均された町
夕方。
二人は小さな町へ辿り着いた。
石壁に囲まれた、どこにでもある宿場町。
本来なら、人の声でうるさい時間だった。
呼び込み。
怒鳴り声。
鍛冶の音。
酔っ払いの笑い。
そういう“ばらばら”で出来ている場所。
なのに。
静かだった。
人は多い。
市場も開いている。
でも音が重ならない。
笑い声が、同じ長さで止まる。
足音が、一定の間で響く。
鍛冶場から聞こえる鉄音まで、綺麗に揃っていた。
カン。
カン。
カン。
一定。
一定。
一定。
リュカは喉が渇くのを感じた。
ミアは町へ入った瞬間から、明らかに様子がおかしかった。
歩幅が揃いかける。
呼吸が浅い。
時々、動きが止まる。
「ミア」
声を掛ける。
彼女はゆっくり振り返った。
一瞬だけ。
目の焦点が合っていなかった。
「……大丈夫」
綺麗すぎる返答。
リュカは咄嗟に彼女の肩を掴いた。
「違う」
強く言う。
「合わせるな」
その瞬間。
ミアの呼吸が崩れた。
肩が大きく上下する。
乱れた息。
額に汗が浮く。
「……っ、あ……」
初めて、町の音が揺れた。
鍛冶の音が一拍遅れる。
市場のざわめきが崩れる。
通行人の歩幅が乱れる。
まるで。
ミアを中心に均衡が外れたみたいに。
その瞬間だった。
町の人間が、一斉に二人を見た。




