空を飛ぶランド達と発想がぶっ飛ぶアリス
リディアが泣き止んだところでランドはひとまず「老狼王」の亡骸をマジックバックに仕舞うと「ひとまず街に戻るか」とリディアに声をかける。
「そ、そうだな(ランドの目の前で泣いてしまった、恥ずかしい///)」
そんな事を考えているリディアにランドが「どうかしたか?」と尋ねる。
「な、なんでもない。あ、弾き飛ばされた私の剣を拾わないと」
そう言ってリディアは自分の剣を拾いにいくと「あ」と声を出す。
「どうしたんだ?」
リディアの反応にランドがそう問いかけるとリディアは「剣が欠けてしまってる」と返事をした。
ランドがリディアの剣を見ると確かに一部が欠けていた。
「あー、「老狼王」の爪にでも弾かれたのか、それに鎧も脇腹の所が壊れてるな」
「どうしよう…」
困った顔をするリディアにランドは「明日にでも知り合いの鍛冶屋を紹介してやるよ、ひとまず街に戻るとしよう」と告げた。
「何から何まですまないなランド」
そう言って申し訳なさそうな顔をするリディアにランドは「気にしなくていい」と返した。
「それにしても予定より遅くなってしまったな、急いで戻らないと暗くなるって…ん?」
そう言ってランドが歩き出そうとした所に…
ガサガサッ!
茂みが動くとそこから銀色の鱗を纏ったドラゴンが姿を現した。
「おや…」
特に慌てる様子もなくそう口にするランドに対してリディアは突然の災害クラスの魔物の出現に「ドドド、ドラゴンだと!?」と驚きの声をあげる。
「老狼王」の脅威が去ったと思った瞬間に更に絶望的な状況を感じたリディアは「ラ、ランドすまない!私のせいでお前まで巻き込んでしまった!せめてお前だけでも逃げてくれ!」とランドに謝りながら欠けてしまった自分の剣を構えようとするが…
「だから落ち着けリディア、それにさっきも言ったがそんなことしなくていいから」
ランドがそう口にするのでリディアが「し、しかし…」と戸惑うと…
「あ、師匠。向こうの方を見て回りましたがこれといって妙な気配を感じなかったのでこちらに来たんですが何か見つけましたか?」
(喋った?)
目の前のドラゴンが人間の言葉を発したことにリディアが驚いていると…
「そうか、こっちは「老狼王」がいたぞ。トルテが言っていたのはそれかもしれないな。トルテどうだ、まだ気配は感じるか?」
「ううん、少し前に感じなくなったわ。だからランドが言ってるのが気配の正体だと思う」
「そうか、なら一先ずは片付いたということだな」
「「老狼王」ですか、流石ですね師匠」
「そうでもないさ、ラジでも勝てるだろ?」
「負けはしないでしょうがアイツちょこまか動くからめんどくさいんですよね」
「確かにな」
突如現れたドラゴンとよく見たらその頭の上に乗っている小さな少女と普通に話し始めたランドにリディアは「へ?」と間の抜けた声を出す。
「ちょうど良かったラジ。今から街に戻ろうと思ってたんだが乗せてくれるか?」
「わかりました、でも一度里に戻ってアリスさんたちに伝えてもいいですか?森を見回ってくると伝えているので」
「そうか、余計な心配をさせることになるしな。そのあとで構わないぞ」
「はーい、ところで師匠そちらの方は誰ですか?」
ラジはランドの言葉に返事を返してからランドの横にいるリディアに視線を向ける。
こちらを見つめるドラゴンにリディアはビクッとなるがランドが「大丈夫だこのドラゴンは知り合いだ」と告げる。
「彼女はリディアという冒険者だ、まだ若いがAランクの実力者だぞ。今日は一緒に魔物の間引きを手伝ってもらってたんだ」と伝えた。
ランドの言葉に「そうですかはじめまして、師匠の弟子のラジターヴァと言います。ラジと呼んでください」とドラゴンがペコリと頭を下げる。
「師匠?弟子?」
いまいち状況が理解できないリディアにランドが「まぁ後で説明するから、ひとまず戻ろう」と声をかける。
「じゃあ師匠乗ってください。リディアさんもどうぞ」
そう言ってラジが体を下に屈めたのでランドは「すまないな、ほらリディアも」とリディアに声をかけながらラジの背中に乗った。
「あ、ああ…」
少し戸惑いながらもリディアはランドに続いてラジの背中に乗った。
「ではいきますよ」
そう言ってラジが空に飛び上がった。
「わわわ!」
初めての体験に戸惑うリディアにランドは「落ちないようにしっかり掴まっておけよ」と声をかけるのでリディアはランドの背中に腕を回してしがみついた。
やがてエルフの里の入り口近くにラジが降り立つと少し前からラジの姿を視認していた見張りが伝えたのかアリスとサトラが出迎えた。
「ラジさんトルテさんおかえりなさい…っておやランドさん?」
「二人ともおかえりなさい…ってランドさん!どうしたのですか?もしかして私に会いに来てくれたのですか?それなら言ってくださればいつでも用意しましたのに!少しお待ちください、今すぐ身体を綺麗に洗ってきてランドさんにもエルフ特性のスタミナ増強の秘薬を用意しますので!寒くなってきましたしその逞しい身体で私の全てを暖めて…べっ!?」バタン!
「だからなんでもかんでもすぐにそちらの方へ繋げないでください!すいませんランドさん、それでどうされましたか?」
矢継ぎ早になにやら口走るアリスをサトラがはっ倒したあとランドにそう尋ねた。
ランドは地面で白目を向いて倒れているアリスに視線を向けてから「あ、ああちょっと精霊の森でギルドの依頼をしてたんだが…」と今回の経緯を説明する。
「そうですか、「老狼王」が出現してたとは。大きな被害が出る前にランドさんが討伐してくださったのは幸運でしたね。それにそちらのリディアさんも無事で良かったですね」
ランドから説明を受けたサトラがそう言葉にするとまわりのエルフの兵士達も「我々だと討伐しようにも被害は避けれないでしょうからな」と頷いた。
「まぁそれで今からラジ達と街に戻るんだが、伝えずに戻ると心配をかけるかと思ってな。一度伝えに来たわけだ」
「そうでしたか、わざわざお気遣いありがとうございます」
「いやいや、それじゃあ伝えることは伝えたし俺は戻るよ」
「はい、お気をつけて」
サトラがそう言ってランドを見送ろうとしたとき目を覚ましたアリスが「ラ、ランドさん」と声をかける。
「どうしたアリス?」
ランドがアリスの方を向いて返事をするとアリスは「あ、あの年末の王都での「建国祭」を一緒に回りませんか?」と声にした。
それにランドは「別にいいぞ?」と返す。
「ほ、ほんとですか?」
「特に断る理由もないしな、どこかで時間を作るよ」
「は、はい!」
「アリス様良かったですね、ランドさんはいいお店とかもご存じでしょうから」
「はは、サトラにそう言われるとご期待に答えられるようにしないとな」
「ふふ、ランドさんとならどこでも楽しいでしょうけどね」
(!?)
「俺もサトラと見て回るのは楽しいだろうと思うよ」
「その時はよろしくお願いしますね」
「ああ、わかったよ」
(サ、サトラ…今さらっと自分もランドさんと回る約束取り付けたわね!?)
自分に便乗してあっさりとランドと祭を回ることを決めたサトラの話術にアリスは危機感を感じた。
「それじゃあ俺は街に戻るよ、ラジ頼むな」
「はーい」
ランドはそう言って再びリディアとラジの背中に乗った。
「お気をつけて」
「また顔を出してくださいね」
「ああ、それじゃあ」
そう言ってラジの背中に乗ったランドとリディアは飛び立った。
見張りの兵士も持ち場に戻り、ランド達を見送ったサトラが「ではアリス様、屋敷に戻りましょう」とアリスに声をかけるがアリスはジーッとランドが飛び立った方向を眺めていた。
「どうされましたか?」
サトラがそうアリスに尋ねるとアリスは「いえ、ふと気がついたんだけどラジさんが羨ましいなと思ってね」と返した。
「ラジさんがですか?確かにドラゴンでお強いですし空も飛べますし私達に出来ないことができるのは羨ましいと思わなくもないです…「いえそこじゃなくて」…が?」
「ラジさんてたまにランドさんを背中に乗せるじゃない?」
「はいそうですね」
「つまりランドさんを乗せてるときはズボン越しとはいえランドさんの「アレ」が背中に触れてるわけよね?」
「……」
「ラジさんの精神力ってすごいわね!私ならそう考えたらとても正気で飛んでいられないわ、いや…ある意味トんじゃうかもしれないけど」ハァ///ハァ///
「……」
「それにリディアさんも落ちないためかランドさんの背中に掴まっていて羨ましいわ、私ならどさくさに紛れて手を下にズラしてランドさんのを触ろうとしてしまうかもしれないわ!」ハァ///ハァ///
「……」スタスタ
「あぁ、でも流石にそれは引かれるかしら…どう思うサトラ?」クルッ
「あれ?」
「……」スタスタ
アリスが振り向くと屋敷に向かって去っていくサトラが視界に入る。
「ちょ、ちょっと?一人で戻らないでよサトラ!」
そんなアリスの声を背中に聞きながらアリスの妄言に付き合いきれないサトラは(いっそ一度ラジさんに上から落としてもらったらまともになりますかね?)と思いつつ一人で屋敷に向かいながら後ろから追いかけてくるアリスにため息をつくのだった。
その頃ラジに乗って街へ戻る途中のリディアは…
(ドラゴンを弟子に持ち、「老狼王」を倒す強さ…ランドは一体何者なんだろう?)
そんなことを考えながらランドの背中を眺める。
(大きな背中だな、小さい頃のお父さんの背中みたいだ。それにさっき怒ったのも私を本当に心配してくれたんだな、優しいやつだ。まるで正義の味方みたいだ…ってなにを考えてるんだ私は///。私はまだ見ぬ強者のランドさんを探しているんだ同じランドで強いと言ってもこのランドはCランクだから私の探しているランドさんとは別人だぞ?)
そんななにやらモヤモヤした感情を抱いていた。




