海賊達より凄いものを奪ったマーセル
街での買い出しが終わった翌日、マーセル達の船は午前中には修理が終わり午後になって出航の時を迎えた。
「重ね重ね世話になったな」
マーセルがアルガス達に対して改めて礼を述べるとアルガスは「こちらこそ楽しい休暇になったぜ。お前さん方にしたらトラブルだったかもしれねぇがな」と答えた。
「ハハハ、トラブルには違いないがそれをもって余る良い経験ができたぜ。(それにランドとも出逢えたしな///)」
そう言って笑うマーセルを見ながらフォルクスは「おいランド、ここにいるか?船には乗ってないよな?」とまわりを見渡す。
「ここにいますよ、流石に二回も居眠りしませんから」
そんなフォルクスにランドは若干戸惑いながらも返答した。
「なんだ?俺としてはランドは頼りになるから乗ってくれても良いんだぞ?」
笑ってそう口にするマーセルにランドは「いやいや、船乗りが悪いとは言わないが俺は冒険者だからな」と返した。
「は、本当にマイペースなやつだなお前は」
そう言ってマーセルはまた笑ったが改めて真剣な顔をすると言葉を続ける。
「ランド、お前さんには特に世話になった。また会うことがあればよろしくな」
「ああ、またいつか」
そう言って二人が握手をしていると「船長、ちょっとよろしいですか?」と乗組員が声をかける。
「どうしたんだ?」
マーセルがランドの手を離してそう返すとその乗組員は「実は以前の兄貴の事もあったんで今回は倉庫の奥まで見て回ったんですが、ウォータースライムの寝具の袋が一つ破れていました。幸い外装だけで中の寝具には変化ありませんがどうしますか?」と報告する。
「なに?どういうことだ?」
マーセルの言葉に答えたのはランドだった。
「あー、すまん。もしかしたら俺が横になったときに破れたのかもしれないな」
ランドが頭を掻きながらそう言葉にするとマーセルが「おいおい…」と困った顔をする。
「破れたのならそいつは商品としては売れないな、全く…細やかとはいえ利益が減っちまうなぁ。まぁわかった、とりあえずお前は船に戻っておけ」
マーセルにそう言われた乗組員は「わかりました」と返事をして船に戻った。
そしてマーセルにランドが「す、すまん。なんなら俺がそれを買い取るが?」と提案するがマーセルは少し思考すると「ランド、ちょっとこっちに来な」とランドに手招きする。
「なんだ?」
言われるまま近付いたランドにマーセルが「個人的にはお前には感謝してるから代金なんて取りたくねぇが、こちらも商人として無償というわけにはいかないんだ」と言葉にする。
「だ、だからそれなら俺がそれを買い取…「だからこれはその代金として貰うぜ///」…へ?なにをって…んぅ?」
「ん///」
ランドの言葉に被せるように言葉を発したマーセルはランドの服を掴むと自分に引き寄せてランドの口に自分の口を重ねる。
ランド好意勢「「なっ!?」」
アルガス「は?」
セーラ「あらあら」
フォルクス「ふぁ?」
ゼル「いぃ!?」
ペンドラ「はへ?」
ガイル「ふむ、そういった世界もあるか?」
リン「まぁ(キャー///マーセル×ランドなのね!///)」
カインズ「い?」
ダストン「へ?」
ミーシャ「わわわ///」
アレックス(ホッホッホッ、マーセルの嬢ちゃんは大胆なことをするのう)
ファル「マーセルお兄ちゃんとランドお兄ちゃん仲良しだね」
トルテ「アリス達はなにを慌ててるのかしら?」
そして数秒経ってランドとマーセルの口が離れたとき二人の間に細い唾液の糸が伸びていた。
ランド好意勢((し、しかもディープ!?))
そんな女性陣の様子など知らないランドは突然のことにポカーンとしていた。
そんなランドをよそにマーセルは「しっかり支払ってもらったぜ///じゃあまたな」と告げると船へと乗り込んでいき「出航だぁー!」と号令を出した。
そうして海岸から離れていくドルフィン号を見送ったランド達だったが少し間を開けてハッとしたランド好意女性陣と数名は円陣を組んでなにやら話し出す。
「ラ、ランドさんが…」
「い、今すぐ私の口で消毒を…」
「どさくさになに言ってるんですかアリスさん!」
「ラ、ランド君の唇が…」
「凄かったねソアラちゃん…って?」
「……」
「き、気絶してる!」
「お、落ち着けみんなマーセルは男だノーカンだノーカン」
「仲良しダメなのー?」
「し、師匠~」
プチパニック状態である。
一方男性陣は…
「マーセル、そんな趣味だったのか」
「ランド自身のトラブルなんてこともあるんだな…」
「先生も固まってるな」
「まぁそりゃ驚くか」
等と話していた。
そんな中ゼルが代表して「ランド大丈夫か?」と声をかけるとポカーンとしていたランドもハッとして「いや、まぁ驚いたが大丈夫だ。マーセル達の暮らすところではそういった習慣があるのかもしれないしな」と答えた。
そのランドの言葉には全員が…
((マイペースすぎるだろ…))
と呆れるのだった。
そしてアルガスが「ま、まぁとにかく明日には俺達もここを出るからな。明日のために今日はゆっくりしようぜ」と口にすることで全員が「そうしますか」と屋敷に戻り翌日王都に向けて出発し帰還するのだった。
-その頃のドルフィン号―
(や、やっちまった///ランドに変なやつと思われてなければ良いけど…)
そんな事を思いながらマーセルが甲板にやって来るとそこには乗組員達がニヤニヤしながら待ち受けていた。
「なんだお前ら?揃いも揃ってどうしたんだ?」
乗組員達の様子に怪訝な顔をするマーセルだったがそんな中一人の乗組員が声を出した。
「船長…いや今はあえてお嬢と呼ばせてもらいやしょう」
「な、なんだよ?」
「お嬢、ランドの兄貴に惚れやしたね?」
「な///なにを根拠に///」
「いやいや、あんなに大胆に唇奪っといて根拠もなにも(笑)」
「ぐっ///(み、見られてたのか)」
「お嬢も年頃ですからね」
「兄貴にまた会えると良いですねお嬢」
そう言って冷やかす乗組員達にマーセルは「う、うるさい///早けりゃ明日には地元の港に着くんだ!しっかり進路を確認しとけ///」と声を出した。
「あ、そういえばお嬢…売れなくなったウォータースライムの寝具はどうしますか?」
「そうだなぁ…(ランドが寝てたやつか///もしかしたら少しくらいランドの匂いが残ってるかな?)売れないなら俺が使うかな…捨てるのも勿体無いし」
「お嬢…ランドの兄貴が寝てたから匂いが残ってるかもなんて考えてませんか?」
「バ、バカ野郎そんなんじゃねーよ///商人として売れなくても使えるものを捨てるのは勿体無いだろーが///」
「顔赤いですよ?」
「う、うるせー///とにかく全員仕事しやがれ!」
「「アイアイサー」」
乗組員達はニヤニヤしながら各自動き出すのだった。
「ニヤニヤしてんじゃねー!///」
マーセルの照れる声が大海原に響くのだった。
―8月の回想終わり―




