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マイペースな冒険者は今日も受付嬢に怒られる  作者: のんびり生きていきたいおっさん


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子供達への演出とSランクの観察力

ランド達が祠から帰還した日の翌日…


「ほらほらランドはん、次は向こうの店見にいこ♪」


「昨日の今日で随分と元気だな…」


「昨日しっかりと休んだからな、明日は忙しくなるやろしその分しっかり今日を楽しんどかんと♪」


「若いなランは…」


「なにおっさんみたいなこと言うとるの、ランドはんだってまだ若いやろ♪」


「まぁ…まだおじさんと言われる歳では無いと思いたいが…」


「せやろ♪」


ランドはランと二人で街の散策をしていた。


ランはいつもより少し着飾りつつも動きやすい格好をしており、ランドはまだ「洗礼の儀」が完全に終わったわけではないので、一応鎧と太刀を装備した状態で来ている。


なぜそうなったかと言うと、今朝方サキモリの孫のムラクモが屋敷にやって来て…


「街の上層部にランが戻ったことを伝え、「洗礼の儀」の「発表式」は明日に開かれる事になりました」


と報告に来たので、今日は一日予定が空いたのだ。


その結果ランが「せやったらランドはん、ウチと街でも散策に行かへん?」と提案し、ランドも断る理由はないので同意したのだ。


「にしても、今日は朝から随分と人が活発に活動してるな。前に一人で散策した時はこの時間はまだ人もまばらだったんだが…」


ランドがそう呟くと、ランは「みんな明日に備えとるんやろね」と返した。


「明日は「洗礼の儀」の「発表式」やからね、人も多いしやろしその分屋台とか飲食店の人らも…明日の仕込みとかをしとるんやと思うわ」


「商売人というのは逞しいな…」


「まぁその分ウチ等も楽しめるってことやし、今日はのんびりとしようや♪」


「そうだな、と言っても俺はランの護衛として来てるから油断はしないようにしないとな。今日はイブキもいないからな」


「あはは、祠でのランドはんの強さ見たらウチも安心出来るわ(それにイブキには悪いけど、ランドはんと二人きりってのもウチは嬉しいしな///)」


普段なら先日のように…護衛としてイブキも同行するのだが、イブキは「今回のダンジョンでの経験を考えて、今日は少し祖父に鍛え直してもらおうと思います」とのことでランドのみでランの護衛をすることになったのだ。


そうして二人で街を散策していると、色んなところから街の人達が気軽にランに声をかけてくる。


「よぉランちゃん、帰ってきたのかい?」


「お帰りランちゃん、怪我とかはしてないみたいだね」


「試練は無事に終わったのかい」


「あのワガマには負けんじゃないよ」


そう声をかけてくる街の人達に、ランは「おおきに、任しといてや。明日の発表式を楽しみにしとき♪」と笑顔で返していた。


途中で会った子供達も、ランの姿を見ると声をかけてくる。


「あ、ラン姉ちゃんだ」


「お帰りー」


「隣の鎧武者は誰?」


「わー強そう」


大人達と違って子供達は、ランへの挨拶もそこそこに隣りにいるランドが気になるようであった。


「帰ってきたでー、この人はウチの護衛や。強そうじゃなくてホンマに強いんやで♪」


ランがそう答えると子供達は「本当に?」とランドを見つめる。


ランドはそんな子供達に「それなりにね…」とやんわりと返した。


すると一人の子供がランドに向かって「じゃあ証拠見せてー」と言ってきた。


「証拠?」


その子供の言葉にランドが聞き返すと、その子供は自分の鞄からリンゴを一つ取り出した。


「これを鎧武者さんに投げるから、その腰の太刀で斬ってみてよ」


その子供の言葉に周りの子供達も「見たい見たい!」とはしゃぎ出した。


子供達の言葉にランは「えーと…」と少し考えるとランドに尋ねる。


「ランドはん、こう言ってるけど出来そうか?」


「まぁリンゴを斬るくらいなら…」


ランドがそう答えると、ランは「よっしゃ、ほしたらやってもらうわ」と子供達に答える。


「「わー!」」


ランの言葉に子供達から歓声が上がる。


「よいしょっと…」


ランドは自分のマジックバッグから机を取り出し、更にその上に大きめの皿を一つ置いた(その様子にも子供達は「すげー!」と歓声を上げた)。


「それじゃあいいぞ、君はこの皿の上に落ちるようにリンゴを投げてごらん。危ないからみんなもう少し離れて見るようにね」


ランドはそう言うと腰の太刀に手を添える。


「わかったー!」


「「わくわく」」


子供達が今か今かと期待の視線を向ける。


「いくよー………えいっ!」


リンゴを手にしていた子供は、そんな声と同時にリンゴを上に放り投げた。


― ― ―


ここで時は少し前に遡る…


ランドとランが子供達と話をする少し前、街の中をSランクパーティー「剣舞の心得」のメンバーであるコンゴウとハヤテが歩いていた。


「やれやれ、今日はヤスツナとタマモのペアであのアホ息子の護衛か…」


「正直アイツの護衛疲れるよな、体力というか精神的によ…」


「違いない、いちいち喋る度に髪をファサッとやるのが鬱陶しくてたまらん」


「まぁあの二人には悪いが、今日は休ませてもらって飯でも食おうぜ」


「だな…まだ日中だが折角だし酒を飲むのも悪くは…「わー!」…ん?」


二人でそんな会話をしていると、どこからか子供達の歓声が聞こえてくる。


「なんだ?」


「あっちの方だな?」


二人はその声がなんとなく気になり、声のした方へと歩を進める。


すると角を曲がった拓けた所で、子供達が集まって誰かを囲んでいた。


「何してるんだ?」


「さぁ…?」


二人が首を傾げていると、子供達の中から「危ないからみんなもう少し離れて見るようにね」と男の声がした。


「「わかったー!」」


男の声に子供達がそう言って少し離れたことで、二人は子供達の中に囲まれていた一人の男と女性が視界に入る。


「あれは…巫女頭ツバキの娘じゃねぇか」


「もう試練から戻ってきたのか?」


「みたいだな、となるとあの鎧武者は護衛か。確かあのアホ息子が「生意気な鎧野郎がいた」とか愚痴ってたし」


「多分な」


「なにやってるんだろうな?」


ハヤテがそう言うとコンゴウは「ふむ…」と鎧武者の様子を見て推測する。


「おそらくは、あそこに机と皿が乗ってるし子供が一人リンゴを持ってるから…なにか技を見せるようだな」


「ほぉ…なら俺達も見せてもらうとするか」


「だな」


冒険者としての性か、鎧武者の腕が気になる二人は少し離れたところから様子を見る事にした。


やがてリンゴを持ってる子供は、「えいっ!」と皿の上にリンゴを放り投げた。


― ― ー


場所は戻ってランドサイド…


ランドは上に投げられたリンゴを見つめながら…


「はっ!」シュシュシュシュシュン……キンッ!


そんな声を出したかと思うと太刀をカチャリと鳴らした。


その後ランドは空中のリンゴを片手でパシッと掴むと、そのまま皿の上に置いた。


リンゴは特に変化も無く、投げられた時と同じ姿で皿の上に鎮座している。


「ランドはん?」


ランはリンゴに変化がないのでランドに尋ねるように声をかける。


子供達もリンゴの様子を見て「あれ?」と首を傾げた。


「斬れてないよ?」


「鎧武者の人失敗したの?」


「カッコ悪ーい」


そんな声が出ている中、ランドは「うーんちょっと気合を入れすぎたかな?」と呟く。


「「えっ?」」


ランドの言葉にランや子供達がそう口にした時…


「驚いた、お前さんかなりの使い手だな…」


「全くだ、アイツでもそこまで出来るかどうか…」


そんな声が子供達より外の方から聞こえてきた。


ランや子供達…そしてランドが声のした方に顔を向けると、そこには二人の男が立っていた。


(誰だ?)


ランドがそう思った次の瞬間に、子供達からその答えが聞こえてくる。


「あっ、「剣舞の心得」のコンゴウだ」


「ハヤテもいる」


子供達の言葉にランドは「剣舞の心得って…」とどこかで聞いた言葉に反応する。


そんなランドにランが「ランドはん、この二人はこの街でも有名なSランクパーティー「剣舞の心得」のメンバーや。ウチはこないだまでランクの事はよう知らんかったけど、Sランクってことはかなりの腕ってことやろ?」と耳打ちした。


ランの言葉にランドは「へぇ…」と返しつつ心の中で考える。


(あの蕎麦屋であった男の仲間か…なる程かなり出来るようだな…)


ランドがそんな事を考えている中…「剣舞の心得」の二人はランドが置いたリンゴを眺めていた。


「素晴らしい、全く乱れがない…」


「世の中まだまだ凄いやつがいるもんだ…」


二人の言葉に子供達が「何がすごいの?」と尋ねる。


そんな子供達に、コンゴウはにこやかに笑うと「このリンゴを突いてみな」と告げる。


「?」ツン…


子供の一人がそれに答えてリンゴを突くと…


バラララララッ…


途端になんの変化もないと思われたリンゴはバラバラになった。


「スゲーーー!!」


「いつ斬ったのーー!?」


「全然見えなかったーー!」


子供達は思いも寄らない出来事に大はしゃぎである。


そんな子供達にランドは「楽しんでもらえて何よりだ」と口にする。


「鎧武者さんすごーい!」


「達人だ、この人達人だーー!」


子供達が大はしゃぎする中、ランもランドに「なかなか面白い演出やね♪」と声を掛ける。


「楽しめたなら良かったよ」


ランドはランにそう返しながら、「にしても…」とコンゴウとハヤテの方に仮面をつけた状態で顔を向ける。


「アンタ等…よく俺の剣筋が見えたな…流石はSランクだ」


ランドの言葉に二人は「まぁな」とニヤリと笑う。


「アンタも大した腕だぜ」


「全くだ、ウチのリーダーともやりあえるかもな」


「Sランクと揉めるのは勘弁したいな」


ランドの言葉に二人は「面白い奴だ」と笑った。


そんな会話をしていると、ランがランドに「なぁなぁそろそろお昼食べに行かへん?」と声を掛ける。


「そうだな、それじゃあ俺達はこれで失礼するよ。そのお皿はあげるからみんなで仲良くリンゴを分けなさい」


ランドはそう言うと皿を子供の一人に手渡し、机をマジックバックに仕舞った。


「「はーい♪」」


ランドの言葉に子供達は素直にそう返事をした。


「それじゃあウチ達は行くから、みんなまた今度なぁ〜」


「ラン姉ちゃんまたねー」


「鎧武者さんもまたねー」


ランの言葉に子供達はそう言うと笑顔で二人を見送ったのだった。


そして一緒に二人を見送ったコンゴウとハヤテは…


「あんな奴が居るとはな…」


「あぁ…世の中は広いな…」


「アイツのことヤスツナに教えるか?」


「止めとこう、そんな事したらアイツの事だから「勝負しろーー!」と突撃して面倒だ」


「そうだな…ただでさえこの依頼終わったらアイツは「こないだ街であった男とかダラス帝国武術大会の覇者を探すぞーー!」って五月蝿いんだ。更に手間が増えるのはゴメンだし」


そう話し合うと、二人は街の散策に戻るのだった。


まさかその「街で見かけた男」も「ダラス帝国武術大会の覇者」も先程の鎧武者と同一人物とは思わない二人だった。

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