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世界が呼吸する場所で、君と出会った  作者: 優耀
ふたりたび

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人の影

本日は2話連続投稿の1話目です

 沢の音が、少し違っていた。


 昨日と同じ場所に戻ったはずなのに、跳ね方が均一だ。

 水が石に当たる角度まで、揃っているように見える。


 リュカは眉をひそめる。


「……昨日、こんなだったか?」


 ミアは答えない。

 しゃがみ込み、水面を見つめる。


 指先をそっと浸す。


 冷たい。

 流れている。

 でも――


「整ってる」


「いいことじゃないのか?」


「……いい、のかもしれない」


 ミアの声は、曖昧だった。


 周囲を見渡すと、草が踏まれた跡がある。

 沢の上流に、細い足跡。


 旅人のものだ。


「誰かいるな」


「うん」


 ミアは立ち上がる。


 落ち着かない。

 理由は分からない。


「触られた感じがする」


「嫌か?」


 即答できなかった。


「……分からない」


 沢の上流へ、ゆっくり歩く。


 岩陰に、小さな金属片が落ちていた。

 刻印があり、線が走っている。


 ミアは、それに触れない。


「これ、何だと思う」


「分からない。でも……」


 ミアは、息を吸う。


「計ってる」


「何を」


「流れ」


 風が、少し変わる。


 遠くで、杖の先のような光が一瞬だけ揺れた気がした。


 誰かがいる。


 でも、姿は見えない。


 リュカは、沢をもう一度見る。


 楽だ。

 呼吸が軽い。


「……悪い感じはしない」


 ミアは、しばらく黙っていた。


「うん。

 でも……少し、怖い」


「何が」


「私以外にも、触れる人がいること」


 それは嫉妬ではない。

 立場の揺れだった。


 沢の音は、きれいに揃っている。


 昨日より、整っている。


 でも、昨日の音ではない。


 二人は、その場を離れる。


 沢の水は、変わらず流れていた。


 誰かの手を経て。

面白い、続きが気になると思って頂けましたら、

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