文化棍棒殴打時変「ご誕生だぁ!ナチも真っ青な世界が産まれようとしている!」
北支を蹂躙し南京を目の前にして中華の大地に深々と食い込んだ連合軍であるが、ここでその連合に不協和音が発した。
「「もうここら辺で良くない?」」
の音だ。この期に及んで芋引こうと言う奴らが出たのだ。筆頭フランス!次鋒イギリス!である。意気上がる米国とは違い、植民地収奪経験に長い彼らは中華深部での際限のないモグラ叩きの予感をいち早く察知し、沿海地域の封鎖と戦略爆撃による工業基盤破壊で済まそうと言い出した。
彼らとしてはこの時点でホクホクなので絶対に来る対独戦に、兵力を損耗したくないとの判断があった。幾ら日本から湯水の様に装備と金を貰っても人的損傷は補えない。いまでも沿岸取れるからええやろ!適当に茶ぁ濁してズルズル貰って後はさいならや!の精神を本国で主張する勢力の勢いが増したのだ。
「我々が先方を務めるので後方警備宜しく!」
と米国が言い出して来たのでいや~な予感がビンビンしていた。ゲリラ…輸送線襲撃…焼き討ち…荒れる規律…潰しても潰しても反抗的な現地民…うっ頭が!
この反応に「あっ?」と切れかけた米国であるが、すかさず日本国がフォローに入る。更なるアメの、しかも限定商品の提示である。
「つまり…このまま行けば、どんなに技術的に優っていても支配が揺らぐ可能性があると?」
「さいですな」
「しかも、それは我が方の技術的優位が原因と…」
「そうです」
「豊かになればなるほど堕落し老いていく…まるでローマの様にか…」
「かの帝国だけではありません。歴史上、頂点に立った国家の宿命です」
メガロポリス東京、昨今とみに再開発が…アーコロジー建設の準備…進んでいる有史以来最大の都市に集められた識者たちは提示された未来情報に嘆息するしかなかった。
「それを貴国には回避する方法があると…」
「ご提示できますね。貴国が今回の戦争に注力して頂けるならばですが」
集まったのは、合衆国から日米親善を言い訳とし訪問した大統領フランクリン・デラノ・ルーズベルト(人種差別主義者)英国からは日本が今一番首相になって欲しい男サー・ウィンストン・チャーチル卿(植民地大好きオジサン)フランスからは右派(ドイツ殺す派)の重鎮フィリップ・ペタン並びに彼と仲直り出来たが最近政治家の真似事ばかりさせられる様になったシャルル・ド・ゴール(フランス第一主義者&植民地手放さないぞマン)である。
日本の一言で集められたに等しいこの会議、米国大統領は初手からイライラしていたが、見せられたデータに悔しいかな、やべぇ来なかったら大変な事になってたわと思わざるを得ないものがあった。
それは人口減少問題そしてそこから発生する未来の移民問題であった。この場に非白人は議事進行の日本人しかいない。残りは全て白人が国家を動かす事を当然としている者たちだけである。
その彼らに日本は詳細なデータと共に暗黒の近未来を(THE白人代表に)見せつけた。チャーチルとドゴールは近い物を見て己の属する国家の没落を防ごうと決意したが、その努力が実ったとしてもいずれ国家は白人の手から滑り落ちると言う未来を日本は提示したのだ。
いや滑り落ちると言うレベルではない。アフリカ、インド、南米、そして只今絶賛侵略中の中国出身者の手を借りねば国家は維持出来なくなる、そして国家その物を多人種に売り渡さんばかりの連中が権力の座に座ると言うのだ。偏に国民(白人)が子供を産まなくなったと言う理由で。
悪夢である。特にどっかの北欧の福祉国家が、寛容と杜撰を履き違えて茶色いのに占拠されていた光景は地獄の様であった。前に見せられたクソクソナチスの計画をセルフでしてどうする?なんで自分で自分の国民を浄化してんだオメェら?
「さて、どの様にこの愚か者たちと、怠惰な国民に真っ当に国を思わせる事ができるんだね?子供を作れと言って回るのか?馬鹿馬鹿しい!愚鈍極まる政治家どもだ!なんで植民地人が子供を食い物にしているの座視している!」
「頭が痛い…我が党はなんで労働者を敵に回しているんだ…完全に共和党に食われているではないか…しかも支持基盤が黒人ってなんだ…」
「でっ、これの先に、何時革命が起きたのですかな?この若造は首を飛ばされたんでしょうな。我が軍は何をしていたんだが」
「閣下、この時代の軍は死に体でして…政治勢力になれるかどうかも怪しい様です。ドイツに全て押し付けた弊害かと、それと例の核兵器の維持に金が…」
「はぁ、だらしない連中だ…」
一同この有様には憤りを通り越して呆れがでる。大まかに情報は知っているとしても、こう人口曲線が下降し、雪崩れ込んで…いや自爆の上、自分たちで呼び込んだのが全てを圧迫していくのをデータで見ると後輩共を銃殺に処したくなる。
「お怒りごもっとも。ですので我が国は更に踏み込んだ支援を行いたいと思っております」
「君たちの人間工場かね?」
「ご理解が早くて助かる。その通りです」
そんなテンション駄々下がりの中、日本人政府の役人は嬉々として言い。その言葉を聞いたチャーチル卿は心底嫌そうに返事を返した。
「国民が許さんよそんな物」
「教会が異端審問を再開するだろうな」
そして当然の懸念を各位表明する。技術については理解が及ばないので各人の頭にはベルトコンベアで運ばれる赤ん坊が浮かんでいる。そんな一同に日本人は携帯の取り扱いを頑固な老人に説明する様に語る。
「ご懸念はごもっとも!ですがこれをご覧いただければ、そんな物は吹き飛びますよ」
そう日本人が言うと、会議の場に提示されていたホログラム映像があるデータを映し出す。未来世界に於いて殆どの国家が、次の覇権国になろうと言う超大国予備軍までも人口が減少していくと言う事実だ。
「この先、世界は現在からは想像できない程、豊かになります。例えそれが地球の果てだろうとも。我々の世界がそうだった様に、例え先進国のゴミ捨て場に過ぎぬ国家だとしてもその恩恵に浴すのです。安価な食料品、安価な娯楽、仮初の快楽は世界に行きわたる。この世界では猶更に」
「君たちがばら撒くからかね?」
「それもあります」
「ふんっ、本音が出たな。我が国の産業を蝕んでいるだけの事はあるな」
「閣下、利便性を人は求める物です」
「それで潰されてはかなわんよ」
「ですが皆さまのお国は広大な植民地を保有しておられる。ああ、保有予定の方も…」
「自由で民主主義的な同盟国だ。誤解しないでもらおう。そちらも支援を行うなら建て前を守って貰いたい」
「失礼を…ともかく市場を持っていらっしゃる。我が国は皆さまに最新のテクノロジーを、皆さまは自国経済圏に皆さまの基準で安価で安全な商品を売り、そして世界は豊かになれる体制は整っております。それで出たゴミは我が国で引き受けましょう。前の世界の様にうるさく文句を垂れる連中はでません。となると、後、数十年は立たない内に植民地の人口は…」
「減るな。この通りにいけばの話だが。アフリカ人がこれ程の購買能力が出せるかね?」
「そこは努力しだいかと、アフリカをフランで埋め尽くせば良いのでは?」
「支援を確約してくれるので?」
「もちろんです。我が国は此処に集う皆さまの鉄の結束を保障する用意があります。我が国の商売を邪魔しない限りですが」
「なんとも傲慢なことだ。合衆国大統領を前にして一役人が言うセリフではない。だが事実は認めよう。それで?」
「人工子宮は赤子だけではなく成人でも作れます。そして人工的な改変を加える事も出来る。純粋なアングロサクソンにご興味は?強く賢く愛国心旺盛な若者ですよ?」
「君たちの様にか?薄気味悪い程整った顔とその人をこ馬鹿にした態度、どうせ私たちより知能が高いのだろう?」
「はっきり申し上げればそうです」
「気分が悪い。私たちは旧人類と言うわけか?その技術で年何人作れる?私たちに運用可能になるまで何年だ?国王陛下への忠誠は刷り込めるんだろうな?」
一連の説明にチャーチル卿は嫌悪を覚えたが、彼の冷徹な頭脳は既に決断を下していた。そして脳裏にはある場景が浮かんでいる。この場の人間もまた。
(植民地人が少数派に転落した帝国の至宝…帝国に忠誠を誓う勤勉な若者の土地か…果たして議会を説得できるか?軍からだな…いやユダヤ人を…)
(先ずはマンチュリア…そして…永遠に等しい程長く続くフロンティア…黒人問題を綺麗サッパリできるなぁ…メキシコを歴史上の存在に…アラモ再びと言う手もある…)
(フランス人の為の欧州…ドイツその物の抹消さえ…)(純フランス人のみで構成される海外県…産まれた時からフランス国旗に包まれた子供たち…)
夢は脳裏を駆け巡り、脳内に潜むこの世界では養鶏業者の悪魔が「総統!レーベンスボルン計画は完遂できます!我々は純粋なアーリアンの国家を作れるのです!」と囁く…別にアーリアンじゃないけど。
そして思考を巡らす男たちに、現実の悪魔、脳内に金髪の野獣を宿す日本人官僚は、彼そっくりの…最終的解決案が決定された瞬間の…笑顔で決断を迫った。
「現地生産では最大年産100万人の成人を予定しています。DNA提供はしていただきますよ?流石にゼロからは作れないので。国家に対する忠誠は勿論、本能レベルで可能です。私をご覧ください裏切る様にみえますか?ああ、運用するだけなら専門技術者の育成を我が国で行えば二から三年でしょう。整備は我が国が行いますのであしからず。いかがですか?チャイナに於ける戦争に積極的な姿勢を見せていただけないでしょうか?」
「国家を私物化する腐敗官僚そのものに見えるが?だがチャイナについては飲もう。さっさと終わらせるべきだ」
「同感です。大統領を殴りつけてでも増派をしましょう」「装甲服の増産については後にお話しが…」
「やれやれ、初めからそうして貰いたいものだね。所で…この人工子宮工場だが建設は目下の戦争の当事者である合衆国が最初で良いのだろう?」
「待っていただきたい!苦渋の決断を下した我が国が先ですぞ」
「ドイツが何時せめてくるか分からないのです!我が国を優先して頂きたい!植民地警備の兵を本国に呼び戻す必要がある!」
こうして、地球を分割する事を当然の権利だと考える男たちは悪魔の契約にサインする。彼らに取って未来は眩しいばかりに黒々と光っていた。




