街の散策とアホ息子再び
子供達と解散したランドとランは、そろそろお昼を食べようと言うことになり、ランドが以前散策の時に訪れた「蕎麦屋」に来ていた。
「いやぁ、ランちゃんが無事に帰ってきたから俺も安心したぜ。そっちの鎧武者の兄ちゃんがしっかり守ってくれたんだな…」
「ヤヒチはんは信用できるからここに来たんや、せやから明日の発表式が終わるまでは内緒にしといてな?」
「解ってるよランちゃん、この事は明後日までは誰にも言わねぇさ♪」
ランの言葉にヤヒチは笑顔でそう答えつつ「にしても…」と言葉を続ける。
「まさかあの時の兄ちゃんが、ランちゃんの護衛を頼まれた奴だったとはな…」
ヤヒチはそう口にしながら、流石に仮面を着けたままでは食事が出来ないので、二人の目の前で仮面を外して稲荷を口に運ぶランドに視線を向ける。
「兄ちゃんも人が悪いな、冒険者だったなら言ってくれりゃ良いのによ」
「どんな事で身元がバレるか解らないからな。それを利用してランに妨害をかけてくる奴がいる事を懸念してたんだ」
「真面目な兄ちゃんだねぇ…まぁランちゃんが俺を信用してくれてここに来てくれたんだ。食事してる間はこの衝立を置いとくから安心しな」
「助かる」
「おおきにな♪」
ヤヒチの気遣いに二人は礼を言う。
「いいってことよ…その代わりランちゃんが「洗礼の儀」であのバカ息子に勝ったら、祝いの時はウチの料理もご贔屓に♪」
「ヤヒチはんもしっかりしてるわ♪」
「そりゃあこちとら料理人でもあるが商人よ♪」
「まぁウチが勝てたらそん時は注文するわ♪」
そんな会話するヤヒチとランを見ながらランドは…
(贔屓も何も、ランの勝利は確定してるけどな…)
と思っていたが、ランも何も言わないし二人が楽しそうなので黙っていた。
それから少しして、二人はヤヒチの蕎麦屋をあとにすると再び散策を続ける。
「さぁランドはん、まだまだ時間あるけどどっか行ってみたいとことかあったりする?」
ランがそう尋ねるとランドは「そうだなぁ…」と少し考える。
「折角だから、この国独特の特産品とかを売ってるお店はあるかな?」
「特産品を売ってる店?」
ランドの言葉にランはそう聞き返す。
「あぁ、依頼が終わって帰る時に…知り合いになにか土産でもと思ったんだ」
ランドの言葉にランは「あっ…」と小さく口にした。
(そうか…ランドはんウチの護衛依頼が終わったら国に帰ってまうんやな。ランドはんと知り合ってからずっと一緒やったからすっかり忘れてたわ…。…なんやろ少し胸が痛くなる…)ズキッ…
ランはランドともうすぐお別れなのを考えると、胸の奥で微かな痛みを感じた。
(アカンな…ウチランドはんのこと本当に好きになってもうたみたいや///)
改めて自分の中の気持ちを再認識したランは、ふいにランドの顔を見つめる(と言っても仮面をしているが)。
「どうした?」
自分の顔を見つめるランにランドがそう尋ねると、ランは「ううん…なんでもないよ」と返すと言葉を続ける。
「さてさて、特産品とかを売ってる店やんな。それやったら向こうの方にあるから見に行こか♪」ギュッ…
ランはそう言うとランドの腕にしがみついた。
「ラン?」
ランの行動にランドがそう口にすると、ランは「まぁまぁ気にせんといて、護衛対象は近い方がエエやろ♪」と言葉を返す。
「そりゃそうかもしれないが、これだといざという時に太刀が抜けないんだが…」
「ヘーキヘーキ、ランドはんなら素手でもウチのこと守れるわ。どうしてもとなったら離れるから構へんやろ?」
「まぁランがそれでいいなら…」
ランドがそう言うとランは笑顔で言葉を口にする。
「ほなら行こ、折角やからランドはんにはこの国の色んな物を見て欲しいしな(別に今生の別れってわけやないからな。後の事はその時考えるとして、今はランドはんとのこの時を楽しまな♪)」
「それなら色々と案内してもらうかな」
「任しといてや♪」
そう言って二人が歩き出そうとしたところで…
「やぁやぁそこにいるのはランじゃあないか、もう帰って来たということは大した結果も出せずに帰ってきたようだねぇ」ファサッ…
そんな言葉を発しながら、二人のところにワガマが現れた。
「この僕でさえ四日もかけて潜ったのにまさか三日程で戻ってくるなんて、やはり君は潜るだけ無駄な労力だったようだねぇ〜」ファサッ…
「ところでこの国の民芸品とかではどんなのが有名なんだ?」
「せやねぇ「扇子」とか「座布団」とか、あとこういう冷え込む季節には「火鉢」なんかも使ったりするね」
「へぇ…どれも聞いたことないな」
「まぁ「火鉢」はあんまりお土産には向かんかな。「扇子」とか「座布団」とかは人によったら喜ばれるかもやで」
「なる程な…食べ物とかなら何があるかな?」
「そうやねぇ…さっき食べた蕎麦とかもやけど、やっぱり「饅頭」とか「煎餅」とかかな。あとは「芋けんぴ」とかやね」
「「芋けんぴ」か、あれは油断したな…」
「あはは、祠で唯一ランドはんを負傷させた強敵やもんな♪」
「否定できん…」
「そうそう、あとお土産とかやないけどこの国には「すき焼き」って料理もあってな。それも美味しいんやで」
「へぇ…興味深いな」
「そう言うならお母はんに頼んで明日の夕食は「すき焼き」にしてもらおうか?」
「良いのか?」
「構へんよ、どうせ明日はお祝いやろし。ヤヒチさんとこの料理以外も楽しんで欲しいしな」
「それは楽しみだ」
「おい…!」
「あそこの店に置かれてる棒はなんだ?」
「あれは「木刀」やね、木を太刀の形に削ったやつや。まだホンマもんの太刀を持ったら危ない子供とかに剣術を教える時に使うんや。防犯のために家に置いてる人とかもおるで」
「へぇ…木製の太刀かぁ…ん、横にまた別の剣みたいなのもあるな?」
「あれは「竹刀」やね、ヤマット皇国で盛んな剣術の練習用の道具で…木刀よりも更に危険性を抑えてるんや」
「なる程、段階を踏んで訓練するんだな」
「ランドはんは剣術は誰に教わったん?」
「俺はお袋に叩き込まれたな」
「せやったんや〜」
「おいこら…!」
「あ…この辺りやね、この辺のお店が他国の人がよく買い物するお店がある通りやで」
「おぉ、色んな見たことない品物が並んでるな。これは面白そ…「お前らボクを無視するんじゃない!!」…」
自分を完全に無視して会話を続けるランドとランに、ワガマは大声で抗議の声を上げる。
「もぉ〜なんやねん、やっと街に帰ってこれたから息抜きしてるのに邪魔せんといてや(折角ランドはんと二人きりで散策してるのに…)」
ランが心底面倒くさそうにワガマにそう言うと、ワガマは「ふざけるな!」と声を荒げる。
「ボクを無視するからだろが、折角このボクが声をかけてやってるのに何だその態度は!」ファサッ…
「誰も声かけてくれなんて言うてへんやん…」
「黙れ、ボクに意見するな!」ファサッ…
「返事せんかったらせんかったで怒るし、返事したらしたで黙れとかなにがしたいねん…」
「うるさいうるさい、そこの鎧武者野郎もボクに対する礼儀がなってないぞ。お前もボクに敬意をはらえよ!」
そんなワガマにランドは(ウザい奴だなぁ…)と言う気持ちを抱きつつ…面倒くさそうに振り向くと言葉を返す。
「おやそちらは何時ぞやの…どっかの誰かの息子だとかいう、なんとかさんじゃないですか。こんなとこでお会いするとは神もなかなか酷いことをしてくれるものですね」
ランドの言葉にワガマは顔を真っ赤にしてブルブルと体を震わせる。
「なんだその投げっぱなしの適当な言葉は。貴様、ボクに対する興味も無ければ名前すら覚える気が無いのか。しかも神も酷いことをしてくれるだと…このボクに会ったことが不幸だというのか!」ファサッ…
「それ程までにこちらの心情を読み取れるとは、洞察力だけは大したものですね。できればその洞察力をもっと極めていただきたいところですが…」カチャ…
「兜を鳴らすなぁーー!」ファサッ…
相変わらずの自分に対するランドの適当な態度にワガマは絶叫する。
「前も言ったがボクはこの街の豪商ブソウの息子ワガマ様だぞ、本来なら貴様のようなどこの馬の骨かわからん鎧武者風情が口をきけるような人物ではないんだぞ!」ファサッ…
「だったら…別にこちらは口をききたいとも思ってないので、どうぞそのままお引き取りください。えっと…ブザマの息子のガマガエル様でしたっけ?」
「貴様ワザと間違えてるな、ブソウの息子のワガマだと言ってるだろう。人の名前くらいちゃんと覚えろ!」ファサッ…
「面倒くさいですから嫌です」
「ふざけるなよ貴様!」ファサッ…
「ふざけてません、本気で面倒くさいから嫌です」
「真面目に言えばいいってもんじゃない!」ファサッ…
「じゃあどうしたら良いんですか?」
「ボクに敬意をはらえと言ってるんだ!」ファサッ…
「嫌です」
「何故だ!」ファサッ…
「えーと、それ言わなきゃ駄目ですか?」
「当たり前だ、ボクに敬意を払わないというなら相応の理由を言ってみろ!」ファサッ…
自分に対する態度がどうしても許せないワガマはランドにそう叫んだ。
(面倒くさいなぁ…)
ランドは仮面の下で顔を顰めると「はぁ…」とため息をついてから答える。
「まず一つ目、私はアナタが生理的に無理です。出来れば視界にも入れたくありません」
「なっ…!」
ランドの言葉にワガマは固まる。
「二つ目…私はアナタに雇われてるわけでもないし、関わっても利がないので興味無いです」
「ななっ…!」
「三つ目…アナタは現在私の護衛対象であるランお嬢様に近付く不届き者です。敵視こそすれ善意を持って見る必要性が無いです」
「…」
「四つ目…私はこの国の人間じゃないので個人的感覚ですが、アナタの服装が奇抜過ぎて一緒にいたくないです」
「……」
「五つ目…いちいち髪をかきあげる動作がウザくて目障りです。さっさと髪切ってください」
「………」
「六つ目…出来ればその「ボク」って一人称もやめてください。「ボク」って自分の事を言う知り合いがいるので…その人物まで汚された気分になってすごく不快です」
「」
ランドの並べる理由の多さにワガマは完全に固まった。
「以上の理由から、私がアナタに敬意を払う気持ちが無いことは理解してくれましたか。理解してくれたならこれで失礼します、行きましょうかランお嬢様」
ランドがそう言うとランも「せやね」と返すと、ランドの腕に掴まりながらワガマに声を掛ける。
「ほしたらまたなワガマ、明日は発表式なんやしお互いの結果を楽しみにしとこうや♪」
ランはワガマにそう言うと、ランドと共にお土産等を売っている通りの道へと歩いて行った。
それから暫くの間、ワガマは自分に対するランドの真っ直ぐな嫌悪感を耳にした事に…固まったまま動かなかった。
そんなワガマのところに一組の男女が近付いて声をかけてくる。
「あっ、いたいた。ちょっと勝手にどこか行くのやめてくれるかしら、行くにしてもどちらかに伝えてくれないと仕事できないでしょうが!」
「全くだぜ、俺達の護衛が不要なら契約満了にしてくれ。俺は次にやりたいことがあるんだからよ…」
男女の声にようやくハッとしたワガマは、先程までいたランとその護衛の鎧武者の姿を思い返すと「クソがぁーー!!」と叫んだ。
「このボクを馬鹿にしやがって、絶対に後悔させてやるからな…絶対にだ!!」
そう叫ぶワガマに護衛の二人は…
「なにいきなり叫んでるのよ…キモッ…」
「なんだなんだ…?」
と変なものを見るような目をするのだった。
一方、ランド達はというと…
「ほぉ…凄く手の込んだ細工模様だなぁ…」
「せやろ、隅から隅まで職人がこだわり抜いた細工をするのもヤマット皇国の特徴やで」
「大したものだなぁ…」
その後も様々な店をまわって散策を楽しんだのだった。
リン「ランドの言ってる「ボク」が一人称の知り合いって…」
作者「もちろんラジさんのことですよ」
ラジ「し…師匠、離れていてもボクの事を考えてくれてるんですね///」
リン「良かったわねラジ」
ラジ「はい…エヘヘ///」




