ランドVS疾風斬撃のハヤテとシンプルな手段
「次はアンタが相手か?」
舞台で体をほぐしていたランドは、次に舞台に上がってきたハヤテにそう声をかける。
「昨日ぶりだな、まさかコンゴウを攻め負かせる人間が居るとは思わなかったぞ」
「こちらとしても…あんな頑丈な人間はそうそう居ないから驚いたよ(セーラ様に制裁されてる時のアルガス陛下以外では…)」
ランドはそう言葉を返しながら、ハヤテの身なりに視線を走らせる。
(ふむ、先程の男は装備の様子から「│重戦士」と予測できたが…この男は随分と軽装だな。どちらかといえば祠の時のイブキのように動き易い装備というか…しいていえば口元を布で隠しているところが違うな)
ランドはそう思案するとハヤテに尋ねる。
「答えられたらで良いんだが、アンタはあれか…イブキと同じ「│忍」というやつなのかな?」
ランドの質問にハヤテは「まぁな…」と隠すことでもないのか言葉を返す。
「まぁ違うとしたら…イブキは「護衛忍」という│主の警護を任された「後衛タイプ」の忍。俺は「前衛タイプ」の忍といったところか」
「へぇ…同じ「忍」でも違いがあるのか」
「あぁ…俺はイブキの様に基本│主の側に居るのではなく…」
ハヤテはそう説明するように口すると…
「素早く敵を無力化するのが仕事だ!」
一瞬でランドとの距離を詰めて攻撃を仕掛けてきた。
(速い!)
ランドはたった今対峙していた筈のハヤテが、瞬時に自分との距離を詰めて武器を振るってきたことに驚きつつも…即座に上半身を後ろに反らして回避した。
「ほぉ…なかなかいい動きをするじゃないか(大した奴だ、様子見とはいえまさか俺の不意打ちに反応するとは…)」
ハヤテはランドの反応に内心で驚きつつもそう口にする。
「驚いた、まさかそんなに素早く動くことが出来るとはな…」
ランドの言葉にハヤテは「素早さは俺の最大の武器だからな」と返す。
「俺はコンゴウほど頑丈じゃないんでな、真っ向からお前さんと殴り合うのは御免だ」
「そう邪険にしないでくれ、当たると結構癖になるかもだぞ?」
「生憎痛みで喜ぶ趣味はない」
ランドの冗談にハヤテはそう返すと、自分の懐に手を入れて…
「これが躱せるか?」
ランドに向かって無数の武器を投げた。
「!?」
ランドはハヤテの投げた物を視界に捉えると最低限の動きで回避していく。
「いい反射神経だ、だがまだまだ残ってるぞ!」
ハヤテはランドに感心するような声をかけつつも、懐からの武器の投擲を続ける。
ランドはハヤテの攻撃を回避しながら反撃のタイミングを伺うが、ハヤテはそんなランドの狙いを読んでいるのかなかなか距離を詰めさせない。
「どうした、逃げてばかりでは俺に攻撃はできないぞ?」
「そう言うなら少し投げるのやめてくれないか?」
「やなこった」
「ですよね…」
ランドはワンチャン「止めてくれない?」と頼んでみるがハヤテは即座に拒否した。
「にしてもあれだな…アンタのその身軽そうな服装の何処にそんなに沢山仕込んでるんだ?」
攻撃を躱しつつランドがそう尋ねるも、ハヤテは「企業秘密だ」と教えてくれない。
「これだけ仕込むんだから、かなり懐が深いと思ったら随分と狭いじゃないか…」
「冗談を言う余裕があるとは大したもんだ…」
ランドの言葉にそう返しながら、ハヤテは「これならどうだ!」とまたもや武器を投げる。
ランドは自分に向かってきた棒状の武器に対して…
(ここに来て一本だけ、ならばこれを弾いてから接近を…)
と頭で思案して腰の太刀を抜き接近していた武器を弾いた。
(これで距離を詰め…って…危なっ!)パシッ…!
ランドが弾いた勢いでそのままいこうとすると、なんと一本目の武器と寸分違わぬ軌道でもう一本迫ってきていた。
ランドは完全に死角となる軌道で迫る武器に一瞬動揺したが、反射的に太刀から片手を離してキャッチした。
「なっ……!?」
ランドの反射神経に投げたハヤテが絶句する。
(バカな…完全なタイミングだったはずだ、あの状態で対応するとは…)
ハヤテは自分の投擲術を正面から防いだランドに驚愕した。
「驚いた…全く同じ軌道で二本目を投げていたとはな。あと少しでも反応が遅れたら危なかった…」
そんなハヤテにランドがそう声をかけると、ハヤテはランドを見つめて口を開く。
「お前さん…本当に何者だ、先日のリンゴを切った技術にコンゴウを押しのけるほどの剛力…そしてこの俺の「二重投げ」に対応できるほどの反射神経。そんな腕前のやつがこの国にいるなんて聞いたことがない、居たらうちのリーダーが黙ってるわけがないからな」
ハヤテの言葉にランドは「何者だと言われても…」と言葉を返す。
「俺はあるお方からランお嬢様の護衛を頼まれたただの冒険者だ。それ以上でもそれ以下でもない」
ランドの答えにハヤテは「ふっ…本当に不思議な奴だ」と笑みを零す。
「今ならコンゴウが最後は防御に徹した意味がわかる。お前の強さは桁違いだ、俺も後に控える二人の為に出来る限りの手を打たせてもらおう…」
そう言うとハヤテは、今度は懐から二本の独特な形をした武器を取り出した。
「へぇ…初めて見る武器だな。なんて武器か聞いてもいいか?」
ランドがハヤテの手にした武器に興味を持ってそう尋ねると、ハヤテは「まぁ特に隠すととでもないか…」と呟くとランドの質問に答えた。
「コイツは│苦無という武器だ。先端に少し重めの刃をつけた道具でな、投げ道具にもなるし短刀のように扱うこともできる。物を木とかに刺し留めたり地面を掘る道具としても使えるぞ」
「なにそれすごく便利」
ハヤテの説明にランドの男心はくすぐられた。
「はは、便利か…化け物みたいな強さをしてると思ったら、少年の様な純粋な気持ちで初めて見る武器に興味を示す…本当にお前さんは変わってるな」
ランドの反応にハヤテは思わず笑ってしまう。
「この街にはブソウの武具屋以外にも幾つか店はある。今回の件が終わってからなら売ってる店を教えてやろうか?」
「それは楽しみだ♪」
「その代わり負けてくれないか?」
「それは無理だ♪」
「だよなぁ…」
ランドとのやり取りに、ハヤテは自分でも意外だったが楽しさを感じていた。
(いかんな…コンゴウの堅実さとヤスツナのアホが感染ったかもしれんな)
ハヤテはそんな風に心の中で思いつつ、二本の苦無を構えた。
「いくぞ…最初の様子見とは違う本気の俺の速度について来れるか?」
「ほぉ…あれより速く動けるとなると、俺も気は抜けないな」
ハヤテの言葉に、ランドも先程までの様子から気配を変えて構える。
「そういえば名乗ってなかったな、昨日ランの嬢ちゃんから名前は聞いてるだろうが…改めて自己紹介しよう」
ハヤテはそう言うとランドに自己紹介をする。
「俺の名はハヤテ、Sランク冒険者パーティー「剣舞の心得」のメンバーにして忍の「疾風斬撃のハヤテ」だ」
「現在はランお嬢様の護衛、普段はCランクソロ冒険者のランドだ。あと余談だが俺の名前はあまり流布しないでくれ」
「ははは、どこまでも面白い奴だ!」
ハヤテはランドの言葉に再度笑うと、顔を真剣に戻す。
「いくぞ!」
そう言うとハヤテは、ランドに向かってこれまでとは比べ物にならない速度で迫り攻撃を始める。
ガッ…ギィン…ギャン…キン…!
「ハヤテが本気を出したぞ!」
「疾風斬撃の本気なんていつぶりだ?」
「俺の記憶なら…ヤスツナがハヤテに模擬戦頼んだ時依頼だな」
「つーことはあの鎧武者、少なくともヤスツナクラスの達人ってことか!?」
「マジで何者なんだよ!」
そんな観客達の越えが聞こえる中、ランドはハヤテの攻撃に対応しながら思案する。
(速いな、確かに先程までと鋭さが別物だ…気持ちが乱れたら狙われるな。こういった速度重視の奴を相手にするのは…あのジャビィとかいう殺人鬼以来だな、)
ランドはハヤテの猛攻に対して、自身が慌てないように心を落ち着かせながら…ハヤテの攻撃を紙一重で太刀で受けて止める。
ハヤテの方も、ランドが自分の速度についてきていることに内心で感心していた。
(なんて奴だ…まさか俺の本気の速度に反応出来る人間がヤスツナ以外にもいるとはな。いや…違うなコイツは俺の速度についてきてるだけじゃない、俺の気配や殺気まで読んで反応してるんだ。これほどの奴がまだいたのか…)
ハヤテはそんな風に心の中で思ったが…
(だが、俺のやることは変わらん!)
そう心の中で叫ぶと、ランドに向かって自身の最高速度で接近し両手の苦無を構えて攻撃を仕掛けた。
ガッキィィィィン!!!
凄まじい金属音がしたかと思うと…数秒後に「カラン…キン…」と二つの金属音が鳴る。
そして対峙した二人の様子を見ると、ランドの抜いた太刀の先端がハヤテの喉元で止まっており、ハヤテの足元には苦無が二本転がっていた。
「ふっ…降参だ。こうも的確に反応されると自信を失うな…」
ハヤテが降参したので、ランドは太刀をハヤテの喉元から引くと鞘に仕舞った。
「少し前に似たような速度重視の奴と戦った事があってな、まぁアンタはソイツよりも癖がなく対応しにくかったぞ」
「そうか…ソイツがどこの誰だか知らんが、俺の方が上なら誇っておこう」
そう言うとハヤテはコンゴウの時のようにランドに手を差し出す。
「完敗だ、上には上がいると感じたのはうちのバカリーダー以来だぜ」
「リーダーをそんな風に言っていいのか?」
「良いんだよ、実際バカだから」
ランド質問にハヤテは笑いながらそう返す。
「まぁ第三者の俺が言うことじゃないか…」
ランドがそう言うとハヤテは「そうだな」と笑うとランドに声をかける。
「ところでアンタ、普段はソロ冒険者と言ってたが…どの辺で活動してるんだ?」
ハヤテがそう尋ねると、ランドは「企業秘密だ」と返した。
「これはやられたぜ」
ランドの解答にハヤテは笑いつつ、ランドの耳元で囁いた。
「ならせめてこの国の人間かくらい教えてくれよ、じゃないとうちのリーダーが今日以外にもアンタと「勝負がしたい」と駄々こねるかもしれねぇからよ。勿論うちのメンバー以外には言わねぇからよ、国内を無駄に歩き回るのも面倒なんだよ」ボソッ
「アンタ…あの男に相当苦労かけられてるんだな…」ボソッ
「アイツは戦闘バカだからな…」ボソッ
ハヤテの言葉にランドは…
(まぁそれくらいならいいか…この男は嘘をつきそうにないし。この国を出てからなら特に問題もないし)
と判断するとボソリと答える。
「詳細は言えないが、とりあえず普段はこの国では活動してないな」ボソッ
「ありがとよ、礼に一つ教えてやるぜ…」ボソッ
「?」
「最初のお前の質問、俺がどこにあんなに武器を仕込んでただが…」ボソッ
「おおっ…教えてくれるのか?」ボソッ
「服の裏地に小型の「マジックバッグ」を縫い付けてるんだよ♪」ボソッ
「わりと普通の手段だった!?」
ハヤテからの種明かしにランドは呆気にとられる。
そんなランドにハヤテは笑いながら言葉を続ける。
「途中の棒手裏剣と同じだ、シンプルな方が逆に見破られにくいんだよ♪」
「なるほどなぁ、にしても服の裏地にマジックバッグか…今後知り合いに聞いてみよう」
ランドは改めて…他国の文化や考え方というものを実感したのだった。
― ― ―
その頃、グラン王国王都のノエルとアレックスの工房では…
「へぇ…ペンドラ達暫く王都から離れるの?」
「あぁ…ちょっと遠出の商隊の護衛を受けることになってな」
「他にも数組のパーティーが行くんだけどね、それぞれ交代での護衛になるから」
「まぁ時間はかかるが、その分実入りも大きいからな」
「というわけで行く前にメンテナンスをお願いね」
「わかった、明日までにはしておくね」
「まぁお主達なら無茶はせんじゃろが、くれぐれも気を付けての」
「「はい」」
ノエルとアレックスとゼル達「冒険を楽しむ者たち《エンジョイアドベンチャーズ》」がそんな会話をしていた。
「しかし残念だな、ランドがいたら同行を頼んだのによ」
「シシリアが言ってたけど、なんか特別な依頼を受けてるんだって。ランドがいたら危険も無いしマジックバッグ有るから荷物も楽だったのにぃ〜」
ゼルとペンドラの言葉に、メンバーのガイルとリンは「お前ら《アンタら》なぁ《ねぇ》…」と呆れた声を出す。
「夫婦揃ってランドをなんだと思ってやがる…」
「ランドは友達で便利な道具じゃないのよ」
「冗談だよ冗談♪」
「本気にしないでよぉ〜♪」
「「ったく…」」
そんな四人の会話を見てノエルも…
「アハハ、確かにランドさんがいたら安心感は凄いもんね」
と笑った。
「というか、ランドの坊主がおって危険なことなど有るんかのぅ…」
「「無さそう…」」
アレックスの言葉に五人はそう答える。
「まぁランドの強さはともかくとして、マジックバックはいつか欲しいわよねぇ…」
「まぁそりゃあな…」
「でも管理大変だよな何より値段が…」
「そうよねぇ、安いやつは大して容量もないし…」
そんな会話をしてると、不意にペンドラが「あっそうだ!」と口にする。
「ねぇねぇアレックスさん、服のポケットをマジックバッグとかにできないかな?」
「服のポケットをマジックバッグにじゃと?」
ペンドラの言葉にアレックスはそう聞き返す。
「そうそう、そしたらとても便利じゃない。普段の服がマジックバッグにもなって一石二鳥♪」
そんなペンドラの発言に、アレックスは「あのなペンドラ…」と呆れた声を出す。
「仮にそんな物を作ったとしてじゃな、その服が破れたりしたらどうするんじゃ。お主たちみたいな戦闘を生業とした職業は服の損傷なんぞ日常茶飯事じゃろが?」
「あ…」
アレックスのツッコミにペンドラはハッとする。
「普通のマジックバッグならそれ自身が独立しとるから、服装を変えても持ち歩けるが…お主は自分の服全部にマジックバッグのポケットを付けるのか。そんな服何着も揃えるとなると数百万から最悪数千万グランかかるぞ?」
「あぅ…」
アレックスのツッコミにペンドラは黙った。
アレックスは更に「それにのペンドラ…」と言葉を続ける。
「仮にポケットをマジックバッグにしたとして、どうやってそこから荷物を取り出すのじゃ?」
「どうやってって、そりゃあ手を突っ込んで…」
ペンドラがそう返すとアレックスは「あのなペンドラ…」と言葉を投げる。
「なんらかの理由でお主の手が使えないとしてじゃな、そんな時に荷物を使いたいとなったらリンはともかく、ゼルやガイルがお主の服の中に手を突っ込むこともあるんじゃぞ…お主それ解っとるか?」
「あっ…///」
アレックスからの更なるツッコミにペンドラはハッとする。
「実際はマジックバッグから荷物を取っとるとしてもじゃ、端から見たら男が往来で女の服の中に手を突っ込んで弄っとるようにしかみえんぞ?」
「間違いなく衛兵案件よね…」
「聖職者としてはあらぬ誤解で捕まるのは勘弁だな…」
「駄目だ駄目だ、ペンドラの慎ましい胸元に手を入れていいのは俺だけ…ほげっ!」
「黙らっしゃい馬鹿旦那///」
「「夫婦揃って馬鹿だ…」」
そんな会話をしている四人を見ていたノエルは…
(ふ…服の中に手を…もしそんな服を着てランドさんと…二人だったら…///)
〜ノエルの妄想〜
ランド(妄想)「ノエル…あの道具はどこに仕舞ったかな?」
自分(妄想)「あ…それなら私のポケットに…」
ランド(妄想)「そうか…ここかな…」ゴソゴソ…フニッ…
自分(妄想)「ラ…ランドさんそこはマジックバッグのポケットじゃ…あんっ///」
ランド(妄想)「そうだっけ…でもなにか硬いものが入ってるような…」フニフニ…
自分(妄想)「やっ…だめです…そんな…///」
ランド(妄想)「あぁごめんごめん…ここだったかな…?」ゴソゴソ…クチャ…
自分(妄想)「そ…そこもちが…んっ///」フルフル…
ランド(妄想)「うーん、どこかわからないな。ノエル…こっちで一度しっかりと中の確認をしようか?」
自分(妄想)「は…はい…///」
〜ノエルの妄想終わり〜
(とかなったり…って私何考えてるのよ///)ブンブン…!
ノエルは我に帰ると頭を激しく振った。
「どうしたのノエル?」
そんなノエルにペンドラが声をかけるとノエルは…
「な…なんでもないよ、とりあえず明日までにはメンテナンスしておくから。明日の夕方にでもまた取りに来てね///」
「え、うんわかったわ…?」
親友の様子にペンドラは首を傾げたが、特にそれ以上は何も言わなかった。
一方、そんなノエルを見ていたリンは…
(またなんか変な妄想でもしてたのねノエルは…やれやれ…)
となんとなくは察したが友人の名誉のために何も言わなかった。
ノエル「////////」ゴッゴッゴッ
作者「痛っ…痛っ…ちょっとノエルさん鍛冶用の金槌で殴らないでくださいよ」
リン「いや、なんで金槌で殴られてるのに平気なのよ…」
ノエル「な…なんて事を想像させるんですか。ラ…ランドさんが私の身体を弄るとか…中を確認するとかそんな…///」
作者「お好きなくせに♪」
リン「ムッツリの癖に♪」
ノエル「やめてぇぇぇ///」




