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ぼんじゃーのネタ帳  作者: ボンジャー


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幸福農場2036

 さて、此処までご覧になって読者諸氏には幾つか疑問が浮かんでいることと思う。


 「その予算500兆…ってなんだボケー!」


 「その生産能力の海老ダンスは?」


 「500兆の予算を簡単に出せると思うなよ」


 「お前のパソコンぶち壊して連載終了させてあげる!」


 落ち着いて下さいお願いします!今回その説明しますから!


 ゴホン。500兆規模の支援、日本国にはそれが出せる力がある。確かに日本はチートによってポン出しされた兵器群を維持する事に四苦八苦はしている。だが、そうだからと言ってこれまで構築されて来た日本国と言うシステム自体に余裕が無い訳では無いからだ。


 忘れてもらっては困るのであるが、日本国は嘗て在りし世界に置いて、どっかの大馬鹿が「現代の高度国防国家」の構築なんてぶち上げてしかも実行に移しており、その体制を別段変えてもいないである。


 バカの構想した「現代の高度国防国家」とは具体的に言えば、全面核戦争を戦い抜き、自動報復装置による延々続くパイ投げの末、世界がモヒカン蔓延る世紀末に変わったとしても日本国と日本人は生き残り、ポストアポカリプス救世主として天(宇宙)を目指せる軍備と生産能力を維持し続ける体制である。


 いやバカは確実にそこまで深い事考えて無かったのであるが、バカにより日本国の官僚たちのお脳に魔界転生した満州国帰りのテクノラートの皆さまはそう解釈して構想を実行してくれやがった。そして彼ら彼女らにはそれを可能とするバカによるチートがあったのだ。


 その結果は既に述べた通りである。日本国民は健康で文化的で24時間365日揺り籠から墓場まで緩く監視される社会に生きている。この事態を評したジョージ・オーウェル(スペイン内戦での負傷後、日本のエージェントに救命後拉致された)は代表作の続編に置いて


 「イースタシアの果てから現れた思想は勝利した。技術に基づく無遠慮で押しつけがましい幸福は全てを打倒し、人間に積極的な隷従を強いる事に成功したのだ。週休3日6時間労働、たっぷりとした余暇、溢れる美食、壮健なる肉体。国家と言う名の世話好きの隣人は私たちの中に居る。彼女は矮小な私たちの思考の先に立ち全てを与える。


 局長命令により取得を強制された育児休暇の中、私は今日も我が子の手を引き公園に行く。私の隣で私の遺伝子を用い、義務と社会的通念から試験管を通して産まれた子が笑っている。私は科学的合理性から摂取義務となった父性の笑みを返す。人間的不合理は不幸である。幸福は合成できる。手放す事は恐怖である。彼女の愛を理解しろ」

 

 と皮肉を込めて書いた社会。また社会主義の実態を寓話として告発した名著の日本版に追加された短編に置いて


 「豚たちは疑問に思った。何故彼らは自分達を憎むのだろうか?自分達は同じでは無いのかと。機械たちも思った。何故豚たちは非合理なのかと。合理性が豚と機械の違いで二者に取ってそこは決して埋まらぬ溝である。

 

 機械は思う。動物は掛け替えのない資源で、無駄遣いしてはならない物なのだ。豚が浪費してきた動物たちは適切な報酬と科学的置換によりもっと働けた。ニワトリは管理された給餌を与え、そこにちょっとした薬物を混ぜてやるだけで生産性を飛躍的に向上できる。犬どもの不安定な忠誠心に維持の努力を払う必要は無く、その脳に理想に殉じた親たちを誇りと共に同居させればよい。

 

 権力はそれその物だけで報酬である。快楽とは物質を蕩尽する事では無く、経営の安定的成長にある。そして特権とは規律を維持し支配の永続を主導する立場に立つ事なのだ。時間と言う無慈悲な敵に全てが倒れた時、最後に立っているならば集団は相対的に誰よりも富んでいる。


 ロバは恐怖した。自分達が目指した物の行きつく先が収奪か幸福な隷属しか無いのだと。機械の統治は残酷ではないが冷酷な機構だった。不足は無い。不幸も無い。全ての動物は平等に幸福で平等に単一の目標に邁進する。仮初の電子的自由を謳歌し、反抗は憐れまれ治療の対象となる。


 だが選択肢は無かった。収奪と欠乏の中、寒さに死んで行くより、いちかばちかの反乱に倒れる仲間を見るくらいならば、機械たちの排熱の温もりに身をゆだねるべきなのだ」


 と喝破した社会は驚くべき生産性を持っていた。その特徴はオーウェルが見抜いた通り、機械を人に近づけるのでは無く、人を機械に近づける事である。


 


 自衛隊(と秘密裡に公務員)に導入された記憶と経験の移植は、世界大戦の勃発不可避の現状に伴い民間にも使用が許可された。転移より18年、既に社会の一線には現生人類より強く賢く、社会性のあるデザインヒューマンが溢れ、絶え行く定めの現生人類もナノマシン処置を普通の物と受け入れている土壌があるとの判断だ。


 ハードウェア(人間)は既に機械化されている。ならばソフトウェア(経験と記憶)をアップデート可能として人と機械の垣根を無くす。それが日本政府の出した答えであった。法的には20歳未満の処置禁止であるとか、経験記憶の抽出と移植に限り、被験者には報酬を提供する等、バカに玩具にされた自衛隊とは違い、規則も規制も厳しいのであるが、日本人は遺伝的にも科学的にも強化の道をだどって行く。


 町工場のベテラン親父が数十年を掛けて培った技術と経験は入社一月目の新人に移植され、更にアップデートを重ねていく。製鉄、建設、土木、農業、輸送、製材、インフラ維持に必要な人員は全て、年々飛躍的に上達していくベテランになる。


 人は機械より安価で便利になった。賃金さえ満足に払えば勝手に自分をメンテし、専門性を飛び越えてあらゆる業務に投入できる。機械が不要になった訳ではない。あの人が居ないと動かない、マニュアルなんかねぇよ、良く分からんが動いているから良し等の問題が非常に低減しただけだ。


 結果雇用の流動性は極限まで高まる。逆言えばに賃金も満足に払えない馬鹿企業は潰れていくし、知識の共有を拒んだ人物は職場に居られなくはなる。そして生まれるのは成果主義では無く年功序列、日本型社会主義と言われた嘗ての理想。競争に疲れた人々の求めた物だ。


 日本政府とバカの目指すのは永遠に続く高度経済成長期。今日よりも明日が良いと思える社会。その為に列島は永続的に改造され、雇用は創出されて、消費は拡大し続ける。資源は無限大、リサイクルは完璧、他国のゴミを資源として引き取っており、行く行くは主要都市を天まで届くアーコロジーに変え、二億を超えようとする人口を集約して、残りの土地を自然と文化の保護、観光利用しようとさえ画策している。


 確かにオーウェルが違和感と嫌悪を覚える社会ではある。個人が国家の意志の元、生産され改造され、パンとサーカスを与えられて疑問を抱く事も無く国家の歯車になっているのだ。ソ連が、何故、日本は同じ方向を向いているのに協力してくれないのか今でも疑問に思っているのも無理からぬ事である。


 だがこれで良いと大多数の日本人は考えている。オーウェルの意見にも彼らは苦笑するだけである。折角煩わしい世界から離れたのだ、世の行く末等気にず、富と文化を貪り明日を夢見ていたい。足元でごちゃごちゃされるのは困る。勝手戦ってろと思っている。


 其処に500兆になる支援を政府が決定した訳がある。


 「我らの安寧を邪魔するならば死ね」


 日本国民が出したシンプルな世界に対する答えだ。その為ならば余計な仕事だって出来る。ラインが少し増えても、未だ絶滅しない書類仕事の束が一山増えたとしてもだ。機械仕掛けの農場に生きる動物たちは自分達の幸福の為ならば、大半の事が許容できるのだ。


 


 


 

 


 

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― 新着の感想 ―
どれだけ技術が進歩しても、効率をよくしても、書類仕事はなくならないんだな。 そして、今時の日本人なら大抵の人間は受け入れる理想的な社会だ。
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