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マイペースな冒険者は今日も受付嬢に怒られる  作者: のんびり生きていきたいおっさん


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ランド、リヴァイアサンを解放した後今までで一番顔を青ざめる

海面から現れた巨大な魔物「リヴァイアサン」は「グルルルル!」と唸り声をあげながらランド達の方を睨み付けている。


「ハッハッハッ!そうだコイツはリヴァイアサンだ。まだ子供だがそれでもこのデカさだ、いくらお前らでもコイツには勝てないだろ!この船を沈められたくなければ降参するんだな!」


そう勝ち誇るバルチャーに対してランドは「うーん、流石にこのデカさは船がもたないか?あの魔物に恨みはないが船を沈める気なら仕方ない」と口にすると腰の剣を抜こうとするが…


「待って!攻撃しないで!」


突然トルテがそう叫んだ。


剣を抜こうとしたランドが動きを止めてトルテの方に顔を向ける。


「どうしたんだトルテ?」


「この魔物様子が変なの、こっちに敵意は向けてるけどこの子すごく辛そうな気配もするの!」


「辛そうな気配?」


「うん、まるで敵意はこの子の意思ではないみたい」


トルテの言葉にランドは「となると、何らかの理由であの男に操られてるとでも言うのか…」と思考する。


「ん?なんだアレは?」


その時ランド同様リヴァイアサンと対面していたガレリアがそんな言葉を発した。


「どうしたのガレリア?」


メリッサがそう声をかけると「いや、あの魔物の頭の上になにか刺さってるのが見えたんだ」とガレリアは答えた。


人虎族のガレリアは人よりも目が良いのでリヴァイアサンの頭の上に刺さっている何かに気がついたのだろう。


「なんだろうなアレ?なんか模様の入った杭のような物が見えるんだが」


そう言葉にしたガレリアに反応したのはノエルだった。


「模様の入った杭のようなもの?ガレリアさん、もしかしてその模様は丸が3つ重なって真ん中に線が入っていませんか?」


「ああ、そんな感じの模様だな。それがどうかしたのか?」


ノエルの言葉にガレリアがそう返すと「あれ、それって確か…」とメリッサも思い当たるものがあるようだった。


「その模様の入った杭のような物が私の予測通りならそれは「従魔(じゅうま)(くさび)」と呼ばれる魔道具です」


ノエルの言葉にメリッサも「ああ、そうだそんな名前だったね」と同調した。


「従魔の楔?」


二人の言葉にランドが問い返す。


「はい、その楔を刺された魔物はその楔とペアになっている笛を持つものに従うようになると言われる魔道具です。アレックスさんの家にあった「魔道具の歴史図鑑」に載ってました」


「昔は軍事力として魔物を無理矢理使役する国があって使われてたらしいけど、今グラン王国では使用は禁止されている魔道具だよ」


ノエルとメリッサの説明を聞いたランドは「つまりあの魔物はあの男の命令で仕方なくこちらに敵意を向けてるわけか…」と口にした。


バルチャーはランド達の言葉を聞いて「その通り!俺は少し前まで奴隷商船の船長をしていてな、その時にたまたまこの魔道具も手に入れたんだ!だが少し前に懇意にしていた仲介者と奴隷商人が国に捕まったり討伐されてしまって仕事ができなくなってな、落ちぶれて海賊なんぞをやっていたがつい先日この魔物が無人島の洞穴で寝ているのを見かけて残っていたこの魔道具で従わせたんだ」と自慢げに言葉にする。


「お前、いくら魔物でも無理矢理従わせるとはなんて酷いことを!」


ランドがバルチャーに非難の声を浴びせる。


ほとんどの魔物は野性動物と変わらない程の知能しか持たないので冒険者でも目的があり必要がなければ面白半分に討伐したりはしない。猛獣のように人を襲ったりする魔物や放置すると危険な魔物、あるいは人の生活を脅かす魔物しか討伐はしないのだ。


そして一部の魔物の中にはラジの種族のように長命で言葉を発して人間と関わりを持つ種族もいる。


そしてリヴァイアサンは海の魔物の中でも最高位にあたる魔物であり知能も高い。自身に害なすものには容赦しないがその絶大な力を持つ故に自分から襲ったりはしない魔物だった。


トルテが感じた気配はおそらく目の前のリヴァイアサンの子供が自身の意思では襲いたくないという気持ちの気配なのだろう。


「なんて奴だ!」


「酷いことを!」


「クズだね」


メリッサやノエル、ガレリアがランドに続いて非難の声を浴びせる。


そんな言葉など気にしないバルチャーは「フン!奴隷も魔物も所詮動物のようなものだ。人間と共存やわかり合えるなどできねぇよ!」と言い放った。


ランド達はバルチャーの言葉に怒りを感じつつも目の前の問題を解決することをまずは考える。


「くっ、流石に無理矢理従わさせられてる奴を討伐するのは」


ランドの呟きにノエルが声を出す。


「楔です、あの楔が破壊できたらあの子は解放されます!」


それを聞いたランドは「なるほどそれなら…」と呟くとラジとメリッサに声をかける。


「ラジ、少しの間でいいからあのリヴァイアサンの動きを抑えてくれ、そしてメリッサさんは俺がリヴァイアサンに近付いたら風魔法で俺を上に飛ばしてください!」


「わかりました」


「了解」


そうしてランドはリヴァイアサンへと向かって走り出す。


「は、何をするか知らんが無駄なことだ!やれリヴァイアサン!」


バルチャーがそう言って笛を鳴らしたとたんリヴァイアサンは「グルルァァァァ!」とランドに向かい始める。


そこにドラゴンの姿になったラジが間にはいるとリヴァイアサンに腕を回してタックルのように取り押さえる。


「ごめんね、少しじっとしててね」


「さっきのドラゴン?どこから…」


バルチャーがそう驚いていると


「いくよ!」


メリッサが風魔法を唱えてランドをリヴァイアサンの頭の方へと吹き飛ばす。


ランドはそのままリヴァイアサンの頭上を通りすぎる瞬間に剣を抜く…


ガギィン!!


何かが砕けるような音がしたあと、ランドは再びメリッサの風魔法で反対に飛ばされると甲板に着地した。ラジも人の姿に戻って甲板に着地した。


リヴァイアサンはラジに抑えられていたときは少し暴れていたのがピタリと止まった。


ランド達の行動に呆気にとられていたバルチャーは「何をしたか知らねぇがリヴァイアサンは無傷だぞ!もう一度向かえリヴァイアサン!」とまた笛を吹く。


するとリヴァイアサンは「グルルァァァァ!」と再びランドに向かっていく。


「ハハハ、やはり何もできなかったか!くたばりやがれ!」


バルチャーは勝ち誇った笑いをあげるが次の瞬間…


「クルルルルル♪」


リヴァイアサンはランドの体に頭を擦り付けていた。


「な!?」


「良かった、道具の効果は切れたみたいだな。残りの刺さってるのも抜いてやるから少し我慢しろよ?」


そう言ってランドはリヴァイアサンの頭を撫でながら残りの刺さっていた楔の先端を引き抜いた。


「クルルル♪」


「良かったな、次は気を付けろよ」


「クルルル♪」


リヴァイアサンはランド達に改めて頭を下げるとザッパァーーーーンと海面に潜り姿を消した。


ちなみにランドに撫でられているリヴァイアサンを見たメリッサ、ノエル、ガレリア、ラジは…


(ランド(さん、君、師匠)に撫でられてあのリヴァイアサンいいなぁー)とか思っていた。


あまりの出来事にバルチャーが呆然としていると「さて、お前の奥の手とやらはどっかにいったが…まだ抵抗するか?」とランドが口にする。


バルチャーは自分の奥の手が無くなってしまったことに青ざめると「チ、チクショー!」と叫ぶと腰から瓶を出して叩きつける。


すると瞬く間に黒い煙が発生し辺りを包んだ。


「なんだ?」


ランドはバルチャーに近寄ろうとしたが「待って、煙になにか毒とかが含まれてるかもしれないよ」とメリッサに止められる。


少しして煙が晴れるとそこにはバルチャーの姿はなかった。


そして船の背後から「覚えてやがれー!」と声がするので全員がそちらに視線をやると先程までドルフィン号にぶつかっていた海賊達の船が離れていっていた。どうやら今の煙に紛れて船に逃げたバルチャーと気絶していた部下の数名が船を動かしたようだ。


「くそ、逃げられたか…」


ランドはそう言葉にするがメリッサが「まぁ仕方ないよ、追いかけようにもこの船も損傷してるし向こうの船の方が小型だから速いだろうしね。とりあえずはマーセル達が無事で良かったとしようよ」と声をかける。


メリッサの言葉にランドは「そうですね…マーセル達が無事だというだけでも良かったですね」と返した。


そこに着替えを終えたのかマーセルが船室から出てきた。


「おい海賊達は…あれ?どうしてラジ達がいるんだ?」


「あぁマーセル戻ったのか、実はな…」


ランドは先程までの経緯をマーセルに伝える。


「そうか、皆にはまた助けられたな。本当にありがとう」


マーセルがそう礼を言うとみんな「気にするな」と返した。


「しかし、また船が壊れたな。ラジ、もう一度浜辺まで引っ張れるか?前より遠いから大変かも知れないが」


「大丈夫ですよ師匠」


ランドの言葉にラジがそう答えマーセルも「すまねぇなラジの嬢ちゃん」と礼をのべる。


「じゃあとりあえずもう一度浜辺まで…「お前ら動くな!こいつがどうなってもいいのか!?」…!?」


とりあえず一段落したし戻ろうかとランドが口にしようとしたときにそんな声が辺りに響いた。


その声にランド達もマーセルや乗組員達も視線を向ける。そこには甲板の後ろにぶっ飛ばされて今の今まで気絶していたドンクが人質をとりその人物の首辺りにナイフを構えている姿だった。


それを目にしたランド達もマーセル達ドルフィン号の面々も顔を青ざめた。


ただしランド達とドルフィン号の面々では青ざめた意味が真逆だった。


マーセル達は純粋に「なんて卑怯な真似を!」と青ざめていたが…


ランド達は「なんて無謀で恐ろしいことを!」と青ざめた。


何故ならドンクが人質にとっていたのは…乗組員の治療に専念して戦闘に参加してなかったセーラだったのだ。

さようならドンク…

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