものが大半で漢字で書かれた看板を掲げている店なんて久しぶりに見た。


 中に入ると見覚えのある品物の数々が並んでいた。


「米だあ……」


 歓喜の言葉が漏れる。


 もうこれは、夕飯は和食で決定だろう。


 周りを見回すと醤油に味噌、豆腐なんかの日本でよく見たものだらけだ。


 あ、やばい。ホームシック起こして泣きそう。


 少しだけ出てきた涙を誰かに見られる前に服の袖口でぬぐう。


 立ち上ってきた感情を無理矢理押さえつけて、夕食のことに思考を向ける。


 一瞬、和食に必要なものをあれこれ手に取ろうとしたがあることを思い出す。


「うぅん……」


 先生に渡された食堂にある調味料の一覧が書かれた紙をポケットから取り出して何が食堂にあるのか確認する。


「砂糖、塩、コショウとかはある。さすがにみりんや料理酒はないか。でも、代用できそうなものはあるからなあ……。あ、でも酢は無いか」


 人のお金で買い物をするわけだし、私の欲しいものを何でもかんでも買うなんてことはできない。だから、なにか代用できそうなものを確認する。


「人の財布を見るのは気が引けるが、財布の中身を確認してからでいいんじゃないか?」


「む、確かに金額の上限確認すべきだね」


 小さな店で人がいないと言うのに縮こまるようにして片隅により、渡された財布を開けてしまった。


「……」


「……」


 確認したら二人とも言葉を失った。


 チンリ__


 後ろから入店を知らせるベルが鳴る。


「あ、いた。ん?二人とも固まってどうしたの?」


 少し遅れてローレスが他の面々をつれてきた音だった。


「……どうしたんでしょう?」


「さぁ?ここ見たこと無いものだからだからすげえのでもあったんじゃねえか?」


 ローレス達は店の中で隅の方とはいえ固まって動かなくなっている二人を不審に思い、人がいないのを確認して後ろから覗き込む。


 覗き込んだ先にはザベル先生の開かれた財布があった。


「え……」


「ん???」


「は?」


「ヒュッ……」


「あら?」


「わぁ」


 上から順にローレス、ミュー、ベイノット、ララ、メメ、レーピオの反応である。


 反応は各々だが金銭的な感覚において一般的な学生といっでも遜色のない六人は財布の中を見て青ざめていた。


 何をかくそう財布は膨らんでいないものの、中には一般学生がビビる程の札が入っていたのだ。


「ハッ、しまえ、しまえ、しまえ!無くしたら大変だ!」


「あ、うん」


 いち早く硬直状態から抜け出したカルタはすぐに周りを確認して永華に財布をしまうようにいった。


「え、何、今の。こわい……」


「ララちゃんしっかりしてください!」


「はわわわ……」


「ローレスくんがおかしくなりましたあ」


 二名ほど挙動がおかしくなっている。


「なんで気がつかなかったんだ……」


「札はわからんて……」


「こわい、先生こわい」


「ララ、正気にもどれ」


 確かにこんな大金をポンと渡してくる先生は怖い。


「さっさと買い物して帰ろう」


 ベイノットの言葉に全会一致となり、急いで必要なものを買うことになった。


 財布の中には一旦忘れることにする。


「で、何するんだ?」


「和食でいい?」


「郷土料理?いいんじゃない?」


「オッケー、じゃあそうしよう」


 味噌汁は豆腐とワカメ……あれ?海外の人ってワカメダメだっけ?メメは食べれそうだけどやめとこう。味噌汁は豆腐と卵にしよう。


 そうするとメインはどうするか。肉じゃが、煮魚、生姜焼、照り焼き、チキン南蛮……。先生、胃に優しいものって言ってたし揚げ物はやめとこう。


「えっと……。じゃあ、肉じゃがにしよう。スープって言われてるし味噌汁も作ろうか。魚とパスタはまあ今度ね」


「はーい」


 えぇっと、いるものは……。


「味噌汁と醤油に、顆粒だし、白米、豆腐、しらたき。見つけたらレジ近くに集合、解散」


 ひとまず“日之出”にある必要なものを集めることにした。

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