強き乙女達と弱き男達
「凄い勢いでやって来たから、何か問題でもあったのかと思ったぞランド。一体何を慌ててたんだ?」
「ちょ…ちょっと予定より戻るのが遅くなってしまってな。別に早急な用事があるとかじゃ無いんだが、やはり予定とズレると少しモヤモヤするというかな///」
お昼を少し過ぎたかという時間帯…ガンドラへと入るの門の前でランドは、「完全フル装備状態」の門番隊長エステルの質問に…申し訳なさそうにしながら返答する。
「なら良いけど、お前とガーネット程の二人が慌てたように戻って来たら…この街の奴等は「なんかヤバい化け物でも現れたのか!?」と不安になるから、本当に緊急でない限りはなるべく落ち着いて戻ってきてくれないか。昼休み中にルークから…」
『た…隊長!ランドさんとガーネットさんが門に向かって馬に乗って走って来てるのを確認したんですが、何かに追われてるのか凄い勢いで向かって来てます。どうしましょう!?』
「って半泣きで報告される身にもなってくれ。思わず冒険者時代の装備を引っ張り出して構えてしまったじゃないか…」
「す…すまないエステル…」
「本当に手間を掛けた…」
エステルの愚痴に二人がそう言って謝罪すると、エステルは「まぁ杞憂に終わったなら何よりだけどさ…」と返した。
「ルークも悪かったな、まさか急いで馬を走らせただけでそんな風に受け止められるとは思わなくて…」
「本当に申し訳ない…」
ランドとガーネットはエステルの横にいるルークにもそう言って謝罪をすると、ルークは「そんな…俺が慌てただけですから謝らないでください!」と恐縮する。
「先日の戦争からまだちょっと緊張が抜けきらなくて、ランドさんやガーネットさん程の人があんな表情をしてて、それに驚いちゃった俺が悪いんです。特にガーネットさんが望遠鏡で見た時に、少し苦しそうな顔をしてらっしゃったので、もしかして負傷でもされたんじゃないかと思いまして!」
「…っ/////」カァァァァァァァ…
「……/////」ポリポリ…
ルークの言葉にガーネットは顔を赤くし、ランドは明後日の方向を向いて頬を掻く…
「い…いや大丈夫だ、特に怪我とかはしていないからな。さっきランドが言ったように、ちょっと予定が遅れて焦っただけだから(流石に昨晩の余韻で馬の振動がどうこうとは言えないな///……まぁ少し血が出たといえば出たんだけど///)」
「ほ…ほら…ガーネットは元は近衛騎士だったからな、規則正しい生活が染み付いてるからか…予定がズレると気になるらしくてな///」
「成る程そうでしたか、そういった実直な性格だからこそ…ランドさんやガーネットさんはそれ程の実力を持たれたんですね♪」
「「ま…まぁな///」」
「流石ですねぇ♪」
ルークが二人の言葉にそんな感想を述べる横でエステルは、元はSランク冒険者だったことで培った判断力から…
(さっきの二人の様子を見るに、きっと本当の理由は別なんだろうね。ガーネットのあの様子から推察すると…)チラッ…
「そういった真面目なところが強さの秘訣ですか?」
「い…いやぁ…俺の場合は親父とお袋のシゴキが凄かったからかなぁ…」
「叩き上げってやつですね、ガーネットさんも近衛騎士としての誇りとかもあってか、きっと凄く誠実に鍛錬されたんでしょうね♪」
「そ…そうだな、私も父が騎士だったから幼少からその辺を父に叩き込まれてたな…///」モジモジ…チラチラ…
ルークに相槌を打つ二人の様子…特にガーネットが普段よりも少し落ち着きなく身体を揺らしながら、ランドに時折視線を向けていることに気が付いた。
エステルもランド程でなくとも、王都では指折りの実力者だ。そんな彼女はガーネットの様子から自身の鍛え上げた洞察力をもってなんとなく察した。
(……成る程ね、きっとガーネットはランドと外にいる時に……って事か///)
エステルは内心でそう呟くと…
(となれば同じ女性としては、あまりここで留まらせるのは気の毒だね♪)
そう結論づけてランドとガーネットに声をかける。
「ほらほらルーク、雑談はそこまてにしておけ。ランドとガーネットもお疲れさん、問題ないならそのまま入って大丈夫だぞ♪」
「あっすいません隊長、それではお二人ともどうぞお通りください」
「あぁすまないなルーク///」
「それじゃあ私達はこれで///」
エステルの言葉にルークは二人にそう告げ、ランドとガーネットもそれに返すように返事をすると門を潜る。
「じゃあルーク、私も装備を直して来るから少しここを頼むぞ」
「わかりましたエステル隊長、お手間をおかけしました」
「気にするな、何かあってからじゃ遅いからな♪」
エステルはルークにそう告げると、ランドとガーネットに並んで中へと向かった。
エステルはそのまま二人を街からの門の前まで送ると、ランドとガーネットに声をかける。
「じゃあ二人ともまたな…ガーネット、もし機会があれば一つ私とも手合わせしてくれ。ランドもまたファルちゃんやガレリアさんと会った時は、私がよろしく言っていたと伝えてくれ♪」
エステルの言葉にランドとガーネットは「あぁまた」と返すと歩き出すが…
そんなランドとガーネットに、エステルは「あぁそうだそうだガーネット…」と声をかける。
「ん?」クルッ…
ガーネットがエステルの声に反応して振り向くとエステルは…
「ランドの徒手空拳(意味深)は凄かったか、今日はゆっくり身体を休めることだね♪」ニヤニヤ…
とても楽しそうにガーネットにそう声をかけた。
「なっ…なななっ…何故そんな事を///////」カァァァァァァァ…!
エステルからのとんでもないぶっ込みに、ガーネットは顔を真っ赤にして慌てる。
「これでも元はそれなりの冒険者だったからね、アンタのさっきの表情や仕草を見てりゃなんとなく察せるさ。ランドをチラチラ見ながらモジモジしてたら一目瞭然だよ♪」ニヤニヤ…
「うぅっ////」
エステルの言葉にガーネットはぐうの音も出なかった。
「あの…エステル…俺の婚約者をからかうのは止めてくれないかな…」
見かねたランドがそうエステルに声をかけると、エステルは「わかってるよ♪」と笑う。
「元近衛騎士さんがあまりにも乙女な反応をするもんだからね、ちょっと反応を見たかっただけさ♪」
そう言うとエステルは二人に背を向けると…
「それじゃあ私も業務に戻るからね。二人とも疲れはしっかり癒やしときなよぉ〜♪」スタスタ…
そう言い残して門の内部へと戻っていった。
エステルを見送ったランドとガーネットは、暫しの間エステルが去った門の方を眺めていたが…
「と…とりあえずは借りていた馬を返しに行くとしよう。その後飯店まで送っていくよガーネット///」
「そ…そうだな、流石に私も日を跨ぐ外出で疲れたしな。ランドに送ってもらったら今日はゆっくり休むとするよ///」
そう言うと二人はそのまま街の中へと進んでいき、馬を返却してから鷹飯店へと向かうのだった。
…
………
「それじゃあランド、この数日ありがとう///」
鷹飯店の前までやって来たガーネットは、ここまで送ってくれたランドにそう言葉にする。
「あぁまたなガーネット、今日はゆっくり休んでくれ」
「ふふ…そうさせて貰うとしよう。………なにせ昨日はとても身体を使ったからな///」
「そ…そういう事をここで言うなって///」
「ふふ冗談だ、疲れはしたがそれ以上に幸せなひと時だった。それじゃあなランド///」
「あぁ///」
ガーネットの言葉にランドがそう返すと、ガーネットは飯店の中へと入っていった。
ランドはガーネットが飯店に入るのを見届けると、自分も自宅に戻るかと歩き出す。
「とりあえずは俺も流石に疲れた、途中で出来合いの惣菜でも買って帰るとするか。それを冷蔵庫に仕舞ってから風呂でも入って、少し休んでから食べるとしよう」
そう独り言を呟きながら、ランドは一人街の中へと溶け込んでいった。
― ― ―
一方、飯店の中に入ったガーネットの方は…
「良い数日だった、トラッシュのご両親とも話が出来たし…そしてランドにもあんなに色々と…「色々となんですか?」…そりゃもう恥ずかしくとも気持ち良くランドに沢山………へ?」
この数日の思い出を独り言の様に呟き、途中から聞こえたセリフに返答している途中で我に返る。
ガーネットが聞こえてきた声のした方向に顔を向けるとそこには…
「ガーネットさん、この数日でランドさんと何があったんですか♪」ニコニコ
「私もとても気になります♪」ニコニコ
「俺もちょっと聞いてみたいな♪」ニコニコ
「兄さんからアンタが数日留守にするとは聞いたけど、とても楽しかったみたいね♪」ニコニコ
「ズルいぞガーネット、ランドと三日も二人きりだったなんて。私もまたランドと依頼で一緒に外に行きたいぞ♪」ニコニコ
とってもいい笑顔で出迎えるシシリア、ノエル、マーセル、シャオ、リディアが居た。
ガーネットはそんな五人を視界に入れると「え…えっと…た…ただいま?」ととりあえず挨拶する。
「「おかえり《なさい》♪」」
シシリア達はガーネットの挨拶に笑顔でそう返すと…
「「それでガーネットさん、ランドさんが沢山なんですって?」」ニコニコ
再度ガーネットに同じ質問を投げかける。
「えっ…え〜と…その…そ…そうだうっかりしてた。ランドに貰った狼煙をアレックスさんに在庫があるか聞きに行かないと!」クルッ…
そう言って踵を返して店を出ようとしたが…
「「まぁまぁまぁまぁ♪」」ガシッ!
直ぐにシシリア達に肩を掴まれた。
「そんな緊急なことではないでしょう、少しお話しましょうよ♪」ニコニコ
「「そうそう♪」」ウンウン
「ひうっ…」ヒクヒク…
ガーネットは自分にそう語りかけるシシリアの笑顔とそんなシシリアに同意するノエル達の笑顔に、何かを感じて眉を顰める。
ガーネットはどうにか話を逸らそうと「と…ところで…」とシシリア達に言葉を投げる。
「シシリア達はどうして飯店に集まってるんだ?」
ガーネットのその質問に、何人かが順番に「それはですね♪」と説明する。
「私がランドさんに頼まれている「指輪」についてなんですけど、皆さんの指のサイズとかなにか希望されるデザインはあるのかなと思いまして…とりあえず今ガンドラにいる人達の分だけでも確認しようと思ったんですよ♪」
「それでノエルさんが冒険者ギルドに私を訪ねて来られたんです、私は今日は残ってる休暇消費の為に、偶々半休でお昼で仕事終わりだったので…それならお昼を食べるついでにシャオさん達も一緒にとノエルさんに提案しまして♪」
「その途中で私も声かけられて同行して…♪」
「三人が来たから私とリディアも話に参加して…」
「シャオからガーネットがランドと日跨ぎで外出してる事を聞いていたら、丁度お前が帰ってきて今に至るわけだ♪」
「「とゆーわけで皆で話しをしよう♪」」ニッコリ
「へ…へぇ(そりゃいずれは話すつもりだったけど、まさか戻って早々になるとは///)」
笑顔でそう言葉にするシシリア達に、ガーネットが戸惑っていたその時…
ガチャ…
「少し遅い昼飯になってしまったな、お前達…折角来たんだから今日はここで昼を食べようか♪」
「わかりましたガレリア様♪」
「私も先日の交易で来ましたが、ここの料理は美味しいですからね♪」
タイミングが良いのか悪いのか、久しぶりに交易で訪れた人虎族の長ガレリアとその部下二人が来店した。
「ここの肉料理は柔らかくて美味しいからな……ん、シシリア達じゃないか。揃いも揃ってそちらも遅めの昼食か?」
ガレリアがのほほんと店内にいたシシリア達にそう声をかけると…
「「…っ!!」」ギラッ!!
シシリア達はガレリアに一斉に視線を向ける。
ガレリアがシシリア達の視線に「えっ…何だっ!?」と怯むと…
「ついでに確保ーー!!」
「「わぁ〜〜!!」」
シシリアの号令と同時にノエル達がガレリアに突撃した。
「えっ…ちょっ…なんだなんだっ!?」
「ガ…ガレリア様…お下がりくださ…「邪魔をするなっ!!」…ひいっ!?」
困惑するガレリアを守ろうと部下の人虎族の戦士が前に出るが、シシリア達の気迫に怯んで固まる。
「とんで火に入る夏の虫とはこのことですよガレリアさん!」
「まぁ今冬ですけどねシシリアさん…」
「冷静だなノエル…」
「ガレリア…アンタもキビキビ喋りなさい!」
「そうだぞ前から聞きたかったんだ!」
「じゃあ私はこれで…「ガーネット《さん》もよ!」…ひいっ!」
「な…なんだお前等…ワタシに何を…「いいからコッチに来ぉーーい!!」…ちょっ…待って離し…」ズルズルズル…
ガレリアが本気なら、シシリア達を振り切って逃げる事も可能だったろうが…流石のガレリアもシシリア達に怪我をさせるわけにもいかずに連行されていった。
…
………
………………
そしてその日の夕方頃…
チリリーン…!
「ん…こんな時間に誰だろう?」
帰宅して自宅でゆっくりしていたランドは、家の呼び鈴が鳴ったので念の為ラエルソードを手にしたまま…玄関へと向かい扉を開ける。
「はいどなたですか?」ガチャ…
ランドが一応警戒して扉を開けるとそこには…
「よぉランド…」
「突然ですまぬが、今晩はお主の家に泊めてくれぬか?」
「すいませんランドさん、突然でお邪魔してしまいまして…」
少し疲れた顔をしたウード、イゾウ、ジャックスの姿があった。
「そりゃあ別に構わないけど…何かあったのか三人とも?」
ランドがそう尋ねるとウード達は…
「「なんか飯店で女子会するからって追い出された」」
くたびれた様子でランドにそう告げるのだった。
― ― ―
そしてその頃飯店の方では…
「えっ…ランドさんがそんな…///」
「凄いわねガーネット、わ…私なら耐えられない///」
「ガレリアさん…そんなところまでランドさんに…///」
「そ…そういうシシリア達だって///」
「ワ…ワタシはその…ランドにならどこでも…///」
ワーキャー///ワーキャー///
乙女達はこの場に男性がいないので、憚ることなく盛り上がっていた。
そして更に他の場所では…
「そりゃまたなんというか…お前も大変だなヘスティア。まぁ今日はウチに泊まっていけばいいぜ」
「ありがとう御座いますフォルクス様///」
「礼なんて要らねぇよヘスティア、それにまぁあれだ……いずれお前もここで一緒に暮らすんだから…その為の予行練習みてぇなもんだよな///」
「フォルクス様///」
シシリア達の行動の結果、逆に幸せを噛み締めるヘスティアがいた。
― ― ―
そして更に別の場所では…
「この調子でいけば、明日の夜には王国の王都に着くかなぁ〜♪」
「ランドとらぶらぶでぇとなのじゃ♪」
「楽しみですねリルカルト様♪」
「結局姉ちゃん戻ってこなかったなぁ…前とは違う美味しいお菓子とかあるかなぁ〜♪」
「外部からの人間の商人とかがいたら、珍しい化粧品とか見てみたいわねぇ♪」
『ダハハハハ…折角だからこないだ共闘した奴等とも、この機会に手合わせとかしたいもんだな。バルゼルト、リル達をランドに任せたら俺達も街でデートするか♪』
「そりゃあいいねウォード、あの頃には無かった文化を見るのも楽しそうだ。ガリアス達へのお土産も見たいしね、ウズーラ…アンタも人間の文化や技術で気になるものがあれば記録しておくようにな。それと今回は先日のお前の功績による慰安も兼ねているから、あまり根を詰めることなく息抜き出来る時はしっかり息抜きをするんだよ♪」
「お気遣い感謝致しますバルゼルト様、このウズーラ…今回のバルゼルト様達の御心遣いにつり合うべく…今後とも専心誠意お仕えさせていただきます!」
「「今から楽しみです《なのじゃ》♪」」
魔族様御一行がワクワクしながらガンドラへと向かっていた。
リン「ウズーラ…そういやこんな奴いたわねぇ…」
作者「覚えてる読者の方いるんでしょうか?」
リン「にしてもウード達男性陣は大変ね…」
作者「まぁその内彼等にも、本編で良い出来事となる話を書くつもりなのでそれまでは少し我慢していただいて…「ちょっと作者さん!!」…ん?」
アリス「何故ですか、何故私はシシリアさん達のあの「素晴らしい話し合い」に参加していないのですか!!」
作者「いや何故ってそりゃあ…」
アリス「ランドさんがシシリアさん達に行った数々の手練手管…私ならなんだってウェルカムですよ、そんな私があの場に居ることが出来ないなんて…「憤死しますよ?」…へ?」
作者「アリスさんはコチラ(一般年齢用)の時間軸では、まだランドとは肌を重ねていませんからね。向こう(R-18版)にも書いてますがアリスさんとサトラさん、あとラジさんは本編終了後の後日談的な場面でランドとは愛し合ってるんですよ」
アリス「うっ…」
作者「アリスさんがそれでも参加したいと言うなら書きますけど、貴女ランドと致してない状態でシシリアさん達の「体験談」を聞いて耐えられますか。「私とはまだなのに皆さんランドさんとあんな事こんな事」の内容を聞いて憤死しない自信あります?」
アリス「……すいませんでした」




