祠より先に達成済み
「あ…お姉ちゃん戻って来た」
白虎がそう口にしたので、ランド達が階段の方に視線を向けると…ランが丁度上がってきたところだった。
「ラン…大丈夫だったか?」
「神様になにか変な事とかはされていませんか?」
ランドとイブキがランに近づきながらそう口にすると、ランは「大丈夫や」と返した。
「なんも変なことは起こらんかったよ、見ての通り怪我とかもしてへんで」
ランの言葉にランドとイブキは「良かった」と安堵する。
そんな三人で話していると、青龍が「神の声は聴くことが出来たか?」とランに尋ねてきた。
青龍の問いかけにランは…
「バッチリ聴こえたで、頭の中で他の人の声が聞こえるってのは不思議なもんやな」
と答えた。
ランの返答に青龍は「そうかそうか」と満足そうに頷くと言葉を続ける。
「なんといってもこの世界をお造りになられた偉大なる方々だからな、さぞや立派で為になるありがたいお言葉を戴き…お前も声しか聴こえなかったとはいえ、その威厳ある気配に驚いただろう」
「立派で威厳ある気配にありがたい言葉…」
青龍の言葉を繰り返したランは、先程までの神々の様子を不意に思い出す…
『おい、俺の杖とマント何処だ?』
『腹巻きを外しなさい…』
『お前も半纏脱げよ…』
『『この事は他言無用だぞ』』
「…せやね、確かに普段生活していたら聴けないようなことが聴けたわ」
ランの返答に青龍は「そうだろうそうだろう」とウンウンと頷いていた。
「あの方々のお言葉が聴けるなんて、お前は人間としてはとても名誉あることを体験したわけだ。ゆめゆめその事に感謝することだな」
「せやね(青龍はんは神様達をエライ崇拝しとんやな、口止めもされてるし余計なことは言わん方が良さそうや…)」
青龍との会話が一段落すると、ランドが「それでラン…」と口を開く。
「その神の声を聴いたことで、なにか他に変わったことは無かったのか?」
ランドがそう尋ねるとランは「あぁ、せやったせやった…」と反応して懐からあるものを取り出した。
「なんや神様からこれを渡されたわ、これを持って帰って勝利を宣言しろやって」
そう言ってランが取り出した…「完」という文字が刻まれた「割符」を見たランド達は「へぇ…」と声を上げる。
「ここまでの「割符」とは少し見た目が違うんだな…」
「そうですね、ここまでは普通の「木の板」みたいな感じでしたが…これは上部になにやら石がはまってますね」
そんな感想を口にしつつ、ランドは「それで…これで祠での用事は完全に終わったかな?」と口にする。
「せやね…後はここから帰るだけやな」
「そうですね、帰りはサキモリから預かった「帰還の勾玉」がありますからすぐですね」
ランドの言葉に二人がそう言うと、白虎が「もう帰っちゃうのか…?」と少し寂しそうな声を出した。
そんな白虎に他の守護獣達が声を掛ける。
「仕方ねぇだろ白虎、ランド達は帰らなきゃいけねーんだからよ」
「気持ちはわかるけど、私達にはここを守る使命があるからね」
「そうだぞ、ここの守護を任されているのはとても名誉なことなんだ」
玄武、朱雀、青龍の言葉に白虎も「うん…」と頷くがやはりどこか寂しそうだった。
そんな白虎を見たランは「白虎ちゃん…」と声を掛けると白虎をギュッと抱き締めた。
「大丈夫や、別にもう会われへんわけやないんやから。ウチまた白虎ちゃんに会いに来るからな」
「ホントか?」
「ホンマや、せやけどウチだけやと途中で魔物にやられてまうから…ウチが来た時は魔物出さんように朱雀はんにお願いしてな」
「うん…アタイ待ってるぞ。それに朱雀が言うこと聞いてくれなかったら…アタイがお姉ちゃんを一階まで迎えに行くからな」ギュッ…
白虎はそう言うとランに抱き着いて顔を埋めた。
「すっかり懐いちまってまぁ…」
「私あんな風に甘えられたことないんだけど…」
「まぁまぁ…」
残りの守護獣達は、そんな二人を微笑ましく眺めていた。
そうして…ランド達はいよいよ「神託の祠」から帰還することになった。(ランドも鎧を着直した)
「それじゃあ俺達は行くとするよ」
「色々ありがとな、楽しかったで」
「失礼致します」
そう挨拶するランド達に、守護獣達とグラシスが「気をつけて」と声をかける。
「楽しかったぜ、また機会があれば勝負してくれよ」
「お姉ちゃん、またお菓子持ってきてくれよ」
「実に見事だったぞ、私を倒せる人間がいるとは思わなかった」
「また来なさい、今度は魔物を全滅させないでね…」
「また遊びに来てください。…っていうか姉御、やっぱりランドの旦那に魔物全滅させられたから俺をけしかけたんですか!?」
そんな会話をする「祠の守護者」達に、ランド達も「またいつか…」と言葉を返し…そしてランは懐から「帰還の勾玉」を取り出す。
「それじゃあ皆さん元気でな、ウチまた絶対に皆に会いに来るからな」
ランはそう言葉にしてから、自分達三人の足下に「帰還の勾玉」を投げつけた。
カッ…!!
勾玉が地面に接触して砕け、眩い光が発したかと思った時には…ランド達の姿は消えていた。
守護獣達とグラシスは、ランド達がいたところを見つめながら呟く。
「行っちまったな…」
「うん…ちょっと寂しいけどまた会えるって言ってたからアタイ待つぞ」
「そうね…きっとまた会えるわよ」
「うむ…良い奴等だった…」
「次来た時は普通にお通ししましょうね、もうシバかれるのは御免です」
そんな会話をしていると、青龍が「それにしてもだ…」と口を開く。
「あのランドとかいう男、本当に何者なのだろうか。我等をこうも容易く倒せる人間がいるとは…」
青龍の言葉に玄武や白虎、そしてグラシスも「だよなぁ…」と頷く。
「アイツ目茶苦茶な強さしてるよな…」
「アタイ、青龍より速くて強い奴…ここに来て初めて見た」
「そもそも「竜形態」の俺を素手でボコれる時点でおかしいんですけどね…」
グラシスの言葉に守護獣達は「は?」とグラシスを見る。
「グラシスお前…ランドに「竜形態」で負けたのか?」
「あんなにデカくなるのに?」
「ちょっと…それ本当なの?」
「音声では解らなかったが、まさか「竜形態」で負けてたとは…」
守護獣達の言葉にグラシスは「そうっすよ、お陰でエラい目にあいましたよ」と答える。
「殺すつもりは無かったので、ちょいと軽く踏んでやろうかと思ったらですね…ランドの旦那は俺の足を思いっきり殴って跳ね返してきたんですよ。そのまま腹の下に潜られて凄い勢いで腹をボッコボコに殴られまして、痛すぎて俺の頭が下がった瞬間に跳び上がって…脳天に踵落とし食らって床にめり込んで決着ですよ。そこで俺はもう完全に心折れました」
「「………」」
グラシスの説明に守護獣達は無言になる。
「その後腫れた顔で半泣きで謝ったんですが、うっかりあのお嬢さん達の不評を買いまして…もっかい地面に顔が潜る羽目に…」
((あの時の音声はソレか…))
『いやぁぁぁぁぁ助けて姉御達ーー、俺この人間に殺され…』
守護獣達はグラシスの言葉に、先日音声だけ聴いたグラシスの悲鳴を思い出す。
「しっかし…お前も俺ほどじゃないにしてもかなり頑丈だろ。ランドの拳ってそんなに痛いのかよ?」
玄武の質問にグラシスは「いやいや玄武の兄貴…」と言葉を返す。
「兄貴は旦那と相撲だったからわかんないでしょうけど…ランドの旦那の拳って目茶苦茶痛いですからね。なんなら白虎の姉さんの打撃よりも痛いもありますよ。青龍の兄貴はさっき肘食らったからわかるでしょ?」
「た…確かにな…私も頑丈だがアレは効いた…」
グラシスの言葉に青龍もそう言って頷く。
「だとしても…流石に「竜形態」のアナタを見てランドは驚いたりしたでしょ?」
朱雀がそう言うとグラシスは「いやいや…」と首を振った。
「俺も最初はそれで旦那が怯むかなと思ったんですが…旦那は特にビビったりしなかったんですよ」
「嘘…普通アナタみたいなのに遭遇したら人間は驚くはずよ?」
「旦那は全然でしたよ、なんなら「へぇドラゴンかぁ…でも翼ないし「空竜」じゃないのか?」なんてのんびり聞いてきましたよ!」
グラシスの言葉に守護獣達は「お…おぅ…」と口にする。
「後でランドの旦那に「「空竜」見たことあるのか?」って聞いたら、以前「空竜」に会った事が有るって言ってましてね…しかもその「空竜」を旦那はボコったって言うじゃないですか。そりゃあ俺じゃあ勝てませんって!」
「「「空竜」をボコった?」」
グラシスの言葉に白虎、朱雀、青龍は同時に叫んだ。
「そういや1800歳の「空竜をボコった」と言ってたな」
玄武がそう言うと、他の三人の守護獣達は「そういう事は先に言え!」と叫んだ。
「そらアタイが勝てるわけ無いか…」
「私の魔物が片手間でやられるわけだわ…」
「なる程な…それ程の実力なら先程の気配も頷けるというものだ」
そんな感想を口にしてから、三人は不意に「にしても…」と呟く。
「その1800歳の「空竜」って何者かしら?」
「さてな、とりあえず年齢的に…俺達が知ってる彼等ではないようだが」
「アイツ等はアタイ達より歳上だもんな」
そんな会話をする三人に、玄武は「もしかしたら、ランドはアイツ等よりも強いかもしれねぇな」と口にした。
玄武の言葉に青龍達は「流石に無いだろう…」と口にした。
「彼はこの世界において…神々の次に強いと言っても過言ではない存在だぞ」
「そうよ、彼の相方は基本大人しいからともかくとして…流石にランドでも彼にはねぇ…」
「アタイ達でもアイツには勝てないからな、アイツに勝つ可能性あるとしたらあの魔族の女ぐらいだろ」
そう言葉にする三人に玄武も「ま…流石にそれはねぇか」と口にした。
「流石にランドと言えど…「災害竜ガルヴターヴァ」や「魔王バルゼルト」には勝てねーよな」
「「あはははははは…!」」
そう言って笑う守護獣達を見て、グラシスは「へぇ、まだまだ世の中には強い人がいるんですねぇ。ランドの旦那より強い人もいるんだ…」と呟いた。
よもや既にその内の一人はランドに地面に刺されてオブジェにされ、もう一人は孫娘の婿にしたがってるとは思いもしない守護者達だった。




