揃う街道
翌朝。
空は晴れていた。
雲は薄い。
風も弱い。
なのに、街道は妙に静かだった。
旅人はいる。
商人も。
荷馬車も。
けれど、誰も大声を出さない。
笑い声が重ならない。
まるで全員が、無意識に何かへ合わせているみたいだった。
リュカは歩きながら周囲を見る。
馬車が通る。
蹄が四つ、綺麗に揃う。
かつ、かつ、かつ、かつ。
乱れない。
荷車の車輪も同じだった。
ごと。
ごと。
ごと。
道の石に乗り上げても、音が崩れない。
「……普通じゃねえな」
「うん」
ミアの返事が早い。
彼女は顔色が悪かった。
息も少し浅い。
だが、立ち止まらない。
街道脇に、小さな茶屋が見えた。
二人は水を求めて立ち寄る。
中には旅人が数人いた。
誰も喋らない。
湯気だけが静かに揺れている。
店主が椀を置く。
こと。
軽い音。
その瞬間。
全員の視線が、一度だけ店主へ向いた。
ぴたりと。
同じ速さで。
リュカの背筋が冷える。
旅人たちは、何事もなかったように視線を戻した。
誰も違和感を口にしない。
気づいていないのか。
それとも。
ミアが、小さく椀を持つ。
指先が震えていた。
「……ここ、長くいたくない」
「分かってる」
リュカは銀貨を置き、立ち上がる。
店主が頭を下げる。
その動きも、綺麗すぎた。
外へ出る。
風が吹く。
街道沿いの木々が、同じ高さで揺れた。




