真ビリー無双「もじゃ髭絶叫酒飲み音頭」
「やんのかコラー!!」
「すっぞコラー!!!」
「ゲディヒトを読まんかい!これがワイのドイッチェイデオロギーや!!」
ごく一般的な戦間期ドイツ政治運動の一コマである。誇張表現ではない。左右共に私兵を有し、街頭であろうと屋内であろうと素手、棍棒、そこいらにある物、刃物から拳銃まで持ち出して違いに思想を押し付け合い。テロ、クーデター未遂、武装蜂起がマジで頻発したのが降って湧いた民主政治にのたうち回るワイマール共和国の姿であった。
一言で言うと「暴」
細部を端折って言うと、この「暴」に一等秀でた新興半グレ「ナチ」が共産党こと極左武装集団「ゾチ」を最大とした対立派閥を打ち倒し、その暴力的体制を拡大発展してドイツを統一。内外でハチャメチャをかまし、最終的に広域密輸組織キングダムギャング、超武闘派ステイツ会、そして呵責無き「暴」の化身である筆髭率いるソ連に構成員丸ごと鉛玉をプレゼントされて全滅したのが史実だ。所詮オカルト被れ半グレ如きに希望の花は咲かないのである。
では異なる歴史を辿るこの世界でのドイツはどうだろうかと言うと…
「その分野では詳しくないのですが、貴方の理論は感情的に過ぎるのでは?別に背後から刺されなくても、あの時、帝国ボロボロやったで?」
「「貴様~!党首を愚弄するか~!!」」
「なんや?ワイは何時でもガチンコ問題無しやで?掛かってこんかい!!」
この有様であるからお察しである。現在の「暴」占有率は6・2・2の辺りを推移している。最大なのは勿論ビリー、次いで左右がドングリの背比べをしている。これならばアカだろうとクロだろうと殴り飛ばしてドイツ政治を平に伸ばしてしまえば良いと思うだろうが事は簡単ではない。
「暴」はどこまで行っても手段でしかない。「暴」を用いて「秩序」を確立しなければ、本当の最大派閥である一般大衆、本質的に「暴」を嫌う人々の支持は得られない。「暴」を振り切って「恐怖」にまで持っていければ可能だが、それで確立した支配が、脆くも崩壊していく様は転生者であるビリーには良く分かっている…ソ連とかワルシャワ条約機構とか東ドイツとか。
暴走決めても根の所は民を思う(なんで始めは大人しくしていた)感性を持っているビリーはそんな支配を望んではいない。出来るならば自分が死んだ後、真面な立憲君主国家として史実より大きい国土を維持したドイツになって貰いたい(故地プロイセンは絶対にやらん)
なのでスタンスを理解している(過激派がいないとは言ってない)ビリーの集めた暴は陛下の近衛を自認し(政府を無視した)治安の維持、行き場の無い元兵隊の受け皿、貧民や戦災孤児の保護を目的として行動している。
ここで問題となるのは「兵士」の受け皿である事だ。そこに含まれるのはせいぜい尉官までで、最大限譲歩して少佐なのは、ビリーの存在が高級将校と兵士の溝を決定的なまでに広げてしまった結果のある意味自業自得である。其処に右派勢力の付け目があった。
ビリーは戦場で辛酸を嘗めた兵隊人気は高い。家の親父とか爺さんと呼ばれる程には人気がある。だが軍をそして国家を支配していた人間には、自分の栄光も軍歴もグチャグチャにしてくれ、背後から刺した癖に人気だけはかっさらって行った縛り首にしたい人物である。特に悪魔化までされたユンカー系列の元参謀本部の人間には。
例外的に若手と呼ばれる連中(昨今人気が落ちた疾風とか、白熊とか)それなりに受けは良いが将軍格となると絶望的だ。彼らはビリーを引きずり下ろす為、残された自己の影響力を使い、民族主義右派を支援する他、怪しげなオカルト(アーリアが~シャンバラが~とか言ってる)学者まで持ち出して右派を固めようとしていた。
一方で左はどうかと言うと、これはこれでソ連からの支援と、長らくドイツ帝国に弾圧されていた経験から来る組織構造の堅牢さでビリーを反動主義者と激しく攻撃していた…のだが、戦前からのビリーの切り崩し工作を受けていた議会主義派と、あくまでもソ連との連携を重視するインターナショナル組で対立が激化していた。
ビリーは今は弱小でしかない民族主義を潰すよりも、最大の敵と繋がっている連中を右派の力を借りずに打倒する事を選択した。その手段はドイツ社会民主党(SPD)の大物の切り崩し、社会主義者をモスクワから切り離し争わせる一手…ビリーにしか出来ない方法のオルグであった。
「わらしはね~、あなたみたいに、はなせる人がいるなら革命なんてめざさなかった!ヒック!こんなに物分かりの良いひとはいない!社会主義というものをよ~くわかってらっしゃる!先生もいたらよかった!あなたは世界一革命のわかる君主だ!ん~?ワハハッ今は違うか!まあいいや飲もう!」
「そうやで同志!今のワイはプロレタリア!自分の食い扶持は自分で稼いどる労働者や!君らの敵やない!ワイらは共闘できる!一緒に労働者の国を作ろうやないか(ワイはその上に居るけど)!」
「同志ヴィリー!!」
「同志カール!!」
がばちょと男たちは熱い抱擁を交わした。一人は元皇帝ビリー、そしてもう一方は社会主義者カール・カウツキーである。カール・カウツキー。かのセントバーナードみてぇな髭もじゃ風呂ギライ何時も家庭に残された時間が無いオジサンの相方にして金の無心先、死後のその著作を纏めて世に大きな迷惑と小さな社会の発展を撒き散らしたフリードリヒ・エンゲルス、その直系の弟子であるオジサンだ。
この史実に於いては後にレーニンに右派修正主義と批判されバチバチするオジサンを亡命先のロンドンで酒持って襲撃し、ベロベロになるまで酔い潰して肝胆相照らし、利用しようと言うのがビリーの企みでありそれ見事に成功した。これはビリーの持ち合わせる108のチート「福耳」並びに「對酒當歌酒(ただし君の言った事は全部覚えてるけどね)」の効果であろう。
始めは追い出そうとしたカウツキーであるが、まあええやん!まあ酒だけでも!と押し込んで来るビリーに根負けし、あれよあれよいう間に歌ってマルクス踊ってエンゲルスしてしまい
「今このおっさんの言うた事メモした?じゃあ記事は任せたで」
と同行していた新聞記者に酔いに任せて言った事書かれてしまった。結果
「社会主義の本家はどこや!ドイツや!マルクスは何人や!ドイツ人や!ロシア人やない!ドイツ労働者の諸君!悔しくはないんか!ワイらが本物や!ワイらがワイらの為にワイらによる社会の改造を行うのがスジってもんや!勝手に看板持って本家面する奴らの指示に屈する必要はない!ドイツにはドイツの社会民主主義がある!ワイらは手を取り合える!資本家は敵や無い!ちょ~と言う事聞いてもらうだけや!ワイが場所整えたる!今日はワイの押す奴を連れて来たで!ではどうぞ~」
「え~いまご紹介に預かりましたカール・カウツキーでございます。本日は~…」
と言う事態になり、金欠と有する暴への恐怖からビリーに逆らえない政府の要職にねじ込まれ、他のSPD党内左派もカウツキーを足掛かりにしたビリーの寝技にやられていく。当然ながらこの行動、体制側に取り込まれた(ビリー個人にだが)としか見えない行動にモスクワと右派冒険主義の皆さまは激怒し、政府への攻撃を激化させアカの持ち芸(内ゲバ)を開始するのだが、これは正にビリーの思惑通りの行動だった。
アカはこれで良い。過激主義は体制になれないから過激でいるしかない存在だ。体制側になれば自分達を守ろと自動的に保守的にそして妥協的になって弱体化する。どっかの島国の共産党を例にあげるまでもない。
ではメインディッシュ取り掛かろう。
「チョビ髭く~ん!来ちゃった♡」
「あいえ!陛下!?陛下なんで!!」




