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マイペースな冒険者は今日も受付嬢に怒られる  作者: のんびり生きていきたいおっさん


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焦るバカ親子とランドの噂

「凄ぇぞあの鎧武者、一人ずつとはいえ連戦でSランクに勝ちやがった!」


「とんでもねぇ強さだ!」


「一体何者だってんだ!?」


コンゴウに続いてハヤテまで下したランドの強さに、観客達は驚きを隠せないでいた。


そんな中、ハヤテは舞台から降りるとヤスツナに声をかける。


「悪いヤスツナ、もう少し奴を消耗させたかったが…」


「気にすんなよ、久しぶりにお前の本気を見れて楽しかったぜ♪」


「ふ…お前にとっちゃ些細なことか」


「別に負けたからって死ぬわけじゃね―んだ、人生生きてりゃ色々あるしな♪」


「言葉の所々に喜びが隠せてね―ぞ?」


「そりゃあオメェよ…」


ハヤテの言葉にヤスツナは、特に誤魔化すような事をせずに笑う。


「あんな強い奴とこれかられると思うと楽しみで仕方ねーよ♪」


「どっちの味方だよお前は…」


ハヤテは正直過ぎるヤスツナに少し呆れつつも「まぁお前らしいか…」と言うとヤスツナに伝える。


「とりあえず俺はタマモを呼んでくる。それまで大人しくここで待ってろよ?」


「わかったよ、早くアイツとやりたいけど我慢するって♪」


「本当だろうな、破ったら俺もコンゴウも絶交するからな?」


「念を押すなよ…俺だって我慢くらい出来るよ…」


「なら良いが……」


ヤスツナの言葉にハヤテはそう返すと、タマモとコンゴウのところへ向かうことにした。


「待ってるぜ〜♪」


そう言って自分を見送るヤスツナに、ハヤテは「やれやれ…」という顔をしながらボソリと呟いた。


「タマモも苦労するな…好きになった奴がいつまでも子供みたいだとよ…」


そんな言葉を呟きながら、ハヤテはコンゴウ達が居るであろう医務スペースへと向かうのだった。


― ― ―


その頃、自分達で設置したスペースで寛いでいたブソウとワガマの親子は…


「ふっ…なにやら先程から舞台の方は盛り上がっているようだな」クイッ…


「そうですね、きっとボク達の雇った彼等が…あの生意気な鎧武者を痛めつけるのでしょう」ファサ…


「だろうな、確実に勝つ為に一人ずつ戦わせて奴を疲弊させる策を講じたが…彼等はこの国でもトップクラスのSランクパーティー。一人でも充分だったのかもな」クイッ…


そんな会話をしながら親子は「アッハッハッハ」と笑う。


「フンッ…ツバキもあの娘も生意気なのだ。大人しく俺がこの街で最大の影響力を持つことを見ていればいいものを…」クイッ…


「全くですねお父様、そうすればボクも一度くらいはあの貧相な身体で遊んでやっても良かったのに…」ファサ…


親子がそんな反吐が出る会話をしているとそこに…


「だ…旦那様、それに坊っちゃん報告があります!」


部下の一人がそんな声を上げながら血相を変えてやって来た。


「何事だ?」クイッ…


「どうした?」ファサ…


親子がそう返すと部下の男は「は…はい…今舞台で行われている「剣舞の心得」とツバキの娘の護衛との勝負ですが…」と話し始める。


「おぉ…もう決着がついたのか?」クイッ…


「思ったよりも早かったな」ファサ…


親子は部下の言葉で、自分達の勝利が確定したと疑うことなく笑みを浮かべる。


「フン…所詮はどこの馬の骨かも解らぬ田舎武者か…」クイッ…


「ボク達に盾突いたのがあの鎧野郎の失敗でしたね」ファサ…


二人がそう言って更に深い笑みを浮かべると、部下の男は「そ…それが…」と言葉を続ける。


「なんだどうした?」クイッ…


「なにを焦っている?」ファサ…


二人が部下にそう尋ねると部下の男は…


「今現在、あの鎧武者に「不動明王のコンゴウ」は素手で叩きのめされ降参…「疾風斬撃のハヤテ」も動きを見切られて降参しました…」


「「なんだとぉ!?」」クイッ…ファサ…


部下からの報告に親子は驚の声を上げる。


「バカな…奴等はこのヤマット皇国でもトップクラスの冒険者パーティーだぞ。この国で奴等に勝てるものなぞいるはずが無い!」クイッ…


「そ…そうだぞ、何かの間違いじゃないのか!」ファサ…


「で…ですが実際に二人は敗れました、あの鎧武者とんでもない強さです!」


部下の言葉に親子は「ぐぬぬぬ…」と歯ぎしりする。


「な…なにか裏があるはずだ、ワガマ…お前は「剣舞の心得」のところへ行って問い詰めてこい。もし奴等がツバキの娘とあの鎧武者と共謀してたら報酬は払わないと脅せ、俺は舞台の方へと向かう!」クイッ…


「わ…解りましたお父様、すぐに向かいます」ファサ…


「クソッ…やはり妥協なぞせず噂で聞いた「ランド」とか言う者を見つけ出すべきだったか!」クイッ…


親子はそう言うとそれぞれ動き出した。


― ― ―

その頃、ランとイブキそして双子はというと…


「しっかし…わかってはいたけどランドはんやっぱり強いなぁ。ウチにはあのハヤテはんの動き全然見えへんかったわ、イブキは見えたん?」


「辛うじて…といったところでしょうか、ですが全てを捉えて反応するのは無理です。私ではランドさんのように対応して戦うのは無理ですかね…」


「お兄さん本当に凄いのです」


「力も強くて動きも速い、無敵の鎧武者なのです」


「「そして顔もかっこよかったのです」」


「せやね、ランドはんは格好ええよなぁ」


(私はイゾウ先輩のような渋い殿方が好みです)


そう言って四人で盛り上がっていると、そこに声をかけてくるものがいた。


「やれやれ、人混みのせいでなかなか近付けなかった。モミジ、スミレ勝手に離れたらダメじゃないか」


「探してたらいきなりあの鎧武者さんに肩車されて舞台にいるんだもの、驚いたわよ」


その声に四人が振り向くと、そこにはモミジとスミレの両親が立っていた。


「お父様」


「お母様」


「あ、ソーシャはんにカナデはんこんにちは」


「ご無沙汰しております」


双子の両親にランとイブキが挨拶すると、ソーシャとカナデも「こんにちは」と挨拶を返す。


「お二人共、娘達を見ていてくださってありがとうございます。ご迷惑をおかけはしなかったですか?」


「気にせんといて、なんも問題なかっ…!」


ランはそう返そうして、途中で先程のことを思い出す。


『『ハックション!』』


ランド『のわっ?』グラッ…


ラン『ほへっ…///』チュッ…


「…/////」


途中で言葉が止まったランに、二人の父親のソーシャは「ランちゃん?」と声をかける。


「い…いやなんもなかったよ…うんなんも(そんなん聞かれたから思い出してもうたやんか///)」


ソーシャの言葉にランがそう返すと、ソーシャは「はぁ…?」と首を傾げつつも特に気にはしなかった。


そんな時、ソーシャの横にいたカナデが自分の娘二人に声をかける。


「ほら二人共、向こうに席を取ってるから行きましょう。どちらが勝ったとしても私達は、夕方の勝者の舞をする時の演奏の準備をしないといけないからね。動きやすいところにいとかないと」


「「はーい」」


母親の言葉に双子は素直に返事をする。


「お前達、母さんと先に行ってなさい。父さんは少しランちゃんと話があるから」


「わかったのです…それじゃあお姉様、私達は戻るのです」


「夕方はお姉様の為の演奏を頑張るのです」


「おおきにな、そうなる様に彼を応援しよな」


「「はい」」


ランの言葉に元気にそう返事をした二人は、カナデと共に自分達の席へと向かっていった。


そんな三人を見送りながら、ソーシャは改めて二人に「娘達を見ていてくださってありがとうございました」と改めて礼を述べる。


二人が「気に│せんでエエよ《しないでください》」と言うとソーシャは微笑む。


「それにしても…ランちゃんの護衛の彼はすごく強いんだね。まさかあのコンゴウさんやハヤテさんに勝つとは…」


「せやろ、ランドはんは凄く強いんやで」


「そうですね、ランドさんに勝てる者なんてこの世界に居るんでしょうか…?」


ランとイブキの言葉にソーシャは…


「へぇ…あの鎧武者さんはランドと言うんですか……ん、ランド…何処かで聞いたことがあるような…?」


となにかが引っ掛かるものがあり考え込む。


「どないしたんソーシャはん、ランドはんがどうかしたんか?」


突然考え込みだしたソーシャにランがそう尋ねると、ソーシャは「いえちょっと…」と言葉を返す。


「つい一ヶ月程前でだけど、何処かでランドという名前を耳にしたような気がしてね…どこだったかなぁ…?」


そう言葉にするソーシャに、ランは「ランドはんの名前を?」と首を傾げる。


「気のせいとちゃうか、ランドはんこの国に来るのは今回が初めてやと言ってたで?」


「そうですよ、それに彼の名前は私達を含めて…ごく一部の人間にしか知らされていませんし」


ランとイブキの言葉にソーシャは「いや…確かに聞いたんだよね、まぁ…それが同一人物かどうかはわかんないけどね。ランドなんて名前は珍しくもないし…」と返して少しすると「あっ、思い出した!」と口にした。


「なんやなんや?」


ランがそう尋ねるとソーシャは「うん…ランドと言う名前だけど、一ヶ月前に弟が遊びに来た時に口にしてたんだ」と答えた。


「弟はんが?」


「そうそう、弟はうちの家業と同様に楽器奏者をしてるんだけどね。家業は私が継いだから「色々旅して回るわ」と路上演奏で日銭を稼ぎながら旅をしてるんだよ」


「ほんで?」


「一ヶ月前に帰って来た時にね、「ダラス帝国で凄いもん見た」と言ってたんだ」


「「凄いもの?」」


ソーシャの言葉にランとイブキはそう尋ねる。


「うん、確か三年連続でダラス帝国の「武術大会」を連覇していたダラス帝国の王子が…今年初めて出場した凄腕の剣士に敗れたとか言ってたよ。その凄腕の剣士ってのが本当に桁違いの強さで、殆ど苦戦とかもなく優勝したんだって言ってたな。その剣士は鷹の仮面を着けていて、青く輝くロングソードを武器にしていたランドという男だったと言ってたんだ」


「「ええっ!?」」


ソーシャの言葉に二人は驚きの声を出す。


「まぁ…ランちゃんの護衛の彼は鎧を着てるし、それに武器も太刀を持ってるから多分同名の他人だろうけどね。それ程の実力者が装備を簡単に変えたり失くしたりするとも思えないし」


「「……」」


ソーシャの言葉に二人は無言になる。


「変なこと言って悪かったね、それじゃあ私もあの子達のところに戻るとするよ」


そう言うとソーシャは、二人に片手を上げて挨拶すると去って行った。


残された二人は少し間が経つと、ランがイブキに声をかける。


「イブキ、今の話どう思う?」


ランの言葉にイブキは「恐らくは…」と口を開くと答えた。


「間違いなくランドさんのことだと思います、ランドという名前でランドさんと別にそれ程の実力者がいるとは考えにくいので」


「せやんな、でも確固たる証拠も無い…「あっ、そう言えば…」…なんや?」


ランが「証拠も無いしまさかな…」と言おうとした時にイブキが声を出す。


「いえ、私がランドさんが他の挑戦者の間者だと疑っていた時のことですが…確か彼はこんな事を言ってたのを思い出しまして…」


「なんて言ってたん?」


「『ちょっと前に腕試しに大会に出たんだが…中略…まぁソイツの目論見は失敗したが…』と言ってました」


「ホンマかいな?」


「はい、それにもう一つ証明するものもあります…」


「なんや?」


「昨日私がランドさんにお返ししたランドさんの愛用の武器ですが…」


「あぁ…昨日ウチが勘違いしたやつな…」


「はい、お預かりしてる間は抜いてなかったので私も剣の本身は見てなかったのですが…」


「ですが?」


「昨日ランドさんの許可を得て拝見した時、あの剣の刃は…とても美しく青く輝いていました…」


「それ…もう確定やん…」


「ですね…」


二人はソーシャからの話と知り合ってからのランドの様子を照らし合わせそう結論付けた。


「もの凄く強いのにランクも上げない…」


「一部の界隈には名前だけが知られている凄腕の冒険者でありながら、それを自ら言うこともなく放置…」


「ウチ…ランドはんのことホンマにようわからんわ(もっと色々とランドはんのことを知っていけたらエエなぁ…///)」


「ですね…自由というかなんというか…」


そう言うと二人は、舞台の上のランドに視線を向ける。


一方、自分の事を話してるなんて思わないランドは…


「次はあの魔法使いっぽい女が相手か…女性だし怪我とかはさせたくないから慎重に戦わないとな。といってもどんな戦い方をするのかわからんが…」


と呟きながら体をほぐしていた。

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