真ビリー無双「ドイツを立て直す芸を見せてやんよ!」
「陛下…敢えて陛下と言わせて頂く人物を吾輩が意識した始めての出来事は、1918年の春のあの熱狂の中であった。正直に告白するが、吾輩はその時まで君主制度になんの拘りもない人間であった。吾輩がオーストリア国籍を捨てドイツ人としてドイツの為に戦う事を選んだのは、多分に己の中のロマン主義による、偉大なるゲルマン国家を守らんとする使命感からであったからだ。
しかし、あの泥濘とガスの中で吾輩を襲った衝撃は、戦友諸君らも共有した様に、雷鳴の如き一撃で吾輩を熱烈なる君主主義と超人思想の虜とした。これを読む外国人読者諸氏には分からない事かもしれないが、あの時吾輩を含む全戦線の兵士が…将軍共と言う不忠者以外は…一命を捨てて報われる、国家よりも偉大な存在に出くわしたのだ。
英雄は存在する。この技術が人体を挽肉に変える時代に置いて、たった一人の人間がその意志の大波でこれまでの全ての事象を押し流す事は可能なのだと知った。吾輩たちはこれまでの長い長い徒労と厭戦の重荷を捨て戦った。陛下の齎す奇跡の数々がその支えであり、遂にパリに陛下と幸運なる戦友たちが突入したと聞いた時、吾輩は隣の戦友と抱き合って喜んだ事を覚えている。
次に陛下を意識し、そのお姿を見る栄誉に預かったのは、戦後まもなくの事で。恥ずかしながら食う為にアカ共の運動に参加していた時であった。言い訳はしない。陛下のお力により、すんでの所で首の繋がった祖国とは言え、その実態は酷い物で軍より放り出された吾輩は明日のパンにも困っていたからだ。
当時アカ共は得意の絶頂であった。戦中、陛下より内示を賜った等と、既存体制の事など毛ほども気にしていない癖に言いふらし、祖国に汚らわしい革命を持ち込もうとしていた…その一人であった吾輩の言える立場ではないが。
1920年3月のゼネスト。あの場に私はいた。壇上で政府を打倒せんと声を張り上げる弁士。それをを殴り倒して現れたのが陛下、今や一市民となったヴィルヘルム二世だった。
『黙れソ連の傀儡!労働者諸君!諸君らが恨むのは政府ではない!私である!私一人が諸君らの窮乏に責を負う人間だ!だからこそ私は諸君らに協力を求めたい!飢えているか!?私が食わせよう!仕事を求めるか!?私が与えよう!私は逃げも隠れもしない!必ずや諸君らに全てを与える!私を今一度信じて欲しい!私はパリで勝った男だと諸君らも知っている筈だ!』
雷鳴の如く響く朗々とした声。地上の太陽の如き圧倒的カリスマ。その声は心に染み入り、あれだけ怒りを滾らせていた群集は静かになっていった。
『『陛下を信じよう!』』『『彼は約束を守る男だ!』』
群集の中から自発的に起こる声。それに伴い人々は夢から覚める様にゼネストを解散させていく。アカ共は必死に止めようとしたが無駄であった。私もまた、太陽の光を避ける蝙蝠の様に、言い知れぬ恥辱と自責の感情の嵐に揉まれその場を逃げた。
実の所、その時までは戦場の興奮はパンの誘惑に屈し雲散しており、戦争の英雄も明日のパンまでは救ってはくれないと、パリでの裁判の後行方の分からなくなっていた陛下に勝手な失望をしていた。だが彼は違った世界を走り回り、残る家財の全てを投げ打って奔走されていたのだ。吾輩が政治の世界に飛び込んだのはその直ぐ後であった…後略」 我が闘争 上巻 双頭の鷲より
さて、総統になる筈だった男はこう書いているが、現実はもっとカオスで泥臭くあった。パリでの休戦協定と一応の戦勝国による吊るし上げ裁判を、二枚舌紅茶狂いも目を回すチートで乗り切ったビリー事、市民ヴィルヘルム二世は種銭抱えて世界各地を奔走し、ドイツ政界に殴り込みをかける準備をしていたのだ。
第一の目標はアメリカ、次いで太平洋を越えた先の日本帝国。ビリーは大戦景気でウハウハしている奴らから搾り取る心算であった。此処で役立つの何時ものチートである。戦場チートも株と相場の世界では大変役立ったが、強力な内政系(強奪系)も彼は持っていた。細々と言ったなあれは嘘だ。
「禿が来た!」貴方の口先が金主の財布から幾らでも金を絞り出す。背後からの短剣要注意。
「借金てのはな!莫大になればなるほど借りてる奴が強いんだよ!」
「あれ?この人親族だったけ?」金融と言う富の源泉を牛耳る家から好意を得られ金をせびれる。
「ロスちゃん?俺俺!俺だけど金貸して!」
「マンサ氏猫大好き」 交易ネットワークに無条件乱入可。混乱「は」引き起こします。
「マンサって名前じゃなくて王って意味だかんな?所で金いる?」
「宝貝に見合った報酬」 貴方は「不正」蓄財の天才です。粛清とクーデターに気を付けて。
「国家予算を超えたのは不味かったかぁ」
君主が持っていたら駄目な奴ばかりであるが、ともかく強力であることには間違いない。これらを携えビリーは新大陸に上陸。そのまま西進を続け新興国と長年のお得意様を強襲し、終戦でダブついた船団に食い物乗せてドイツに戻ってきた。勿論種は撒いてである。
これをドイツ政界が歓迎したかと言えばしていなかった。足元も覚束ない上、軍の権威もズタボロで史実以上にアカが暴走しているのだ。だがそこは最早、ドイツを好き放題にすると決めたビリーである。ヴァイマル共和政府に「ほ~ん。そんな事いってええんか?ワイは金持ってるで?あ~あ~、国庫に寄付しようと思うとったのにな~。ワイも政治に参画したかったな~」
と脅しつけ、政府特別顧問兼地方巡察員と言う胡乱なフリーハンド役職を獲得。、水戸の黄門かカール大帝の様に地方政治にちょっかいをかけ始めたのである。そして集まる私兵私兵。あっ!これローマ政治で見た奴だ!
チョビ髭は感動的に書いているが、ゼネストを止めたのは老親衛隊&イエニチェリと言う最悪の組み合わせの有無を言わさぬ威圧と、登壇したビリーを止めようと飛び掛かってくる共産党員を千切っては投げするビリーの個人戦闘力に群集が恐れをなしたからだ。勿論、群衆から出た声はサクラである。
チョビ髭が感情の嵐に襲われたのはこの部分だ。暴力と弁舌とペテンで鮮やかに場を治めた元皇帝に畏怖と共に自分の目指す道を見つけちゃったのだ。
「吾輩もああなりたい!英雄になりたい!超人になりたい!」
これはビリー大チョンボである。だが歴戦の鬼畜軍団を身に宿すビリーの鷹の眼は確かに、震えながら逃げる痩せぎすの髭を見逃さなかった。
「…チョビ髭君見~つけた」




