正妃宣言
少し期間が空いてしまいました。
その間に、この拙いお話に3件ものブックマークがついておりびっくりです。
すこしでも楽しんで頂けるお話にしていきたいです。
「「……」」
ドルトルのあまりに真剣な目に二人はお互いの顔を見合わせた後、嫌な予感を感じながらもドルトルに目を向けた。
「アンナを私の正妃に迎えたいと考えている。ついては、二人にもそのことを了承してもらいたい」
その彼の言葉にオードリューとアズサ、そしてアンナも目を見開き、ポカンと口を開けた。
『正妃』とは後宮の中に住まう大勢の側妃とは異なり、公の場で国王の隣に立つことを許された、ただ一人の女性である。勿論、普通は地方の下級貴族を据えること等ありえず、基本は王都に住まうことを許された中央貴族、その中でも国の中枢を担う貴族の血縁か、他国の姫君辺りを据えるのがこの国の常識だ。
オードリューとアズサが先程、アンナが幸せになれないと考えたのもこの常識からきている。
「ん?どうかしただろうか?」
ドルトルは三人が口を開いたまま、全く動かないでいるのを訝しみ声を掛けた。それにいち早く答えたのは彼の言動に慣れているアンナだった。
「ど、どうかしたじゃないわ! 貴方、今日は恋人としての挨拶をしたいって言っていたじゃない。それがどうして結婚報告みたいになっているの!? しかも、正妃なんて!」
アンナは混乱した頭をどうにか落ち着けようと右手を額に当てながら、ゆっくりと首を左右に振った。
そんな彼女の様子をじっと見ていたドルトルは彼女の手を額から外し、両手で包み込む。
「アンナ、君が混乱するのも無理はないと思う。だが、私は本気だ」
「私だって貴方が私を妻にと望んでくれていることは嬉しいと思うわ。でも、正妃なんて許されるはずがないわ。私は地方貴族、しかも没落しているのよ」
「アンナ・・・」
アンナの瞳から一粒の涙が零れ、彼女の頬に一筋の線を描いた。ドルトルはそれを苦しそうに見つめるが、自身の言葉を撤回しようとする様子はない。
「少々よろしいですか」
そこへ、アンナが言葉を発した辺りから二人の様子を伺っていたオードリューが声を掛けた。
その隣にいたアズサは呆然と二人のやりとりを見ていたがオードリューの声掛けに、瞳を彼の方に向け、声を掛けられた二人もオードリューの方へ目を向けた。
「どうも、お二人の間にも意思疎通ができていらっしゃらず、またお嬢様もまだ混乱状態です。今はこれ以上話し合うことは不可能でしょう。一旦、ここは時間を置いては如何でしょうか」
「それは日を改めろということか?」
「はい」
オードリューはドルトルの問いかけにはっきりと頷き、視線をアンナに向けた。
「お嬢様如何でしょうか」
「そうね、私もこれ以上話ができるとは思えないわ。ドルトル、申し訳ないのだけれど、そうしてもいいかしら」
「ああ、そうだな……混乱させてすまない」
ドルトルがアンナの髪を愛しそうに撫で上げ、アンナは目を伏しながら、擽ったそうにそれを受け入れた。
その様子にドルトルは更に彼女への愛しさを募らせながら、彼女から手を離し、オードリューに顔を向けた。
「すまなかった。話は後日にしよう。ただ、私にも国王としての政務がある。そのために一度城に戻らなくてはならない。城に戻り、またこの町に戻ってくるまで早くて10日かかる。話は10日後になるが、構わないだろうか」
「畏まりました。寧ろ、それ程時間が空いたほうがお嬢様も私達も冷静になれるというものです」
オードリューが深く頷くとドルトルも軽く頷き、座っているソファから立ち上がる。それを見て、自身も立ち上がろうとしたオードリュー達を片手で制す。
「そのままでよい。私がいるとお前達が動けないだろうからな、私が先にこの店から出よう」
「恐れ入ります。ですが、お一人では危険です。私かアズサのどちらかを」
「いや、外に私の護衛が待機しているから心配無用だ。アンナ、今日はすまなかった。帰ったらゆっくり休んでくれ。では、また10日後に」
ドルトルはオードリューの気遣いに笑みを浮かべて首を振ると、隣で座っているアンナに顔を向け、髪をひと房手にとり、そこに口づけを落とした。
そして、頬を染めるアンナ、あまりの気障さに呆気にとられたオードリュー、外見無表情内心混乱の嵐のアズサを残し、颯爽と喫茶店のドアを潜り去っていった。
「ドルトル・・・」
アンナはドルトルが去っていった後も、愛しさや苦しさなど感情の入り乱れた瞳をドアから離さず、そんなアンナの状態にオードリューは溜息を吐くと、アンナに声を掛けた。
「お嬢様、帰りましょう。アズサも立て」
「あ、そうね。帰りましょう」
アンナはオードリューの言葉に自身がドアをずっと見つめていたことを自覚し、顔を赤くしながら、オードリューの言葉に頷き、席を立った。
「はい」
アズサも短くはあったが、オードリューに返事をし、席を立つ。
二人が帰ることが出来る状態になるとオードリューは喫茶店のマスターのところにお会計をしに行くが、先にドルトルが会計を済ませていたことを知った。
「なに? 昨日のうちに会計している? どういうことだ、マスター」
「いやな、昨日あの金髪さんが来てな、明日の分だっていって札束置いて言ってくれたんじゃよ。余ったらチップだと思ってくれっていうちょってな」
「そうか、わかった。ありがとう、ごちそうさま」
オードリューは外で待っているアンナとアズサの二人のもとへ向かった。
「さて、帰ったらドルトル陛下のことをもっと詳しく教えて頂きますよ、お嬢様。それにお説教もしなくては」
「……え?でも、彼は国王陛下だし、二人には言いづらくて」
「そこではありません。あの方のお立場を考えればそれは致し方ないとも思います」
「え? じゃあ」
「そこではなく、お嬢様が男性とふたりっきりでお会いになっていたことに対してのお説教です」
「あら、そっちなのね」
「後、陛下が仰ったご正妃のお話ですが、それはまた後日話すことに致しましょう。今日はお説教だけの方がお嬢様もよいでしょう」
「……いいような、悪いようなという感じかしら」
アズサはオードリューとアンナのやりとりに口を挟むことなく、二人から数歩後ろを歩いていた。
「どうしたの? アズサ。とっても静かね」
何も言わずに自分達の後ろを歩くアズサを心配したアンナが振り返りながら、アズサに話しかけたが、アズサは何も言わずに首を振った。
いつもなら、アンナに心配されて心躍るアズサだが、今の彼女にはそれを感じる余裕はなかった。
今、彼女の頭の中はある疑問でいっぱいだったのだ。
(一体何が書かれているのやら……ですね)
アズサは見ていた。
ドルトルが席から立ち喫茶店を出る時、オードリューの横を通り過ぎたその一瞬、ドルトルはオードリューのズボンのポケットに小さな紙切れを忍ばせたのを。
(後で私にも絶対に、絶対に見せて頂きます、オードリューさん)
紙切れの内容が『お嬢様』のことであると疑っていないアズサはその決意を胸に前を歩く二人と一緒に帰途についたのだった。
ドルトルが渡した紙切れには何が!
なんて書いてみたり笑
まだ、アズサの恋愛にいかないですね。
サクサク進められるように頑張ります!




