試練の終わりと恋の始まり
世間では某偉大なる漫画家の訃報が世界中で報道され追悼されました。
〇〇先生…本当にお疲れ様でした、貴方が残した功績や作品はこれからもきっと世界中の子供達に愛されていきます。
長きにわたり私達に夢と感動を本当にありがとうございました…
舞台の周りでそれぞれが思い思いに行動している間も、青龍とランドの手合わせは続いていた。
「ハイハイハイハイ…!」シュババババババ…!
「なんのぉ…!」ババババババッ…!
互いに相手の攻撃をいなしながら折を見ては反撃し…そして時には体制を崩そうと投げや足払いを仕掛けるが、それを紙一重でかわし再度距離を取って様子を窺う。
そうした互いに譲らない攻防が暫く続いていたが、やがて転機が訪れた。
青龍が自身の攻撃をいなしていたランドの僅かな隙を見つけると、ランドの脇腹めがけてこれまでより速い蹴りを放ったのだ。
「貰ったぞ!」
「…!」バシィ…!
そう声にしたかと思うと、青龍の足がランドに接触しかなりの音が響き渡った。
「ランドはん!」
「ランドさん!」
見ていた位置からだと、ランドに青龍の蹴りが直撃したように見えたランとイブキが心配するような声を出す。
「決まったわ、青龍の勝ちね!」
「ランドの兄ちゃん負けたのか?」
「うーん、流石の旦那も青龍の兄貴には勝てませんか…」
朱雀や白虎、そしてグラシスもそう口にするが…玄武だけは違う意見を口にする。
「いや…それはどうかな」
「「えっ?」」
玄武の言葉に他の面々は不思議そうな顔をする。
「どういうことや玄武のおっちゃん?」
ランが玄武にそう尋ねると玄武は「まぁアイツ等をよく見てな…」と顎で舞台をクイッと指した。
玄武がそう口にするので、ラン達は舞台の方へと視線を向けた。
舞台の上では青龍の蹴りを脇腹に受けたランドが、そのダメージによって少し屈むような形で止まっているように見えたが…
「ぐはっ…!」ガクッ…
そう口にして舞台に膝をついたのは青龍の方だった。
「「えぇっ!?」」
目の前の状態にラン達は揃って驚きの声を上げた。
「えっ、なんでや…なんで青龍はんの方がダメージ受けとるんや?」
「い…今の攻防で一体何が…?」
「青龍、どうしたんだ?」
「そ…そんな…青龍が…」
「あ…兄貴が膝をつくとこなんて初めて見た…」
各々がそんな風に疑問を口にする中、舞台上の青龍は「大した男だ…」とランドに声を掛ける。
「この私があの様な手に惑わされるとはな…」
「アンタはかなりの腕前だからな、俺とあれだけの攻防をしたからこそ乗ってくれると思ったよ」
「ふ…鍛練を重ねたことが逆に仇になったか…」
青龍はそう口にするとスッと立ち上がった。
青龍とランドのやり取りを見ていたラン達は「ど…どういう事?」と首を傾げる。
そんなラン達に青龍は説明する。
「単純な話だ、この男は私にわざと蹴りを出すように仕掛けたのだ。私はそれに乗ってしまいこの者の思い通りに踊らされたのだ」
「「踊らされた…?」」
青龍の説明だけではまだ理解できなかったラン達に、今度は玄武が説明する。
「つまりだな、さっきまでこの二人は凄まじい速度で互いの攻撃を凌いでいただろ?」
「「うん」」
玄武の言葉にラン達は頷く。
「そんな風に互いの攻撃を凌ぎつつ反撃のタイミングを見てたわけだが、そんな時にふいにランドの脇腹辺りに攻撃できるタイミングがあったんだ。瞬時に行動して動いてる攻防の時にそんな隙を見つけたら…」
玄武がそこまで口にするとイブキが「あっ!」と気が付いた。
「そうか…そんな隙を見つけたら思わずそこを狙ってしまうというわけですね?」
イブキの言葉に玄武が「そういうこった」と頷く。
「だがそれはランドの罠だったんだよ、あえて攻撃できる場所を見つけさせることで…そこに来る攻撃に対してのカウンターを狙ったんだ」
「な…なるほどな、次に相手がどこに攻撃してくるか解ってれば…それに対抗する方法で構えてればいいもんな」
白虎もそこでようやく玄武の言っていたことを理解した。
「そうだ、だけどこれは言葉で言うより簡単な事じゃねえ。相手に自分の狙いを悟らせず、その上で相手を自分の思い描いてるように動かさないといけないからな」
玄武がそう補足すると、朱雀が「あぁ…だから青龍はさっき鍛練を重ねたことが逆に仇になったと言ったのね」と納得した。
「普通の戦いの時は、相手の隙をいかに突くかを考えながら行動するものね。そうした鍛練を重ねていたなら、そりゃあ相手が隙を見せたら条件反射でそこを狙うわよね…」
「そうだな、だからこそランドは自分の脇腹にあえて隙を見せて青龍の蹴りを誘い込んだ。次に攻撃してくるところが解ってれば、タイミングを合わせてその攻撃を防ぎながら反撃も出来る。おそらく青龍の蹴りを片手で防ぎつつ、もう片方の手の肘を片足になった青龍の腹に返す刀で入れたんだろう」
そう言って説明を終えた玄武にラン達は「はぁ〜…」と感嘆の声をあげる。
「ランドはんホンマに凄いなぁ…」
そんなやり取りがされている中、無言だったランドが「それで…試練はこれで終わりでいいのか?」と青龍に声を掛ける。
ランドの質問に青龍は「そうだな…」と答える。
「試練に関してはお前の実力は十分に理解した、この階層の下…最下層へと行く資格をお前達が有していることは認めよう」
青龍の言葉にランは「わぁ…」と喜びの声を上げる。
「やったでランドはん、ウチ等「神託の祠」を完全制覇したんや!」
「やりましたねラン様、これで「洗礼の儀」の勝者はラン様ですよ」
イブキもランの横でランと同様に喜びの声を上げる。
「おおきになイブキ、そしてなによりランドはん…ホンマにありがとな。ランドはんがいたからウチはここまで来れたんや」
ランからのお礼の言葉にランドは「喜んでくれてなによりだ」と言葉を返す。
「と言ってもまぁ…ウチはここまで特になんもしとらんのやけど…ハハハ…」
ランはランドの言葉を聞いたあと、そんな乾いた笑いを浮かべる。
「なんやろな…ランドはんに守られてイブキに助けられながらここまで来たけど、結局ウチが来た意味ってなんなんやろ…」
そう言って少し落ち込むランに、ランドは「意味ならあるじゃないか」と口にする。
「え?」
ランドの言葉にランはランドの方に視線を向ける。
「ランドはん、ウチが来た意味があるってどういうことや?」
ランがそう尋ねるとランドは「だって…」と言葉を返す。
「ランがここに来ることになったから俺はここに来たんだ。そしてランが今回の挑戦者じゃなかったら、あのアホが「洗礼の儀」の勝者になっていたんだぞ」
「そ…そらそうかもせんけど…それがどうしたんや?」
「そうなるとあのアホは益々図に乗って街で好き放題したかも知れないだろ、そしてランを慕ってくれているあの双子だってどんな目にあっていたか解らない。ラン自身は自分が何もしてないと思ってるかもしれないが、ランが今回の「洗礼の儀」の挑戦者になることで救われた人もいるんだ。だから何もしてないなんて思うことはないぞ」
そう言いながらランドは、普段ラジにしている調子でポンポンとランの頭を撫でる。
「実際になにかしたわけじゃなくても、人というのはそこにいてくれるだけで…若しくは普段関わりを持つだけで誰かの助けになることもあるんだ。だからランがここに来たことは無意味じゃないんだよ、少なくとも俺はランと知り合えたのは嬉しいからな」
「ランドはん…」
ランはランドの言葉に…自分の心の中にあった「不甲斐なさ」が無くなっていく様な感覚を覚える。
「…そうやね…ウチが自分を役立たずなんて思ったら、ここまで一緒に来てくれたランドはんやイブキを否定することになるもんな。ウチはウチらしく過ごしたらいいんやな!」
「そういう事だ、だから自身持って凱旋すれば良いんだよ」
「うん、ありがとなランドはん!」
ランはそう言ってランドに笑顔を向けた。
「うん、いい笑顔だ。やはりランは笑ってるほうが似合うぞ」ポンポン…
そう言ってランドは再びランの頭をポンポンと撫でた。
「もう、子供あやすみたいな撫で方やめてぇな」
「ははっ悪い悪い、丁度いい高さなんでな」
「もぅ…」
ランはランドに抗議するような視線を向けつつも、心の中では別のことを考えていた。
(おおきになランドはん…おかげでウチの中のモヤモヤが無くなったわ。ホンマにランドはんはエエ人やな…強くて優しくて、ウチの中でドンドンとランドはんの存在が大きなってる気がするわ。ランドはん大好きやで…///)
「……って…は…?」
ランは自分が心の中で思っていたことに自分で思わずツッコミを入れる。
「どうしたラン?」
「ラン様?」
ランが妙な声を出したのでランドとイブキが不思議に声をかける。
「あ…いや…なんでもあらへんよなんでも」
そんな二人にランはそう返すと、両手で自分の頬を抑えながら再び思考する。
(今…ウチ心の中でなんて言うた…ラ…ランドはんの事が好きって言うたか…///)
ランは再度自分が心で思ったことを反芻しながら…試しにチラリとランドの方に視線を向ける。
「ラン…?」
そんな自分を不思議そうに見つめるランドと目があった途端…
「/////」ボンッ…!
ランの顔は思わず即座に赤面した。
ランはランドから視線をそらすと頭の中で考える。
(な…なんや…ランドはんの顔がまともに見られへん。ウチこんなんやったっけ///)
ランはそんな事を思いながらここまでのランドとのやり取りを振り返る。
自分の事を「美人」だと言ってくれた時の事や、初めてランドの素顔を見た時の胸の高鳴り…それと同時にふいにイブキが言っていた「好きな人ができたら…」の言葉。
最初は年の近い若い男であることや、素顔を見てしまったことから来る緊張だと思った。
ダンジョンの道中でも「気の良い若い兄ちゃんでイケメン」ということから変な意識が向いたくらいだと思った。イブキの言っていた事も「異性が近くにいたら…」ということから来る緊張の延長だと考えていた。
だが今、ランはランドに優しく声をかけられ…優しく頭を撫でられたときに心の中で芽吹いてい花が咲いたような感覚を起こした。
「異性を意識した」という五分咲き程度だった心の中の花は、たった今満開の時期を迎えた。
満開となった心の中の花…それが「恋」という気持ちの芽生えだとランは気が付いた。
(そうか…これが人を好きになるということか。ウチはランドはんに恋してるんやな…ウチもっともっとランドはんの事が知りたくなったわ///)
こうして青龍との「試練」が終わった時、同時にランの中では「ランドへの恋心」が始まったのだった。
リン「また一人、日本が世界に誇る文化の先導者…いえ…神様がいってしまわれたわね…」
作者「本当に残念です、まだまだ先生の作品をそして活躍を見たかったです」
リン「貴方だけじゃなく「なろう小説」の執筆者の中には…あの先生の作品に触れて育った人は沢山いるでしょうね」
作者「むしろ触れたことが無い人の方が少ないでしょうね。あちらの世界でもきっと沢山の方を笑顔にしていると思います、改めまして〇〇先生…本当にお疲れ様でした」
登場人物一同「「お疲れ様でした!!」」




