マーセル、自分の気持ちを確信する。そしてこの紋章が目に入らぬか!
翌日、アルガスの頼みでゼル達が馬車で衛兵を呼びに行っている間ランドはマーセルと二人で船の状況を見ていた。
今回は最初にバルチャー達の船による追突で損傷した所以外は無事だったので損傷した所の確認をしたあと明日街に行って必要な物を買いにいくことになったのだ。
「しかしこの短期間に二回も修理をすることになるとはな…」
「確かにツイてないが命あっての物種だ。死んだら元も子もないから仕方ねーよ」
ランドの言葉にマーセルはそう返した後言葉を続ける。
「それに…今回はもしかしたら死ぬどころかアイツらも俺も奴等に奴隷にされてたかもしれない。本当にありがとうなランド、お前が居なかったら俺はアイツらにどんな目にあっていたか…」
マーセルはもしもランドがあの時居なかったらを想像すると少し体を震わせていた。
たとえ男として振る舞っていてもその身は女だ、やはりあの時の恐怖は凄まじいものだったのだろう。マーセルが震えているとマーセルの頭に何か暖かいものが乗っかった。
「?」
マーセルが「なんだ?」と視線をあげるとそこには自分の頭に手を乗せて優しく微笑むランドの顔があった。
「怖かったな、今回ばかりは自分のマイペースぶりに感謝だ。おかげてマーセルの危機に間に合ったんだからな」
そう言って自分の頭を撫でてくれたランドにマーセルは「そ、そうか///でもマイペースもほどほどにしておけよ?またフォルクスに怒られるぞ」と憎まれ口を叩く。
「ハハハ、確かにな。それにマーセルも調子が戻ったみたいだな、そうやって言い返してこそのマーセルだ」
そう言ってランドはマーセルに笑顔を向けるのだった。
ただ純粋に自分の無事を喜んでくれて頭を撫でながら自分に優しい笑顔を向けてくれたランドにマーセルは昨日以上に胸の鼓動が高鳴るのを感じ…
(あぁ、やっぱり俺はランドのことが…)と自分の気持ちにハッキリと気が付いた。
それから少しして、ドルフィン号の修理をするための必要な部品等の確認を乗組員達が終えた頃にゼル達が衛兵を連れて戻ってきた。
アルガスがそれを目にするとランドにドンクを連れてくるように伝え、ランドは物置小屋からドンクを引っ張ってきた。そしてアルガス達とランドとマーセルが衛兵達に昨日の事を伝える。
やって来た衛兵達は「我等を呼びに来た冒険者から少し聞いたが…ドンクと言えば金に汚いところはあるがそれでもこの街では名の知れた男だ。それほどの男が本当にあなた方にそんなことをしたのか?」と最初は少し疑心暗鬼だった。
物置小屋から連れてこられたドンクは「こ、この街の衛兵よ!こやつらの言うことは戯言だ!俺は長年この街で商人をしていたんだぞ!私有地を持つ程の有力者でもどこの馬の骨かわからない者と俺ならどちらを信じるのだ?」と必死に喚く。
衛兵達は「うーん、かといってこの人達がわざわざドンク殿を貶める理由もないだろうし…」と困惑する。
するとアルガスは「衛兵の皆さんちょっとこちらへ」と衛兵達を少し離れた所へ誘導する。
衛兵達は「何ですか、言っときますが我々は賄賂とかは受けとりませんよ?もしそうならあなた方の方が怪しいと判断しますからね」と口にする。
アルガスは「勿論そんなことはしませんよ、ちょっと見てもらいたいものがありましてね」と言うと懐からなにかを取り出して衛兵達に見せた。
すると衛兵達はサッと顔色を変えて「も、申し訳ありません!」とアルガスに謝罪した。
「「?」」
ランドとマーセルとついでにドンクは突然の衛兵の態度の変化に首をかしげる。
アルガスの元パーティーメンバーの三人は解ったのか「あぁ、アレを見せたのか」と呟いた。
「まぁそういうことだからコイツを連行してくれ。明日俺も街へ行くからその時に細かいことは話し合うとしよう」
アルガスの言葉に衛兵達は「承知しました!」と返事をすると昨日から簀巻きのままのドンクを担ぐと帰って行った。
離れていきながらドンクの「貴様ら、アイツに何を言われた?まさか賄賂を受けたのか!そうなら貴様らの事を領主に直訴してやるからな!」と喚いていたが衛兵達は「黙れ!貴様の言い分は詰所で聞いてやる!」と怒鳴り返しやがて見えなくなっていった。
衛兵達とドンクが居なくなってから何が何やらわからないランドとマーセルにアルガスが「とりあえずはあの野郎については続きは明日だ。マーセルも明日に備えて夕飯まではゆっくりしときな」と言葉にした。
「あ、ああそれはわかったが…アルガはさっき衛兵になにをしたんだ?」
マーセルの質問にアルガスは「なに、ちょっとした世間話をしただけだ」と笑顔で返すだけだった。
「そ、そうか…まぁいいやじゃあ俺は少し休むぜ。世話になってるし今日の夕食は俺達がまた担当させてもらおう」
「お、そうか?お前らの料理はうまいから楽しみにしてるぜ」
「ああ任せろ。それじゃあまた夕方にな」
マーセルはそう言うと船へと戻っていった。
マーセルが居なくなってからランドはアルガスに尋ねる。
「それで、なにをしたんですか?」
「なに、コイツを見せただけだよ」
ランドの質問にアルガスは懐から15センチ程の金属の板を取り出して見せた。
「それは?」
「ソイツはグラン王国王家の紋章だ」
ランドの質問に答えたのはフォルクスだった。
「王家の紋章?」
「そうだ、その板には王家の紋章が刻まれていて王が認めた者しか受け取ることのできない代物だ」
「なるほど、つまり持ってる人物は陛下本人もしくは陛下と親しい関係のものと言う証明ですか」
「そういうことだ、簡単に言うならこの国でのみ通用する最大の「後ろ楯」の証だな」
「しかしそんなに力があるなら偽造され悪用されたりしませんか?」
ランドの質問に今度はメリッサが答える。
「それは無理だよ、あれはアルガスとセーラが持ってるのは「オリハルコン製」で二人から授与されるのは「ミスリル製」なんだ。そして全てにシリアルナンバーが刻まれてるしアレックスの技術で全てに異なる隠し文字があるんだ。そこまで複製するのは不可能だよ」
「ちなみにもし「複製」なんてしたら即座に極刑よ」
メリッサの言葉にセーラが補足でそう告げる。
「なるほど、多重に防犯対策をしてるわけですか」
「ちなみにフォルクスと私も持ってるよ」
メリッサの言葉にフォルクスも頷き二人は懐から板を取り出した。
「元パーティーメンバーですもんね」
「お前もいるか?」
アルガスはランドにそう尋ねるがランドは「いえ、大丈夫です」と答えるのだった。
そんなやり取りをしてから暫くして先日のようにマーセル達の料理に感激しながらランド達が夕食をとっていると…
「「お楽しみのところすいません、少しよろしいでしょうか?」」
突然そんな声が聞こえてきて全員が声のした方向へ視線を向けるといつの間にか一組の男女がそこには立っていた。
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