祠からの帰還と母としての心配
守護獣達がそんな会話をしている頃…「帰還の勾玉」を使用したランド達は光に包まれて閉じていた目を開く。
目を開いた三人の前には先日自分達が潜った「神託の祠」の門が、入ったときと変わらない姿で佇んでいた。
「…本当に入口の目の前に戻ってるな」
「凄いなぁ、一体どんな仕組みになってるんやろ」
「魔法の一種なんでしょうが、凄いものですね」
三人はそれぞれそんな感想を抱きつつ、一度ダンジョンの奥の方へと振り向いた。
「ウチ等…ホンマにここの最奥まで行ったんやな、ほんの三日間やったけど色々と良い経験をしたわ。色んな魔物やそれに伴って現れた試練の数々、ずっと昔からここを守っていた白虎ちゃん達や神様、ウチここでの経験は忘れへんで(そしてランドはんの素顔やウチのこの気持ちも///)」
ランの言葉にランドやイブキも「そうだな」と同意する。
「俺も彼等に会えたのはいい経験だった、長命の種族には会ったことが有るが…その場所ごとの歴史というものがあるんだな」
「ですね、まさか言い伝えとして語られている存在と直に会えるとは思っていませんでした」
二人がそう言うと、ランは「まぁそう言うても一番驚いたことは…」と言葉を続ける。
「ランドはんの目茶苦茶な強さが一番驚いたけどな♪」
「え?」
ランの言葉にランドはキョトンとした。
「確かに…この祠で様々な事を目の当たりにしましたが、私もランドさんの行動に一番驚きましたね」
ランの言葉にイブキもそう言って同意した。
「なんで俺の事が一番驚くことなんだ?」
心外だと言わんばかりにランドがそう言うと、二人は「だって…」と言葉を返す。
「祠の中でも話したけど、やっぱりランドはんの強さは異常やと思うで?」
「ラン様の言う通りです、百歩譲って道中の魔物は良いとしても…言い伝えとして語られている存在すらあぁも簡単に凌駕する人間がいてたまりますか!」
「いてたまりますかって、実際こうして人間としているじゃないか…」
「「本当に人間なんか?」」
「人間だってば!」
改めて疑惑の視線を自分に向けてくる二人に、ランドはそう口にした。
ランドの心からの叫びにランは「あはは冗談やって♪」と笑うと言葉を続ける。
「まぁ…ランドはんが人間かどうかはこの際置いといてやな、とりあえず家に帰るとしよか。お母はんにもいい土産話もできたことやし」
「ですね、私もお祖父様にここで目にしたことを語りたいですから」
二人の言葉にランドは「冗談で人外にされるのは嫌なんだが…まぁいつまでもここで喋っていても仕方ないな」と半ば諦めた様な口調で同意した。
「それじゃあ帰るとしよか、ランドはん…門を開けるのお願いしてええか?」
「わかった、二人は少し離れててくれ」
ランの言葉にランドはそう答えると、目の前の門の持ち手を手にして手前に引っ張った。
ギィィィィィ…と音を立てて門が手前に開かれると、ランドの側にランとイブキが近付き門をくぐる。
二人がくぐったのを確認したランドは、最後に門をくぐるとゆっくりと門を閉める。
そして門が改めて閉じられたあと、ランドは入る時とは逆にサキモリから預かっていた鍵を使って門を施錠した。
「これで終わりだな…」
「せやね、3日とはいえ貴重な経験やったわ」
「私もです」
三人がそれぞれそう口にしてから、ランは門の前に立ちゆっくりと膝を下につけて両手を合わせた。
「守護獣様…そして祠に祀られし神様、私達に試練を…そしてお言葉をくださりありがとうございました。私はここで経験したことを忘れずにこれからも生きていきます」
ランがそう口にすると、後ろにいたランドとイブキも続けて「ありがとうございました」と頭を下げた。
そうして暫く三人で門に向かって頭を下げたあと、ランは立ち上がり後ろの二人に笑顔で声を掛ける。
「さ…帰ろうか二人とも、みんながウチ達の帰りを待ってることやしな♪」
「「そうだな」」
ランの言葉に二人も笑顔でそう返すと、三人は揃って家路へと向かった。途中でサキモリとムラクモのいる小屋に寄って、戻った報告と最下層まで到達した事を簡単に説明すると…
「なんと…まさか本当に最下層まで到達するとは!」
「マジかよ、まだたったの三日しか経ってないんだぞ!」
と驚きの声をあげ、「嘘やないで♪」とランが懐から出した「割符」を見て更に目を見開いた。
「た…確かに「完」と刻まれておる。このような「割符」になっているとは…」
「爺ちゃん、もしかして俺達歴史的瞬間を目の当たりにしてるんじゃ…」
そんな二人にランは「大袈裟やなぁ」と笑った。
「まぁ詳しくは「洗礼の儀」が終わった後に話すわ。多分その後にウチの家で宴会するやろし、二人も来てな♪」
笑顔でそう口にするランに二人とも「是非行かせてもらう」と笑顔で返したのだった。
そうして簡単な挨拶を二人に済ませると、ランド達は揃ってランの家へと歩を進めていった。
それから暫くして…ランド達は無事にツバキやサイガの待つ家へと帰宅した。
門の前で掃除をしていたサイガは、僅か三日で戻った三人を視認すると驚きの表情を浮かべ、即座にツバキを呼びに屋敷の中へと入っていく。
サイガから知らせを聞いたツバキは即座に玄関までやって来ると、丁度玄関に入ってきたランに抱き着いて娘の無事を喜び…そして護衛のランドとイブキにも感謝の言葉を口にする。
「ラン…よくぞ無事に帰ってきました。ランドさんもイブキさんもご苦労さまでした」
「帰ったでお母はん、この通りウチはどこにも怪我もしとらんで♪」
「只今戻りましたお館様」
「戻りましたツバキさん、約束通りランには怪我をさせることなく試練を達成いたしました」
ツバキの言葉に三者三様で言葉を返すと、ツバキは「良かった…本当に良かった」と涙を流す。
「僅か三日といえど、やはり自分の娘が危険な所に行くのは心配でした。初めは是が非でもあのブソウの所のバカ息子よりも深い階層にと願いましたが、やはり些細な名誉より娘の命です。ランドさんとイブキには娘を説得して戻ってきてくれた事に感謝しかありません」
「「説得?」」
ツバキの言葉の意図がわからず、ランドとイブキは首を傾げる。
そんな二人にツバキは「良いんです良いんです、別に二人を責めたりはしません。命あっての人生です」と口にする。
「名誉なんて手にしても死んでしまえばそれまでです、ランは戦士でも騎士でもありません「名誉の死」というものとは無縁でいてほしいのです」
そう言ってウンウン頷くツバキに、ランは「あの…お母はん?」と声をかける。
「さっきから一体なにを言うてんの?」
いまいちツバキの言ってる事が解らず、ランがそう尋ねるとツバキは「何をって…」と言葉を返す。
「貴女は「神託の祠」に挑戦した結果途中で帰ってきたのでしょう。街に回ってる情報だとワガマは四日かけて攻略して…それなりの階層まで行ったらしいと噂になってたわ。だけど貴女達は三日しか潜ってなかったもの、どこまで潜れたかは知らないけど…きっとランドさんやイブキが「これ以上は危険」と判断して貴女を説得して戻ったのでしょう?」
「はい?」
ツバキの言葉にランはポカンとした。
「あのなお母はん、ウチら祠を完全に…「いいのよ気にしなくて、ランドさんは「最高の支援を」と約束してくれたわ。私にとっての「最高の支援」は貴女が無事に帰ってくることだもの。結果が出なくても貴女が無事ならそれで充分よ」…いやだから…」
自分の話を聞かないツバキに、ランは少し疲れた顔をする。
そんなランをよそに、ツバキはランドの方を向くと「ランドさん、本当にありがとうございます」と言葉にする。
「は…はぁ…?」
ランドもツバキの様子に困惑してうまく言葉が返せない。
「先日ランドさんには「勝てるのか?」なんて責任を負わせてすみませんでした、でも結果がどうであれ娘を無事に連れてきてくれた時点で貴方には感謝します!」
「ど…どうも…」
ツバキの勢いにランドはそうとしか返せない。
「本当にお疲れ様でした、後日セーラには今回のお礼とこの事でランドさんを責めないようにとしっかり伝え…「お母はん…少し落ち着かんかいな!」…あいたぁ!?」
色々と喋るツバキに、ランは玄関にあったスリッパを手にすると後頭部を引っ叩いた。
「な…なにするんやラン?」
ツバキは突然の事に思わず「素」の言葉遣いでランにそう言うと、ランは「少し落ち着いたか?」と口にして言葉を続ける。
「さっきから一体何を言ってるねん、まるでウチ等が途中で諦めて帰ってきたみたいに言いよってからに!」
「えっ?」
ランの言葉にツバキはキョトンとする。
そんなツバキにランは「あのなお母はん…」と改めて説明する。
「ウチ等は別に途中で諦めて帰還したんちゃうで、ちゃんと祠の最下層まで行ってきたわ!」
「えっ、ホンマに?」
ランの言葉にツバキは再度キョトンとしてから口を開く。
「だって…さっきも言ったけどアンタ等が入ってから三日しか経ってへんのやで。いくらランドさんがセーラに頼まれた腕利きとしても、こんな早く最下層に行くなんて…」
ツバキがそう言うとランは「ホンマやって、これ見てや」と懐から「完」と刻まれた「割符」取り出した。
「これ見てみ、お母はんは「割符」の事はサキモリはんから聞いて知っとるやろ。これに「完」て刻まれてるやん、つまりウチ等は祠の試練を「完全達成」したんや!」
ランが手にする「完」と刻まれた「割符」を見たツバキは暫くその「割符」を見つめてから………
「なんやてぇぇぇぇぇぇーー!!」
ようやく状況を理解して思わず「素」の言葉で絶叫した。




