凄腕ポンコツ剣士リディア見参!
シシリア達と喫茶店で別れたランドは街の近くのちょっとした森の中をブラブラと散策していた。
「うーん、いい天気だから森に来てみたがたまには散策も悪くないな。といってももう冬だしあまり動物も見かけないけど…。まぁ今日は別に依頼で来てるわけでもないしもう少し散策したら街に戻るとしよ…「てめぇ!この方がどなたか解ってるのか!」…ん?」
どこからか男の怒声が聞こえてきたのでランドはなんとなくそっちの方へと足を運ぶ。
少し歩くとなにやら三人の冒険者風の男が一人の剣士の様な女性に声を荒げて絡んでいるのが見えてきた。
「会ったばかりなのに知るわけないだろう?そもそも私は人を探していてお前達にその人を知らないか尋ねただけなのになにをそんなに怒ってるのだ?」
絡まれていた女性はさも「なぜ怒鳴られなきゃならないんだ」と言いたげな顔で男達にそう返す。
それが気に入らないのか男達は益々ヒートアップしていた。
「生意気な女め!いいか、この方は今年の9月に隣の帝国で開かれた武術大会で優勝したランドさんだ!」
「痛い目にあいたくなけりゃ大人しく財布を置いていけ!」
三人の内の二人が自分達の後ろにいるもう一人の男を手で指しながらそう声にする。
近くの茂みから様子を見ていたランドは(最近俺の名を騙って脅迫や恐喝をしている奴がいるとは噂で聞いていたが…ホントだったのか)と心で思った。
「だから、なぜ財布を置いていかなきゃならんのだ。というかその男が私の探している男のランドだと?とても強そうには見えんが?」
「てめぇいい加減に…「まぁ落ち着け、そんなに声を荒げるなよ」…兄貴?」
後ろの男は部下の男を宥めると女性に声をかける。
「嬢ちゃん、いきなり俺みたいな有名人に会って緊張するのはわかるがな…俺も弱いものいじめはしたくないんだ。大人しく財布を置いていったほうがいいぜ?それとも嬢ちゃんは綺麗な顔してるし身体で払ってくれてもいいけどな」
そう言ってニヤつく男にその女性は「下品な男だ、凄腕と聞いたから探してみればこんなゴミだったとは」とため息をついた。
女性のその言葉に男は顔を真っ赤にすると「ふざけやがって!もういい!こうなりゃ力ずくで言うことを聞かせてやる!」と叫ぶと腰の剣を抜き、それに合わせて残りの二人も剣を抜く。
ランドは茂みから飛び出して助けようかと思ったが(いや、必要なさそうだな…)と判断し少し様子を見た。
「脅しの次は強盗か、ランドという男は性格が曲がってるようだな」
女性はそう言って剣を抜くと構える。
「生意気な!やっちまえ!」
男達が一斉に女性に斬りかかるが…
カン!
ギン!
ゴン!
その女性は「遅い!」と一瞬で三人の剣を弾き飛ばすと更に三人の上着だけを身体に傷をつけることなく細切れに切り裂いた。
「な?」
あっという間の出来事に男達は絶句する。
「まだやるか?次は服だけでは済まさないぞ?」
女性の声かけに男達は「ひ、ひぃぃぃぃぃ!すいません!ホントは俺達ランドなんて奴知らないんですぅぅぅ!」と悲鳴をあげると逃げていった。
その様子を見ていたランドは(ふむ、佇まいに隙がないからかなりできるとは思ったが、早くて鋭いな…ペンドラよりも腕がたつかもしれない)と感想を抱いた。
その女性は「はぁ、また偽物か」とため息をつくと剣を鞘に納める。
「いったいいつになったら本物に会えるのか…」
女性はそう呟きながら頭を掻くと「それで、そこにいる奴は出てこないのか?隠れているのはわかってるぞ!」とビシッと指を指した。
ランドは(気付かれてたのか?いやでもなぁ…)と思いながらも…
「敵意はない、だが…いい辛いがそこではなくここだぞ?」
ランドは女性がビシッとポーズを決めて指を指した茂みとは真反対の茂みから立ち上がって姿を見せた。
かっこよくポーズを決めていた女性はゆっくりと振り向くと「ほ、ほほう…私に見えない速度で正面から後ろに回るとはなかなかの俊敏性だな///」と照れた様子で声を発する。
「いや、ずっとこの茂みにいたんだが?」
「も、勿論気付いてたとも!わざと反対を指差すことで相手を油断させたのだ!まんまと引っ掛かりおったな///」
「たった今「正面から後ろに回るとは」とか言ってなかったか?」
女性の言葉にランドがツッコミを入れると「わ、私は過去は振り返らない主義なのだ!///男が細かいことを気にするんじゃない!」と逆ギレされた。
ランドはそんな女性を見て(うーん…彼女、腕はたつようだがもしかして少し残念な子なのか?)
ランドの思考が顔に出たのかその女性は「お、お前もしかして私が「残念な奴」と思ってないか?」と言ってきた。
「(しまった、顔に出てたか)いや…別に思ってないが」
ランドはそう言いながら女性から目を逸らす。
「ならなぜ目を逸らす?くそう、村のみんなと同じ反応しやがって。みんな「アンタは腕はたつけど考えが足りないからもっと慎重になりなさい」って言うし…」グスッ
男達相手に圧倒的な実力を見せつけていた女性はなぜか涙目になっていた。
(なんとなく彼女の村の人々の気持ちがわかる気がする…)
「まぁ、危なかったら助けようかと思ったが必要なかったようだしそれじゃあな(悪い奴じゃ無さそうだがこれ以上関わるのはよそう。聞いてた話だと俺を探してたみたいだが、疲れそうだし)」
そう言ってランドは振り返りその場を去ろうとしたが…
「まぁちょっとまて」ガシッ
女性に腕を掴まれた。
「な、なんだ?(く、逃げられないか)」
「ここで会ったのもなにかの縁だ、せっかくだから名前だけでも教えてくれ」
「い、いやただの通りすがりなので名乗るほどのものでは…「私はリディアと言う名だ!こちらの名を教えたのだからそっちも礼儀として教える義務があるよな!」…(な、なんて強引な奴だ)」
「女性の名前を聞いておいて自分は名乗らないなんて事ないよな?」
リディアと名乗った女性はそう言ってグイッと顔を近付けてくる。
頭はともかく顔はあどけなさを残しつつも美人と言って差し支えないリディアに迫られてランドは少し戸惑いつつもその圧に押され(これは名乗らないとずっと追いかけて来そうだな…勝手に名乗ったくせに…)と観念して名乗った。
「…冒険者をしているランドだ」
「そうかランドかいい名前だな、ん…ランド?」
ランドの答えにそう返したリディアはその名前に反応し少し間を空けて…
「な、なんだとお前がランドか!?」
そう声を上げた。
その反応を見たランドは(俺が(不可抗力だが)なんかしたときのギルマスの気持ちが少しわかった気がする)と思うのだった。




