神々との会話と賜ったもの
ランが聞こえてきた声に固まっていると、聞こえてきた声の主達はそんな事を気にする様子もなく談笑を続けていた。
どうやら聞こえてきた声から、会話してるのは男女のようだった。
『にしても最近は冷えてきたよなぁ、年末も近いし今年はどうすっかなぁ…』
『どうするもなにも、いつも通りのんびりした年末でいいんじゃないかしら。ここ数年は私達も色々と動いてたわけだし』
『それも悪くはねぇけどなぁ…なんかこう大きな出来事とか起きたりしね〜もんかね。例えば世界がまた危機にさらされるみたいな?』
『私達が世界の危機を望んでどうするのよ…』
『がはは、それもそうだな』
(…えーと…?)
ランは聞こえてくる会話に混乱しながらも、自分なりに頭の中で考える。
(なんやろこの聞こえてくる会話、声だけ聞いてたら…どっかの夫婦が鍋つつきながら今年の年末どうするか会話してる様にしか聞こえんけど?)
ランはそんな感想を抱きはしたが、一先ずもう暫く会話を聞いておこうと判断しそのまま祈り続ける。
『まぁ世界の危機とかは冗談としてだ、そろそろ俺達もなにかしら動いたほうがいいかな?』
『そうねぇ、今度はなにをしようかしらね?』
そんな夫婦のような会話をしているところに、もう一つ別の声が聞こえてきた。
『お二人とも、のんびり過ごされるのは構いませんが…もう少し神としての自覚や威厳というものをですね…』
(なんか増えた、あとやっぱり会話しとるの神様やったんや…)
ランは頭の中で今までの二人とは違う声が増えて困惑する。
『かぁ〜っお前は本当に真面目だなぁ。平和な時くらい俺達ものんびりしたっていいじゃねーか…』
『勤勉なのが貴方のいいところだけどね、ずっと気を張ってると疲れるわよ?』
『どの人達のせいだと思ってるんですか?』
『『俺達?』』
『解ってるならしっかりしてくださいよ…』
『わかったわかった』ゴクゴク…
『気をつけるわぁ〜』モグモグ…
『飲み食いしながら返事しないでください!』
『『はーい♪』』
『全くもう…』ハァ…
新しい声の主は二人の言葉にそう言うとため息をつく。
どうやら新しい声の主は、この神様らしい二人には大分苦労をさせられてるようだった。
(なんちゅーかアレやな、ウチが子供の頃にやらかした時のイブキみたいな雰囲気やな…)
ランは聞こえてくる会話にそんな感想を抱きつつ祈りを続け、そこでふと疑問が浮かんだ。
(そういえばさっきからウチにはこの声聞こえてくるけど、向こうにはウチの声って聞こえてるんやろか?)
そんな考えが浮かんだランは(試してみるかな?)と思い、祈りを続けながら向こうに(声よ届け)という気持ちを含めて頭の中で声を出してみることにした。
『全く…こんな様子が人間たちに知れたら、貴方方の神としての威厳が台無しになりますよ?』
『ヘーキヘーキ、誰も聴いてたりましてや見てたりしねーよ♪』
『そうよねぇ、私達の素を知ってるのなんてこの世界にはほんの僅かな者しか…「あのーすいませーん…」…!』
声の主に神達がそう返しているところに、ランの少し伺うような声が割り込んだ。
『えっ、貴方今なにか言ったかしら?』
『いや俺じゃねーぞ、お前なんか言ったか?』
『いえ私ではありま…ってお二方そこの水晶見て下さい、誰かが私達のところに魂の繋がりを起こしてますよ!』
『えっマジ!?』
『あらやだ…全然気が付かなかったわ!』
ランの声が聴こえたのか、なにやら慌てたような声がランの頭の中で流れ出した。
― ― ―
その頃、上の階層でランを待っているランド達は…
「ラン様大丈夫なのでしょうか…」
「信じて待つしかないな…」
そう心配するイブキとランドに、青龍は「そう心配するな」と言葉を返す。
「偉大なる神々は我らを含め…この世界に生きるものを平等に見守ってくださる。直接的な関わりはされないが、私利私欲で傲慢な態度をとられるような方ではない。それにここではあくまでも「神託」という形でお言葉を聴けるだけだ、それ以上のことは無いはずだ」
「だったらいいんだが…」
ランドは青龍の言葉にそんな反応をしながら、そのまま守護獣達に質問をする。
「ところで…さっき青龍達は神に「会った」と言っていたが、実際に見た神様とやらはどんなんだったんだ?」
ランドの質問に守護獣達は「私達がお会いした神は…」と説明を始めた。
「先程言った「災厄」を封じ込めてから、降りてきた時神は男女それぞれの姿をした二人で現れになった。男の方はとても凛々しく逞しい外見をされており、その気配たるや当時の我々ですら思わず膝をついてしまうほどの凄みを持たれていた」
「女性の方も見た目麗しく、それでいて一切の隙を感じさせない目付きをされていたわ。腰に携えられていた剣からは…見てるだけで斬り刻まれるんじゃないかという圧が感じられたわね…」
「強そうとかそういう次元じゃねぇ…絶対強者というものを肌で感じたな」
「アタイもあの二人には挑もうと思わなかったな」
守護獣達の言葉にグラシスは「ひぇぇ…兄貴や姉御がそんなにビビる存在だなんて…」と身を震わせる。
「そ…それ程の存在ですか…」
イブキも守護獣達の言葉に緊張する。
「へぇ、やはり神と言うだけあって凄いんだなぁ…」
ランドも感心するような声を上げつつ言葉を続ける。
「それ程の存在なら、ランが「神託」を聴くことが出来たとしたら…さぞや立派で威厳ある喋り方をするんだろうな」
「当然だ、あの者に神の声が聞こえた場合…彼女はその偉大なる気配に声だけでも緊張するに違いあるまい。それ程に神々は立派で荘厳たる存在なのだ!」
自信を持ってそう返す青龍に、ランドとイブキは「へぇ〜」と声を出すのだった。
― ― ―
一方、その青龍曰く「立派で荘厳な」神々はというと…
『やっべ、いつから聴かれてたんだろ。とりあえずちょっと待っててくれよ、そこのえーと…姉ちゃんかな…すぐに用意するからな!』
『あらやだ、私自分のローブどこに置いたかしら?』
『おい俺の杖とマント何処だ?』
『貴方、とりあえずその腹巻きを外しなさい』
『えっでもこれないと腹が冷えるし…お前も早くその羽織ってる半纏脱げよ』
『ローブを見つけてからじゃないと寒いじゃない』
『そう言ってもお前半纏姿で「神託」をする気かよ?』
『貴方も腹巻きしたままでしょう』
『二人共落ち着いてください、あの者には私達の姿は見えてませんから。声だけですから今の様子を言わなきゃ気が付かれませんから!』
『『あっ、そうか!!』』
もう一人の声に我に返った二人は、そこでようやく落ち着くと…ランの頭の中に言葉を投げてきた。
『えーごほん…よくぞこの場までやって来た私の愛しい子よ、私はこの世界の創造神たる存在である。此度はよくぞ試練を乗り越えた』
『貴女の偉業はとても素晴らしいものです、しかしそれに驕ることなく貴女のまわりにいた者たちへの感謝の気持も決して忘れてはいけませんよ』
先ずは男の声がそうランに話しかけ、続いて女性の声がそう言葉にした。
(は…はぁ…)
ランはさも威厳があるように…自分の頭の中で聴こえる声にそう返しつつ、思わず余計なことを考えてしまう。
(エエこと言うてるんやけど、今この二人って腹巻きと半纏姿なん…『それは忘れなさい』…あ、すんません)
そう思ったランの思いが聴こえたのか、ランの頭の中にそう声が響きランは思わず謝った。
『さ…さて…ここまでたどり着いた貴女には、私達からささやかながら贈り物を差し上げましょう!』
『そ…そうだな…ここまで来ることができた「証」として、これをそなたには授けよう!』
先程までの動揺を誤魔化す様な口調でそうランに告げると同時に、ランに『目を開き…組んだ手を開けて上に向けなさい』と言葉を投げる。
(は…はい)
ランが声に従い閉じていた目を開き両手の手のひらを上に開くと、ランの目の前に小さな光の玉が現れゆっくりとランの手に降りる。
やがて光がおさまると、そこには「完」という文字が刻まれた「割符」と光る珠のついた髪飾りがあった。
(これは…?)
ランがその二つを不思議そうに見ていると、再び頭の中に声が流れる。
『先ずはこの祠の「達成の割符」です、こちらを持ち帰り「洗礼の儀」の勝利を宣言するのです』
『そしてその「髪飾り」は「身代わりの髪飾り」だ。たった一度だけだが…そなたの命が失われた時に身代わりとなりそなたの命を守るだろう』
聴こえてきた言葉にランは「えっ、そんな凄い物を!?」と思わず声が出た。
そんなランの反応に、頭に流れる二人の声は優しく笑うと『そなたにはその価値がある』と答えた。
そして二人の神の声は『では私達はこれで失礼する』と告げる。
『私達はいつでも貴女達を見ていますよ…』
『これからも後悔の無いように人生を歩むが良い…』
そう告げるとランの頭の中に聴こえてきた声の気配は、ゆっくりと溶けていくように消えていこうとした。
ランはそんな神々の気配に頭の中でお礼を口にする。
(ありがとうございます…腹巻きの神様と半纏の神様…)
ランがそう心の中で呟くと、消えかけていた神々の気配が一瞬戻ってきた。
『あ…そうそう…今話したことの中で、俺達が慌ててたことは言わないようにな!』
『腹巻きや半纏の事も他言無用ですからね!』
(え…あっ…はい…解りました)
ランがそう答えると、神々は『『信じてるぞ!!』』と告げると今度こそ気配がなくなった。
リン「ねぇ…彼女が会話したのは本当に神様なの。どっかの一般家庭の夫婦の様子じゃないの?」
作者「失礼な、ちゃんと彼等はこの作品の世界の神様達ですよ」
リン「神様にしては庶民的というか…青龍が言うような威厳と荘厳さは無さそうだけど?」
作者「そこはほら、作者の私がこんな感じですからね。こんな男が作る世界の神様なんですから…ね?」
リン「そう言われたら納得だわ…」




